ケイケイの映画日記
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2004年08月24日(火) 「華氏911」

自分は鷹か鳩か?そんな明確なイデオロギーさえもっていない私でも、銃を自由に所持することや、イラク戦争にはもちろん反対です。「ボウリング・フォー・コロンバイン」では、その主張は全面支持でも、あまりの強烈なムーアの個性に食あたり気味となった私ですが、ドキュメントも主観があるのだ、とそんな当たり前の事を改めて教えてくれた、貴重な作品でした。

今回は売り物の突撃アポは控えめで、ドキュメンタリー映像をつないでいく
構成です。ブッシュ大統領を引き下ろしたいための作品と聞いていたので、今回は面白おかしく大統領をコケにした映像も、ムーアに免疫が出来ていたためか、幾らか間引いて観る事が出来、素直にムーアの主張も受け取れました。

後半は一転、ムーアの故郷ミシガン州フリントの貧困の様子や、戦争で負傷して障害者となった退役軍人の保障の少なさ、イラク戦争に借り出される兵士たちのこの戦争への疑問など、真面目な映像が綴られます。特にフリントでは失業率が高く、高校卒業後は軍隊へ入る事が最高の選択だと言うのは
衝撃でした。底辺の者が命を張るのは国家ではなく富める者のため、と言うムーアの主張は、大昔の事でなく今の現実なので、胸に突き刺さりました。

愛国者と言うと、好戦的な人のように受け取られそうですが、ここまで自分の主張を貫くのは、ムーアが命懸けで国を憂いているように感じ、彼は愛国者なのだと感じました。オリンピックで素直に日本選手を応援する反面、多分住めば違和感もいっぱいあろう、韓国の国籍も捨てられない矛盾を抱える
私は、韓国人ではなく「在日韓国人」と言う立場の人間で、真に愛する国のない、浮遊した寂しさがあり、ムーアが羨ましく感じました。

小中学校では通名をやめ本名を名乗り、あなたの出自に誇りを持ち生きましょうと教えて下さっていますが、大人になり社会に出ると、何故日本人にならないの?その方が生きるのに楽よ、あなたのためよと言う重圧が待っています。月9に初の在日が主人公の作品が出来ようと、韓流などともてはやされても、現実は違うのだとマスメディアの裏を見て、その裏の動く利益を冷静に感じている私は、ここで偏ったムーアの演出にハッとします。

彼の一方方向だけを向いた演出は、まさかここまで真実ではないでしょうと思わすのに充分。と言うことは、今流れているマスメディアだって、全部鵜呑みにしちゃいけませんよ、と言う反語なのか?きっとそうなんでしょう。
思っていたよりずっと知性のある人なんだ。だいぶアプローチは違うけど、
ミロシュ・フォアマンの「ラリー・フリント」も思い出しました。


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