2004年03月19日(金) |
サバイバル・ロッタリー。 |
私の父はパーキンソン病という病気だ。
右半身が思い通りに動かない。
言葉もどもるようになったし、
それが原因でかあまり喋らなくなった。
もともと物静かな人だったけれど。
足を引きずって歩くし、
素早い動きも細かい作業もできない。
お風呂に入る時、
ネクタイを締める時、
食後に薬を飲む時、
人の手を借りなければいけない体だ。
それでも仕事をしている彼を見ると、
怒りたくもなるし、尊敬したくもなる。
私は父の愛をあまり受けたことがない。
小さい頃から父は仕事ばかりで、
家に居た記憶が殆ど無い。
一緒に遊んだ事など、全く記憶に無い。
父の仕事の都合で、
私はいろんな国を駆け回ったけれども、
父と一緒に写っている写真も少ない。
大体が、兄と一緒のものだ。
それはつまり母が撮ってくれたもので、
そこには父はいなかったという事で。
日本に落ち着いてからも、
父が私にくれる「愛」というものは、
いつも「物」だった。
ピアノが欲しいと言えば買ってくれた。
パソコンが古くなれば買ってくれた。
誕生日には必ずケーキを買ってくれた。
それでも、
休日一緒に遊びに行くことはなかった。
私は何度も何度も遊びに行こうと誘う。
彼はいつも「次の休みに」と断る。
私はいつもその状況を、
「ああ漫画みたいだなぁ」と思う。
ホントにあるんですよ、こういうこと。
そんな父も病気になって、
仕事が大分やりづらくなったようで、
もう辞めるかもしれない。
はっきり言って、うちは裕福だと思う。
今父に仕事をやめられても、
質素に暮らして行けば、
家族全員路頭に迷うなんて事はない。
私は父が嫌いではない。
むしろ好きだと思う。尊敬もしている。
だから、治してあげたいと思う。
けれど、治らなければ良いとも思う。
このまま仕事を辞めて、
家でゆっくり本を読んだり、
スポーツジムに行ったり、
ジョギングや水泳をしたり、
そう、母の代わりに家事をしたり、
家族でどこかへ旅行に行ったり、
そういう生活も良いんじゃないかと、
私はいつも思ってる。
こんな私は、親不孝だろうか。
ま、
治ってくれるのが一番嬉しいけどさ。
もしサバイバルロッタリーなるものが、
この世で実践されていたら、
私は彼の為に、そのクジに当たりたい。
そして脳を提供するんだ。
血が繋がっている人間の臓器なら、
きっと上手く繋がるんじゃないかな。