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2004年10月10日(日) Simple

本気で何かを手に入れたいのなら、それなりに大きな犠牲を払うことは必然であろう。あなたがそうしているように。しかし、生きているうえで大切なものまで―それはなかなか見つからない時がある―失いつつあるのではないかと、一度立ち止まってみることも同時に伴う義務ではないだろうか?あるいは、その犠牲を払うことにより得るものが、自分や必要とする人々にどれだけの、いかなる影響を与えるのか、という事も。そんなことをあれこれ考えて悩んでも、すべて独りよがりだ。しかし、すべては自身の判断。

ただ、類まれな才能をもった一部のいわゆる”アーティスト”はそれに限らない。この種類の人々は、自分の我は最後まで通し、一方でその才能で人を惹き付ける術をもつ。強烈な自信から、一度でも味方につけた人間は自分が突き放すことはあっても、逆はありえないことを知っている。孤立無援という言葉を知らない。人間関係は、所詮スパイス、データのようなもの。必要によって選り抜き、使い分け。犠牲を払っているようで、実際は当面必要なものだけを見分け、それに意識を集中させているだけのこと。中途半端がきらいなのだ。シンプルで実に合理的だ。

結局どちらがいいのか、分からないが人にはその人にあった生き方がある。そして思うに、本当に必要なものは必死で繋ぎとめたり探したりしなくても、自ずと付いて来るもののように思う。

包帯を巻いてあげられないのなら、
むやみに人の傷にふれてはならない。

(『続・氷点』三浦綾子)


川村 |MAIL