図書室にはいるとアサキがいた
「顔色わるいぞ」
ん?うん… と言葉を濁し、横の本棚のほうを向く
どうしてか目を合わせられない わたしはもうこのひとと 目を合わせていいような人間じゃない と思えて
横を向いたままのわたしの左耳に アサキが本を弄ぶ音がきこえる
それからどのくらいの間があっただろう
背中に アサキの声が柔らかく降った
「……だいじょうぶか?」
瞬間。 わたしは了解した
このひとは わかっている
わかってくれている
窓枠の 砂ぼこり 本の ひもの栞の色 生米の 手ざわり
こういうものは いつもと変わらず 確かだ
ほんの ひととき いつに変わらないわたしに戻る
神様だとしたら
どうして?
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