ようこそおいでくださいました。ほんとにほんとに、有難う御座います。
念のため確認致します。
コチラは幸せ系結末バージョンです。ほんとにこっちで良いですか?
嵐SJ的アイタタ小説最終話。
ring
薄暗い公園に全力疾走で駆け込むと、勝手に自分を待っている傍迷惑な奴の姿は、すぐに目に付いた。
低いレンガの塀に浅く腰かけ、ただ空を見上げている。
数メートル手前で足を緩めると、相手もこちらに気づき、塀から腰を上げた。
「ちょーブサイクな顔」
「お前、な、人が死ぬほど、急いできたのに、第一声が、それかよ」
両手を膝について肩で息をしながらも、松本の相変わらずの悪態に一応のパンチを入れる。
が、松本は知ったことかというように、遠くを見つめながら呟いた。
「勝手にホモにしないでくれる」
「は?」
櫻井が顔を上げると、松本は両手を伸ばして空に向かって吠えるように叫んだ。
「愛してるから捨てないで〜」
数日前、櫻井が伝言係・大野に託した言葉。相当感情を込めて伝えてくれたらしい。
粋なんだか余計なお世話なんだかわからない。
「バカ、あの愛してるは」
「わかってんよ」
誤解などするわけがないだろうが、一応のフォローを入れようとすると、松本に遮られた。
それでも言葉を繋ぐと。
「親愛の愛。だろ」
ふたり同時に重なった、声。
声のトーン、一瞬あけた間すらも一緒で、お互いびっくりしたように目を合わせてから、笑った。
「敬愛でも可」
櫻井流に口を縦に歪めて、得意げに言う。勿論、右手親指アップで。
「心にもないことを」
くっくっと笑う松本。
その笑顔を見て、櫻井は小さく息を吐いた。事態はそう悪く進んでいないようだった。
「あーあ、昔はあんなに可愛かったのにな。翔くん翔くんって」
視線を落として、軽く足を遊ばせながら言うと、松本は口を尖らせた。
「昔の話」
「ほんと、昔の話。今の潤くんは思春期真っ盛りで、全然わかりません」
冗談ぽく顔を覗き込むと、松本の表情が暗くなっているのがわかった。
笑顔を期待したわけではなかったが、ここでの松本の変化に、櫻井の心に少し、緊張が走る。
少しの間を置いてから、息を吸い込んで松本が口を開いた。
「こないだは、うそついた。…嫉妬、してた。…多分。裕貴くんに」
ゆっくり言葉を繋いでいく松本。
櫻井はじっと待つしかなかった。どう、なのか。その話は、どう、進むのか。
「裕貴くんは、俺の知らない翔くんを沢山知ってるんだよな。って」
松本は櫻井と視線を合わせようとはしない。
ただ、ロングコートのポケットに手を突っ込んだまま、間を置きながら言葉を繋げた。
「俺に…っていうか、メンバーに言えないこととか、いっぱい話してんだよな。とか」
松本の言葉を噛み締めながら、櫻井の心に、また少し安堵の感が戻ってきた。
と同時に、なんだか松本がとても幼く見え、こんなのに振り回されている自分がおかしく思えてくる。
口元が緩むのがわかったが、堪え、一生懸命話してくれている松本の瞳をじっと追った。
「なんか、いきなり悔しくなっただけ」
松本も櫻井のその様子に気付いたのか、少しバツが悪そうに半ば無理矢理に話を完結させた。
それから一息ついて、やっと決心したように視線を絡ませると、トドメの台詞を吐いた。
「俺、翔くん、好きだし」
絡み合う視線。ただ沈黙が落ちる。その空気は、数日前のそれとは全く異質だが。
「なんか言えよ」
先に沈黙に耐え切れなくなったのは松本だった。
櫻井は、その様子を楽しむかのように、わざと意地悪く顎を上げる。
「お前が呼び出したんだろ」
「っ!…むっかつく」
かっと顔を赤くした松本が地団太を踏む。もう、面白くて仕方が無い。
「ウソウソ。俺も好きよ。愛してるってば」
足取り軽く松本に近寄り、肩に腕を回した。松本は顔を背けるが、その腕を振り払おうとはしない。
「もういい」
