くだらないことを書くノート 【HOME】【MAIL】
- [2005年11月29日(火)] 天井裏より愛を込めて 最終話
7月1日。晴れ。
空はどこまでも青く、夏が来たのだと教えてくれる。
今日もいい一日になりそうだ。
天井裏より愛を込めて
最終話「成仏するって本当ですか?」
俺は自分が車に轢かれた場所に来ていた。真新しい花束が置かれている他は、誰もここで人が死んだなんて思うまう。俺自身、未だにちょっと信じられない。
……ちなみに、俺の花束の横に山盛りに置かれているドッグフードは俺の意識から意図的に削除されている。いや、アイ○は喰わんだろ、それ。
誰もそこを意識せず、手も合わせない。日常。
人一人死んでも世界は変わらず回り続ける。そりゃそうだ、俺なんて人間をいったいどれだけの人物が知っている? 世界を回す歯車でありながら、それがなくなったところですぐに代用が利くぐらいの代物だ。
別に悲観的になってるわけじゃない。おそらく、今生きてる人間の大半はそういった存在なのだ。
だったら未練がましく現世に留まっている理由もなくなるんじゃないだろうか。そう思う自分がいる。
「ここに、いましたの?」
じっと花束を見つめる俺に、後ろからかけてくる声がひとつ。振り返るまでもなく、巫女だと分かった。
「ああ。ってお前、何を撮っている?」
振り返ると、こちらにビデオカメラを向けている巫女。
「今度、呪いのビデオに投稿しますの。謝礼でも貰っておいしいものを食べにいきますの」
「人で稼ぐなよ、ったく」
巫女っていうのは儲からない商売なのだろうか?
「それで、どうしたんですの? こんなところで黄昏て」
「いや、ちょっとな……」
俺は空を仰ぎ見た。釣られるように巫女も視線を上へと向ける。梅雨は抜けたのか、どこまでも青い空がすべてを包むように存在している。天国ってのはきっと、この青い空よりももっと向こうにあるのだろうな、とか考えてみる。
「そろそろ成仏でもするか、と思ってな」
天気の話しでもするように、ことさら何でもないことのように言う。それを聞いて巫女は、「そうですの」と淡白に答えた。
「なんだよ、『成仏するくらいなら、私が祓って差し上げますの』ぐらい言うかと思った」
「国寺さんは私のことをどう思ってますの?」
心外だとばかりに、頬を膨らませて抗議してくる巫女。
「巫女は魂をあるべき場所に案内するのが仕事ですの。自発的に逝かれるのであればそれに越したことはありませんの」
説得しても駄目でしたら御払いですの、と巫女は続けた。
だが、
「俺ってば、説得された覚えないんだが?」
確か、出会ってすぐに襲われた気がするのは気のせいか?
「ちゃんと、『成仏なさいませんか?』と聞きましたの」
「えっと、それだけ?」
「要望は正確に簡潔に。ネゴシエーションの基本ですの」
「交渉の余地すらなかったと思うぞ?」
「気にしちゃめー、ですの」
有無を言わせぬ笑顔でそう言われては返す言葉もない。
「ま、あんまりダラダラ話すものあれだし、そろそろ行くわ」
もう思い残すことは何もない。そう思うと、身体の感覚が消えていくのを感じる。これが、成仏するってことなのか。
「国寺さん」
白んでいく意識の中で、巫女の声が聞こえる。
巫女の方を見るが、視界も白く薄くなっているのでよくは分からない。が、多分微笑んでいるのだと思う。
「ごきげんよう。よい来世を」
「ああ。そっちこそ、よい現世を、だ」
俺の声は彼女に届いたのだろうか。
そう考えると同時に、眠りにつくように意識が沈む込んでいく……。
ゆっくりと目覚めるときと同じように、意識が浮上してくる。
俺はぼやける頭を振って、周囲を見渡す。
ここが天国というところか。スモーク炊き過ぎのスタジオみたいな、如何にも俺が思い描いていた天国と変わらないために苦笑する。
「あっ! おじちゃん!」
ひょっこりとスモークの中から顔を出したのは、病院で出会った少女。
「こっちに来たんだ」
「いつまでも未練がましく成仏しないっていうのもなんだったからな」
「そっか。またお話が出来るね!」
嬉しそうに俺の周りを跳ね回る少女。
「私もいるわよぉん」
「探したぞ、国寺真よ」
「ってなんでお前等もいるんだよっ!? つーか宗教違うだろっ!!」
まぁ、巫女がいないだけましか?
