「ちょ… おいっ」
花火、人ん家に向いたままじゃん?!
「ヒュ! ヒュヒュッ、ヒュヒュッ! 」
一瞬 辺りは昼間みたいに明るくなって
「ガツ、 パリパリーンッ」
目を焼くような白い光が オレンジの灯りのなかへ 深く入っていった
タカシがなにかを物色するように歩きだして ぼくらもあとに続いた
しばらくウロウロ歩いて 公園の端っこ 杉みたいな木の植わってるところで ピタ、と止まった
木のすぐ向こうは人の家になってて 目の前、ほんの2・3メートルくらいの距離で 居間(茶の間)があって オレンジ色の灯りとテレビの音がもれていた
「こんなとこで派手にやったら、ね、怒られるよ…」 タカシのひじをつつき、ショウタが弱々しく言う
タカシはその灯りをまっすぐに見たまま 「貸せ」 とぼくに向かって手をだした
催眠術にかかったみたいに すんなりとチャッカマンを渡してしまった
タカシは振り向いてニヤリと笑い 「チビんなよ?」ってぼくらに言うと なんのためらいもなく 束ねたロケット花火にチャッカマンを近づけた
タカシは公園の外灯の下に立って なにやら作業っぽいことをしてる
ショウタが見に行って タカシの手元をのぞきこんだ
「ひぇっ、マジ?」
ショウタの声につられて ぼくとナカヤンも走って見に行く
タカシは 20本くらいのロケット花火を 草の茎みたいなものでぐるぐる巻きにして 1つに束ねてるとこだった
「それ、ヤバイよ…」 ナカヤンの声が震えてる
タカシはニヤッと笑い ぐるぐる巻きの最後をきつく縛った
ぼくは チャッカマンを持つ右手が湿るのを感じた チャッカマンを左手に持ち直して Tシャツで右手をふく
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