ケイケイの映画日記
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2004年09月19日(日) |
鶴田浩二の「眠狂四郎」(時代劇専門チャンネル) |
正確には「眠狂四郎無頼控・魔剣地獄」1958年度東宝作品です。えっ?新東宝は知ってるけど、東宝にも鶴田浩二って出てたっけ?と思ったのですが、そうそう「電送人間」がありました。ちょっと調べて見ると、デビューは松竹作品だそうで大映にもお出になっています。しかし私が覚えている鶴田浩二は、東映の仁侠映画の大御所にして、難聴気味の左耳に手を当てながら(正確に音を拾うため) 「傷だらけの人生」を大ヒットさせた大物俳優の印象が強いです。最近の土曜日の夜中は、「時代劇専門チャンネル」で夫婦して古い時代劇にはまっているので、この珍しい作品に期待いっぱいで観たのですが・・・。
私はジャンルを問わず広く浅く、何でも観ます。ですから映画的知識も広く浅く、雑学程度にしかありません。そんな私でも、眠狂四郎と言えば市川雷蔵と言う印象が強く、映画ファンには不評の、テレビ版・田村正和も結構好きでした。松方弘樹の狂四郎は、生活感溢れていて何か違うと感じ、テレビ版・片岡孝夫も誠実な感じがして、妖しさに欠けたかなと言う印象でした。
しかしこの鶴田狂四郎はもっと珍品でした。私が持つ狂四郎のイメージは、出自からくる(大目付の娘がオランダ人に犯されて出来た子・混血児です。)孤独や空虚を抱える妖しい美しさを持つ素浪人で、愛もなく平然と女性を抱く冷たさや、独特のニヒリズムを持つ、円月殺法を繰り出す剣の達人です。
それが誠実にして明朗、出自からの影も感じられず、テンションの低い桃太郎侍みたいなのです。他の作品は、もう大昔に観たので忘れてしまいましたが、多々良順扮する子分みたいなのがいるのですが、そんな人、他の作品にもいましたっけ?この子分の存在が、またまた子供の時に観た時代劇、「素浪人月影兵庫」の月影兵庫(近衛十四郎)と焼津の半次(品川隆次)を思い出して、眠狂四郎らしさは感じられず、フツーの時代劇にしか感じられませんでした。
でも鶴田浩二なら、きっと円月殺法は華麗に決めてくれるだろうと期待した、最後のニセ狂四郎との対決場面でしたが、これが全然。いやにカメラがロングに引くなぁと感じていたら、至近距離からの殺陣は、豪快さも華麗さも妖しさも感じられません。夫に「鶴田浩二、若い時は殺陣ヘタやってんね。」と思わず言ってしまったほど。それとも殺陣師のせいか?夫が子供の頃は、映画が隆盛を極めていた頃で、東映時代劇3本立てなど小中高を通じて観まくっていたそうで、時代劇にはなかなかうるさいのですが、その夫もこの殺陣にはダメ出しでした。フィルムの状態も悪く、モノクロ作品でしたが、いわゆる白が飛ぶと言う状態で、光が反射し剣先がしっかり見えませんでした。
鶴田浩二は割合好きな俳優さんなので、今回も期待したので残念でした。調べた時に書いてあったのには、東宝時代が一番低迷期だったとか。それを表していた作品かも知れません。任侠物の鶴田浩二は、押し出しが利き、貫禄と包容力も感じ、そしてとてもハンサムでした。「人生劇場」とか、また観たくなりました。他は小暮実千代の美しさは圧巻、背も高くて昔の女優さんはやっぱり惚れ惚れします。その小暮実千代のお手伝いさんが何と市原悦子!そうか、家政婦さんは昔からの持ち役だったのかと納得。外人役で上原謙を起用したり、森繁久弥の特別出演があったり、その辺では楽しめました。キャストを観れば、きっと東宝は気合を入れて作ったのだと思います。 ビデオ化はされていないので、ちょっと得した気分は味わえます。
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