「ひどいですの。私もいますのに」
「ってお前人間だろっ!?」
「死んじゃいましたの。目の前を歩いてたi−D○gを助けようとして」
「俺と一緒かよっ!? しかもぱちモンっ!? つーか伏字になってないしっ!!」
俺の悲鳴は、おそらく天国中に響き渡ったと思う。
どうやら俺が平穏を手に入れるのは、随分と先になることが判明しました。
退屈でないのはマシだが、限度ってものがありませんか。神様?
おわり
後書きという名のダイングメッセージ。
ひとまず、「天井裏より愛を込めて」はここで終了です。
もうちょっとネタはあるのですが友人から、「国寺が可哀想だからさっさと成仏させてやれ」と言われたものでw
ああやりたかったなぁ。死神に名前をつけたら死神から人間になってしまったり、とか。もちろん、その回のタイトルは「これって死神ルートなんですか?」ですが(爆)
とまぁ、妄想全開フル稼働で書いたこの話ですが、もともとは今書いているやつがまったく進まないので、友人にネタを振られて2時間ばかりで書き上げたのがそもそもの始まりです。
本当は6話辺りで終わるはずだったのですが、巫女が出たことにより急展開。あとは趣味に走りまくり、下り坂を転がり落ちるような感じでしょうか?
というか、3話あたりで思い描いていたストーリーとは180度ベクトルが変わっていたりします。ああ、自分の文才のなさが憎い。
長々と能書きを垂れてもなんなので、この辺で。
それではみなさん、来世でお会いしましょう。
- [2005年11月28日(月)] 天井裏より愛を込めて 第十話
俺、国寺真。
救いはきっとあるらしい。そう信じたい、今日この頃です。
天井裏より愛を込めて
第十話「だ〜か〜ら〜! 俺はロリコンはねぇって!!」
吹き飛ばされた俺が意識を取り戻したのは、しばらく経ってからだった。
周りを見回すと、車椅子に乗った患者。それを押す看護士。病院服を着て歩く男女。白衣を着た男性。
どうやらまた病院に来たらしい。って俺はこんなところまで飛ばされてきたのかよ。
ぼんやりと突っ立って眺めるのもなんなので、病院内を散策してみることにした。
……5分で飽きた。
ていうか、病院なんてどこも同じようなものだと今更ながらに気がついた。
しょうがないので外に出て日光浴でもしてみることにする。先ほど気が付いたのだが、この病院の庭には木々が生い茂っており、芝生もいい感じに敷き詰められている。つまりは、だ。
「昼寝にはもってこいってことだ」
まぁ、幽霊になって睡眠を必要としない存在になってしまったが、こうもいい天気だと午睡したくなるのが人情ってものだろう。
そんな感じで庭へと出て、適当な昼寝スポットを探していると、一人の車椅子に乗った幼女少女が必死に車輪を動かして移動しようとしている姿が目に入る。
付き添いの人はいないらしい。周りを見ても、誰も関心を払ってはいない。談笑しているすぐ傍にいる人間でさえも、だ。
「ったく、手伝ってやれよ」
俺は少女に近づきながら周囲の人間を睨みつける。
少女の前まで来て、はたと思い至る。
「って俺が来ても意味ないじゃん」
触ることもできない人間(幽霊)が出来ることなぞありはしない。
助けたいのに助けられない。歯痒さが胸を支配する。こいつ等とは違うと思いたいが、結局は助けられないのか……。
「おじちゃん、どうかしたの?」
がっくりと肩を落とす俺の耳に、少女の声が聞こえてくる。
誰か手伝う人間が現れたのかと思い、周囲を見回す。が、やっぱり誰もこちらを見ていない。
「きょろきょろしてどうしたの? おじちゃん」
再び少女の声。
恐る恐る少女のほうを見ると、彼女はじっと俺の顔を見詰めていた。
……あれ? 俺、見られてる?
