バンプオブチキンの、Kという曲がある。
専門学校の時、友人に、
「すごく良い曲だよ。きっとsaiko好きだよ」
と言われて、その場(学校)でMDを聴かされた。
1回目は、歌詞がほぼ聴き取れなかった。
けれど、音は格好良いと思った。
2回目は、なるべく歌詞を追ってみた。
でも、周りの音もうるさかったのもあって、
よくわからなかった。
でも、やっぱり音は格好よかった。
「うん、まぁ、格好良いね」
聴かせてくれた子には、それしか言う事はなかった。
好きな部類だ。と思った。
それから少しして、ちょっとしたきっかけで、
Kの入ったアルバムを購入する。
購入、というか、まぁ、250円で…中古で。
初めて、歌詞カードを見ながら、
静かな自分の部屋で、丁度良い音の大きさで、
曲を聴く。
私は、この曲が、嫌いだ。と思った。
曲が嫌いなんじゃない。音は好きだ。
積みも良い、藤原の声も好きだし、世界観も好み。
ただ、何かが、癇にさわる。
多分、歌詞だ。歌詞が、嘘っぽいんだ。多分。
猫は、ひとりだった。
絵描きは猫を、「僕らはよく似ている」と、抱き上げた。
それが嘘だ。多分嘘だ。
絵描きは、ひとりじゃなかった。
彼の帰りを待つ恋人がいた。
ひとりじゃなかったから、ひとりが寂しかった。
だから猫を抱き上げた。
絵描きは、恋人が大切だった。猫より。
だから猫を走らせた。恋人のもとへ。
歌詞で読むと、藤原の声を聴くと、
名前をつけてくれて、
「優しさもぬくもりも全て詰め込んで呼んでくれた」
絵描きのことが、猫は大好きだった。
その絵描きに頼まれた手紙を渡す為に走った猫は、
幸せだった。
けれど私にはその幸せがわからない。
私は、その絵描きが嫌いなんだ。
「いっときのひとり」と、
「ずっとひとり」を一緒くたにした、その絵描きが。