ケイケイの映画日記
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2005年03月25日(金) |
「香港国際警察/NEW POLICE STORY」 |
永らくハリウッドに出稼ぎに行っていた、ジャッキー・チェン久々の香港作品です。出稼ぎとは言葉が悪いですが、新聞のインタビューによるとハリウッドでの成功も、お金にはなったが、役柄や作品は彼には満足のいくものではなかったそう。そして本拠地に戻ってのこの作品、笑いこそ少ないものの香港テイスト満載の彼らしい作品で、円熟の境地を感じさせる素晴らしい出来でした。まさかジャッキー・チェンで泣くとは思っていませんでしたが、巷の感想を読むと、同感の人が多数です。
香港警察の辣腕警部チャン(ジャッキー・チェン)は難事件を幾つも解決し、若い部下からも慕われる有能な人物です。そんな彼に挑戦状を叩きつける集団が現れます。警察幹部を父に持つジョー(ダニエル・ウー)をリーダーに、富豪の息子娘のグループは、ゲーム感覚で銀行強盗を繰り返していました。彼らを捕まえようと特捜部の若手を従え、アジトに向かったチャンたちは、ジョーらの罠にかかり、チャン以外は惨殺されます。一年後、自分を責め続けるチャンは酒浸りとなり、停職中です。殺された部下の一人が婚約者ホーイー(チャーリー・ヤン)の弟であったことで、ホーイーとの仲も危なくなっています。そんな自暴自棄なチャンの前に、彼の相棒として任命されたと言うシウホウ(ニコラス・ツェー)が現れます。
ジャッキー作品と言えば、普通はスタントを使う命懸けのアクションを、彼自身が演じるというのが最大の売りだと思います。彼がハリウッドで受けたのも、CG全盛の今、彼の驚異の身体能力に魅せられたことも大きかったはず。この作品でも、往年の彼からこそやや見劣りすれど、如何なくその魅力は発揮されています。カンフーシーン、爆破シーンからの全速力、高層ビルからロープ伝いの垂直降下、爆走するバスでの車上シーンなど、これでもかとふんだんに盛り込まれ、50歳という年齢を考えれば、この映画バカ一代ぶりには本当に頭が下がります。
今回主役はジャッキーですが、脇を固める若手にもたくさん花を持たせています。ニコラス・ツェーとダニエル・ウーは、香港の若手有望株として名前と顔は知っていましたが、映画はこれが始めて観ました。ツェーは爽やかで愛嬌があり、誰が観ても好感の持てる素直な芝居でグッド。ウーは陰りと憂いの入り混じった背徳の雰囲気で、悪だけではない複雑な感情を表現しなくてはならない難しい役ですが、こちらも好演。共に観客に好感触の強い印象を残します。これには以前から若手を育てたいと言っていた、ジャッキーの配慮も感じられました。
ホーイー役のチャーリー・ヤンは、引退していたのを復帰してもらったそうですが、清楚で聡明なホーイーを好演、内面の心栄えの美しさまで表現出来ていました。
ストーリーはチャンの栄光から挫折、そして復活。チャンとホーイーの心の内のきめ細かい描写。一心にチャンを慕い、復活を心から願うシウホウの一途さ。ゲーム感覚で殺人をするジョーには怒りを覚えますが、それだけはない、彼の悪の心はどこから来るのか、それもきちんと掘り下げているので、上げた拳も下がります。強盗一味の盗みの場面や集まった時の様子などに、スタイリッシュな表現方法も用いていますが、チャンの復活を願う他の警官たちのありえない心遣いなどに、ベタベタの香港テイストの人情を感じ嬉しくなりました。
正義、挫折、復活、親子の愛、男女の愛、友情、そしてアクションと、てんこ盛りに描かれていますが見事に整理され、希望と勇気と言う善なる感情を刺激します。それと忘れちゃならないのがシウホウが言い続ける「チャン警部は僕のヒーロー」。恵まれない境遇に育ったシウホウが良き青年に育ち、反対のジョーが悪の道へ転落したのは、少年期に心に正しいヒーローを持つか持たなかったかの違いかと感じました。チャン警部はジャッキー・チェン本人に重なります。ジャッキーが僕のヒーローだった少年は今大人になり、この作品に子供を連れて観たかも知れません。きっとあの人はお父さんのヒーローだった人、と胸を張って子供に教えていることでしょう。
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