「きょどーふしんしゃ」
指を差されてにっこりと笑われた。
「少女よ、いいか?」
駄目元で声を掛けてみる。
「なぁに?」
どうやら声も聞こえるらしい。
「俺はお兄さんだ。まだそんなに歳はいってない」
とりあえずそこだけは訂正しておかねばなるまい。絶対にだ。
中庭にある林の中を二人で歩きながら――とはいっても、少女は車椅子だが――、少女が嬉しそうに話し掛けてくる。
きっと見舞いに来てくれる人もおらず寂しかったのだろうな、と勝手にお話を頭の中で組み立ててみる。うむ、健気だ。
少女の声に混じって、きこきこと車椅子の車輪が立てる音が聞こえてくる。そういえば、足を怪我しているのだろうか?
気になりはしたが、聞かないのが大人ってもんだ。
「ねぇおじちゃん! ちゃんと聞いてるの?」
「ああもちろん。それよりも、だ」
「なぁに? お兄ちゃん」
「うむ、それでいい」
なんてことを話しながら歩き続けると、視界に大きな池が飛び込んできた。
「へぇ、でっかい池だな」
「すごいでしょ? 私のお気に入りなんだっ!」
少女は弾む声で俺を見上げる。
……なんというか、あれだ。俺にロの頭文字の属性はないというのに、傾いてしまいそうだ。
あれか? これは光源氏計画を発動せよとの神の思し召しなのかっ!?
「パラダイス銀河? 諸星ダン?」
「少女よ、色々と突っ込みたい場所はあるのだが、ひとまず。
おそらく、君はまだ生まれてないときの歌手のことをなぜ知っている?」
「え〜、普通だよ?」
俺でもギリギリだというのに……。最近の子供は、すごいな?
「それでおじ……お兄ちゃん? 光GENJIがどうかしたの?」
「あーいや。婚約者がいたのに養子の娘にも手を出した鬼畜野郎のことはどうでもいいんだ。うん、忘れてくれ」
「ん? わかった」
「うむ、それがお互いのためだ」
それっきり少女は黙ってしまって、ただ二人して池を眺めていた。
体があれば、池に向かって石を投げてるところだ。
「おじちゃん、私、私ね……」
今までとは打って変わって悲壮感すら漂わせた少女の声に、俺は発言を訂正させることすら忘れた。
「私ね、死んじゃうんだ……」
瞳に大粒の涙を溢れさせる少女。その姿を見て、言葉を失くす俺。
「もう、身体も動かないし、話すことだって、できないんだ……」
「ちょ、ちょっと待て。じゃあ、今車椅子を動かしたり、俺と話している君はなんだ?」
少女の口ぶりだと、まるで植物人間になっているかのような言い草だ。
俺の問いに、少女は黙って俺たちが来た道のほうを指差した。
その方向にあるのは、おそらく病院だ。
「私の身体、病院の中にあるの。暗い病室の中で、マスクつけてないとすぐに死んじゃうの……」
では、この目の前の少女は、俺と同じ魂だけの存在だと、そういうことなのか?