口を尖らせて反対方向を向く松本の耳が赤くなっているのを見て、櫻井はまた、顔が緩むのがわかった。
「嬉しいよ。久しぶりだし、そういうの」
わざと大きく松本に寄りかかってみせる。
本心の言葉だが、冗談めかしてしまうのは、今まで相当松本に苦しめられたお返しでもある。
「もういいって。マジむかつく」
やっと松本が、逃げるように櫻井の腕を肩から外す。
それから踵を返すと出口に向かって歩き出したので、櫻井も慌てて後を追った。
今なら、なんでも言える気がした。
あの時の質問の先にある、その真意がなんであろうと、今、今しかその答えを言う事はできないと思った。
松本の横につくと、櫻井はそのまま松本の顔は見ずに、視線は合わせずに、口を開く。
「ほんと、ほんとに。お前は俺の、オンリーワン…だし」
オンリーワンの部分だけ、ひとつ声のトーンを落として言う。意図的じゃなく、自然にそうなった。
瞬間、松本の表情がほんの一瞬暗くなったことには気付かなかったが。
いや、気付かないフリをしたかったのかもしれない。
その空気だけは、なんとなく、読み取れたから。
だが、櫻井にその空気の変化を悟らせ・理解させる間を与えなくしたのは、松本の方だった。
「返し忘れてた、指輪」
松本は思い出したように立ち止まり、ポケットから例の忘れ物…シルバーの指輪を取り出した。
手を伸ばして、櫻井の前に差し出す。
櫻井は一瞬それを受け取ろうと右手を出しかけたが、ふと思い直してその手をポケットに戻した。
もう、なんだかどうでも良くなってしまった。
「良いよ、もう。お前持ってろ」
松本の表情が驚きの色に変わる。
大して大事な物でもないしと付け加える前に、指輪を顔の横でちらつかせて松本がニヤリと笑った。
「エンゲ〜ジリング?」
さっきのお返しと言わんばかりのその黒い笑みに、櫻井は気を失いそうになる。
「やっぱ返せ」
「やだよ」
リングを取り上げようと手を伸ばすと、松本は両手でしっかりとそれを包んでしまう。
それから、既に顔を出していた月の光に反射させるようにリングを掲げて、微笑んだ。
「死ぬまで持ってる」
その笑顔と発言に凍りついた櫻井の横をすり抜け、公園の出口に向かって歩き始める松本。
とんでもねぇプレゼントをしちまった…と、白いため息を吐いて、櫻井も松本に続いて、歩き出した。
横に並ぶと、意味も無く松本の頭をぽんと叩く。
「死んでも持ってろ」
我ながら、人生で最高に恥ずかしい言葉を吐いてしまった気がする。
そう思いながらも、不思議と櫻井に羞恥の感はなかった。
松本が一瞬小さく顎をひいたのと、長い前髪に隠れた瞳が、ほんの少し、嬉しそうに細められたのが見えたから。
end.
ギャー!!甘い!甘すぎる…!!
大団円とかでなく、単なるホモくせぇ結末になってしまってすみません…。
そんなつもりは更々ないのです。ほんとに。
アタイ、あんまりベッタベッタしてるSJ好きじゃないので。ていうか有り得ないので。
読む分には良くても書けない…。
まーなんだ、途中で松本がちょっと見せた切ない表情の理由は、切ない系バージョン後書きを読んで頂けると。
なんとなくね、こっち(大団円)は、ちょっとオトナな松本。
切ない系は、ちょっとコドモな松本がテーマです(今作った←こら)。
全5回のアイタタ的嵐SJ風味小説、全編読んで下さった方、ありがとう御座いますぃた。
更に更に、度々感想送って下さった方、マジ嬉しかったです。
香乃さん・のりさん・ユカさん
ちゃんとお返事出来てないのですが、この場を借りて、本当にありがとうございました。
もし良かったら、切ない系バージョンと読み比べてみて、
どっちのが好みだったとか感想下さると更に嬉々です〜えへ!舞い上がります!返信は100%致します!
ではでは。次はにのあいで頑張ります(また無責任なことを…)。