茶店の窓から眺める景色を少し柔らかく感じる。 仕事をサボってる罪悪感はとうの昔に消え去っていて、 ただ、彼女の横顔を思い浮かべる。 二人の間には秘密がある。正確には、私の側に。 察している癖に、「一生口にしない」と彼女は云う。 過去への疑念。オープンにしたほうがいっそ楽な気もするが、 私の狡さが、口火を切りたがる衝動を抑え込む。
彼女は私の最初の女性じゃない。 そして、彼女にとっては私が最初。 その事実は、互いの心のうちに影を落としてるみたい。 私は最初で最後の恋と確信しているけれど、 彼女の心は、私から見れば宙ぶらりんだ。 けれど、 人並みな優しさや気遣い、甘い囁きや慣れたハグがなくたって、 彼女らしい不器用さを、私はこの世の何よりいとしく思える。
ジャスト・ア・フレンドでなくなって2度目の春。 彼女が遠く離れた場所で、春の雨を眺めて、 少しは満ち足りた気持ちで一年前を振り返ってくれるなら、 私は言い表せない幸せに、小躍りするだろう。
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