「そろそろ行かなきゃ。最後にお話、聞いてくれてありがとう。話したらすっきりしちゃった」
ぺこりと下げた頭を上げたとき、少女の顔に涙はなかった。さっきまで嬉しそうに俺に話し掛けていたときと同じ笑顔。それが、俺の胸を打つ。
「お兄ちゃんも早く来ないと駄目だよ?」
そう言い残すと何かを言う間も無く、少女は光と弾けた。後には光の残滓がわずかに残り、それも風に流されて消えてゆく。
それを掴もうとするが、俺の指先が触れると同時に淡く消えた。
残されたのは、未だに成仏もできない哀れな野郎が一人きり。
「早く来ないと駄目だよ、か……」
気が付けば暮れてゆく空を見上げながら、ただぼんやりと呟いた。
次回予告。
俺が幽霊になって、そろそろ一週間が経つ。
なんか生きてたときよりも、めりっさハードだったのは何故だろうかと悩むが、まぁ退屈はしなかったのでよしとする。人間、前向きが大事だ。
でもやっぱり、祭りには終わりがあるわけで。いや、終わらないと次の祭りがはじまらない。
だからそろそろ、俺の祭りは終わりにしようと思う。
天井裏より愛を込めて
最終話「成仏するって本当ですか?」
また、来世でお会いしましょう。
- [2005年11月27日(日)] 天井裏より愛を込めて 第九話
俺、国寺 真。幽霊になってからのほうが人生大変なんだと思い知らされました。
誰か、平穏を俺にくれ。
天井裏より愛を込めて
第九話「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃぁぁぁん。…………って呼んでねぇし」
「つれないのねぇん」
「どこに向かって話し掛けている?」
「やっぱり頭の中に色々沸いているんですの」
「ていうか描写が面倒くさいからって、口調で無理やり誰が話してるのか分からせるって力技、そろそろ限界だと思う」
分かっているとは思うが上から、悪魔、死神、巫女、俺の順だ。念のため。
それと中々巫女は毒舌家らしいことが判明。
「それはともかく、真ちゃんの魂は貰っていくわねぇん」
俺、貰われるの決定らしいです。でもまぁ、成仏させられたり、刈り取られるよりはマシかなぁ。
「ちなみに貰っていったらどうするんですの?」
「もちろぉん、美味しく戴いちゃうわぁん」
はぁはぁ。お、俺、なんか美味しく戴かれちゃうらしいです。ちょっと胸がどきどき言ってます。
「どのように食すのだ?」
「もちろぉん、頭からばりばりもしゃもしゃ、よぉん」
はぁはぁ。お、俺、なんか頭からばりばりもしゃもしゃ、美味しく戴かれちゃうらしいです。ちょっと心臓がどっきんどっきん言ってます。
「カ、カニバリズム、イヤー!!」
食われるんか!? 俺は食われてしまうんかっ!?
「えぇん。魂っておいしいのにぃん」
指を咥えて、物欲しそうにこちらを見る悪魔。
その視線にふらふら近寄りたくなってしまうのは男の性(さが)か、悪魔が魅了の瞳を持っているからか。
「あらぁん。真ちゃんは私にめろめろなのねん」
「いや、それは貧乏神みたいでヤだ」
今のネタは最近の若い人に通じるのだろうか。いや大丈夫。俺は若い。まだいける。まだまだいける!
「急にぶつぶつと国寺真はどうしたのであろうな」
「きっと自分にマインドセットしてるんですの。邪魔しちゃ可哀想ですの」
「そうだな。温かく見守ってやることにしよう」
なにやらこちらに聞こえる声でひそひそと言葉を交わす、死神と巫女。なんか一昨日さっきから随分と仲がよさげですね。そのうちCD
デビューですか? 死神&巫女。うん。デュオでデビューしたらバカ売れ間違いなしです、多分。おっきなお友達とか、その辺の世代に。
「その中に私は入っていないのぉん?」
トリオか? でもそれだとイモ欽トリオとかと被るしなぁ。
「随分と古いところと引き合いに出すのねぇん」
「ていうか、人の思考を勝手に読まないでください」
プライバシーの侵害ですよ。個人情報保護法ですよ。スキャニングですか? 銀行口座から勝手にお金、抜き出されちゃいますか? 口座の残
金はいつも三桁なので無問題ですよ?
「もう死んでるからお金なんて考える必要ないんじゃないんですの?」
「しかし三笠清凪、三途の川を渡るのに六文銭は必要であろう?」
「あなた、宗派が違いでしょうぅん?」
「ってお前等みんなテレパシストかよ!!」
なんてこったい!? これじゃ隠し事なんてできないじゃないっ!!
「いや、すべて国寺真の口から垂れ流された汚物のようなものだ」
「そうですの。その(ピー)のような口から(ピー)を垂れ流す前にサーをつけろ! ですの」
「Sir! Yes,Sir! ってどこの軍隊ですかっ!? ていうかその伏字は何っ!?」
「清純な私には似合わない言葉ですの」
「どの口でそれを言うか」
俺の言葉に呼応して、うなずく悪魔と死神。
「ひ、ひどいですの!? 私は国寺さんと同じく色モノキャラですの!?」
「何気にひどい言われようだが、いいか、巫女よ」
俺は真顔で巫女に話し掛ける。
「この小説に、色モノキャラでない人物など存在するか?」
俺の言葉に右を見て、左を見て、最後に正面の俺を見る巫女。
「いないですの。これでもかってぐらい完璧に存在しませんの」
そのままがっくりと膝を付き、肩を落とす。
「いいんだ。そうやって自分を理解して、はじめて人間は成長できる。君はまた成長したんだ」
巫女に優しく声をかけてやる。そんな俺を、巫女は瞳を潤ませながら見上げる。
「なんだかちょっと虚しい成長ですの。それでも、なんだか生まれ変わった気がしますの。例えるなら、そう、三笠清凪マーク2、ですの」
「どの辺りがマーク2かは聞かないとして、よく痛みに耐えて頑張った。明日のキング・オブ・巫女はお前のものだ!!」
「はいですの、コーチ!!」
多分どっかに出ている巫女の星を指差し、俺は力強く頷いた。
「え〜っと、お取り込みの最中に悪いんだけどぉん」
「なんだ、色モノマーク4?」
これから夕日に向かって走り出してスタッフロールだというのに、後ろからマーク4が声をかけてきた。
「そろそろ、殺(や)っちゃってもいい?」
なぜだかすごくお怒りのご様子。隣のマーク3も同様にだ。Why?
「色モノか。そうか、我も色モノなのか」
どうやらその辺りがご立腹の大元らしい。
「覚悟はできているわねぇん」
「国寺真よ、最後に言い残すことはあるか?」
「往生しろ! ですの」
ま、マーク2よ! お前はこっちだろうっ!? くっ、人類の歴史は裏切りの歴史だというのは本当のことだったのかっ!?
「えーっと、その、みんな、ちゃんと濃いと思うよ?」
言葉を言い終わる前に、衝撃。俺の意識は刈り取られた。
……本当のこと、言ったのに。
次回予告。
否定の言葉を重ねれば重ねるほど、その事実を塗り固めていることに人は気が付かない。
その事実を肯定するよりも確実に、その否定は肯定へと変わる。
天井裏より愛を込めて
第十話「だ〜か〜ら〜! 俺はロリコンはねぇって!!」
- [2005年11月26日(土)] きゅーじつしゅきーんですのよ?
天下の休日にこんな時間まで会社で仕事してた不幸な人間です。恵んでくれ、特に愛を(爆
てなわけで、天井裏はお休みさせていただきます。
いえ、会社で暇があれば書いてみるぞなもし、とか罰当たりなことを考えておったのですが、なんつーか、忙しかったというか。
てめぇ、こんな仕様書でプログラム組ませる気か? アァ?
って感じでした(どんなやねん。
早い話が簡略的過ぎて、書いた人間以外理解不能でしょ? って感じですよ、旦那。
しかも今日は書いた本人が出てきてねーから明日も出なきゃなんなくなったし。
勘弁してくださいよ、マジで。
しかも帰りに本屋によって買ってなかった本をたんまり買い込んでチャリンコで帰宅途中、「あれ、雨っすか? マジで!? 俺の五千円がっ!?」
と慌てて近くのコンビニでゴミ袋と傘を買い込んでいざ店から出ると、
「雨、止んでませんか? 止んでますね? なんでこの時期に通り雨なんだよ、こん畜生!?」
てなもんで、まぁ、疲れました。はい。
つーわけで明日に備えてもう寝ます。
おやすみなさい。
- [2005年11月25日(金)] 天井裏より愛を込めて 第八話
俺、国寺 真。現在幽霊のくせに死にかけてます。
誰か、誰か助けてくれ!!
天井裏より愛を込めて
第八話「我が名は、我が名は、我が名は…………何がいいと思う?」
「俺に聞くなよ」
「なんだ? いきなり?」
「どうかしたんですの?」
「あーいやうん。なんでもない」
無様で惨めで弾けるほどに命乞いに乞いまくった結果、なぜかどっかのビルの屋上で向かい合って日本茶飲んでる俺と死神。ついでに巫女。
「ていうかおまえ、どっから沸いた?」
「人をボウフラみたく言っちゃ駄目ですの」
「似たようなもんだろ?」
「ボウフラを馬鹿にしちゃ駄目ですの。彼らはどんな場所でも水溜りさえあれば繁殖しますの」
「っておまえが下かよ!?」
「国寺真よ。ボウフラ以下なのか?」
「やーいボウフラ以下ぁ、ですの」
「って俺かよ!?」
畜生、無性に暴れだしたい心境だ。でも、俺の目の前にいるのは俺の天敵たる死神と巫女。
祓うか斬られれば俺の人生はジエンド。もう終わってるとか言うな、頼むから。
「ところで国寺さん」
「なんだよ」
「こちらの方はどちら様ですの? 新入りの方ですの?」
「おまえ、知らないで一緒に茶を啜ってたのかよ」
「まずは相互理解を深めることこそ、恒久的世界平和の第一歩ですの」
「いきなりグローバリズム溢れてますねこん畜生」
つーか最近の巫女は世界平和も考えないといけないのか。やるな、日本の巫女産業。
「こいつは死神らしい。なんでも名前はないらしいが」
「我輩は死神である。名前はまだない。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは……」
「いや、漱石はいいから」
先生、最近の死神は夏目漱石をソラで言えるらしいです。すごいですね。って誰だよ、先生って。
ていうか途中で遮られて口を尖らせてる死神が微妙にかわいく見える俺ってば末期ですか? そうですかありがとう。
「そうでしたの。これ、名刺ですの」
そう言って例の名刺を死神に差し出す巫女。名刺を見て、三笠 清凪って名前だったことをようやく思い出した。でも誰も覚えていないから巫女でいいか。
「かたじけない。それでは我も」
懐から紙切れを取り出す死神。紙には「死神」と大きな字で書かれている。最近の死神業界は名刺必須らしい。ていうか、あれって名刺の意味あるんだろうか?
「これはこれはご丁寧に、ですの」
「いやいやこちらこそ」
頭を下げあう巫女と死神。違和感バリバリというか、宗教無視しまくりというか。まぁ、クリスマスや正月を同等のものぐらいにしか見ていない日本ならではの光景と思っておこうそうしよう。
「んじゃ、俺はこの辺で……」
場の空気が和んできたのでさっそく抜け出すことにした。ここにずっと留まっていたら、命がいくつあっても足りはしないだろう。いや、もう死んでるってのは無しの方向で。
「どこに行かれるんですの?」
「我の用事はまだ済んでおらん」
はい、逃げれませんでした。ていうか危険度が300%でメーター振り切れちゃってますけど?
こちらに向かってにこやかに笑いかける死神と巫女。死神巫女ってちょっと萌えとか思うのは俺だけですか。
恐怖のあまりちょっと現実逃避してる俺を尻目に、にじり寄ってくる死神と巫女。
パパン。どうやら今日が俺の第二の命日らしいです。先立つ不幸をお許しください。ってだから俺はもう死んでるんだって。つーか初七日さえもまだなのに俺の魂、成仏するっぽいですよ?
そのとき、互いに俺ににじり寄ってるのに気がついたのか、死神と巫女が顔を見合す。
「あなたも国寺さんを成仏されるのが目的なんですの?」
「違う。我はかの魂を刈り取り、冥界に送るのが役目だ」
「国寺さんの魂が必要なんですの?」
「そういうことになる」
バチバチと目から火花を散らす死神と巫女。なんか、予想外の方向に話が向かってる気がする。つーかチャンスですか? やっぱり人間バンジー塞翁がUMA? いや訳わからんし。
「じゃあ貴方は敵なんですのね」
「敵? それならば我も汝を敵と認めよう」
じゃきん、と背中から大鎌を取り出す死神。やっぱりあの構造はすごく気になる。ひょっとして異次元に通じてたりしますか?
「望むところですの」
袖の中から数珠を取り出す巫女。つーか数珠って仏教だよな? 巫女なら玉串使えっての。
ってそんなことはさておき、十中八苦逃げるに如かず、と昔の人もおっしゃった。うん、せんきゅー先達。あなた方の死は無駄には致しません。安心して天国から俺の活躍を見守っていてください。
「では」
「先に国寺真の魂を捕らえたほうが勝ち、ということで」
「決まり、ですの」
互いに得物を構え、こちらに向き直る二人。つーか風向き変わってませんか? なんていうか全力向かい風? 風速60m以上。家屋の倒壊の危険あり、ですか?
あれですか? 風前の灯ってことですか? ちくしょー! 絶対に日本広告機構に訴えてやるっー!! みんな死にやがれっ!!
「おとなしくなさい、ですの」
「抵抗は為にならんぞ」
「おたすけー!!」
「駄目よぉん。か弱い魂を寄って集っていじめるなんてぇん」
逃げ惑う俺に天の声が聞こえてきた。って違う。俺たちの頭上から誰かが声を掛けてきたのだ。
空を仰ぎ見ると、そこにはへんてこな女がいた。
頭にはぐるぐると巻いた角。背中には蝙蝠羽。なんかすっげぇ露出度の高い服。もうあれです。あれだって全身声高々に叫びまくってるようなものです。
「へ、変態さんだ」
「露出狂、ですの」
「まぁ、暖かくなってきたしな。そういう気分なのだろう」
「失礼ねぇん。見れば分かるでしょう。私は悪魔よ、ア、ク、マ」
俺たちの生暖かい視線に気分を害したのか、暖かくなって出てきた露出狂の変態さんはそう宣(のたま)った。
えーっと、自称が自称でないとするならば、だ。
……ひょっとして、また増えちゃいましたか?
次回予告
「と、いうわけで、遥か魔界より真ちゃんの魂をゲットするためにやってきましたぁん」
「増えたよ、増えちゃったよ。案の定また増えたよ。俺の平穏無事な死後ライフを返してくれこんちくしょう……」
「国寺さん。部屋の隅で膝を抱えられてどうしましたの?」
「三笠清凪、そっとしておいてやれ。国寺真は人生について深く苦悩しているのだ、おそらくは」
「あらぁん。じゃあ私が慰めてあげるわぁん」
「寄るな暖かくなって出てきた露出狂の変態」
「しつこいわねぇん。悪魔だって言ってるでしょうぅん」
天井裏より愛を込めて
第九話「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃぁぁぁん。…………って呼んでねぇし」
悪魔娘の外見はディアー○、もしくは○ルデリーズ、性格は妲○ちゃんでよろしく。(やっぱり分かる人だけ(ry
- [2005年11月24日(木)] 天井裏より愛を込めて 第七話
俺、国寺 真。現在幽霊のくせに逃走中です。
詳しくは、聞くな。
天井裏より愛を込めて
第七話「晴れ、ところにより死神娘」
快晴というか、ピーカン照りとでもいうか、とにかく凶悪なほどに紫外線を垂れ流すお天道様を頭上に抱えて、俺はのんびりと宙に浮いていた。
ハンモックだとか、空中ブランコだとか、そんな落ちではなく、実際に宙に浮いている。
どこぞの新米巫女とやらに一晩中追い掛け回され、幾度となく命の危険に曝された結果、幽霊として進化したらしい。
このままいくと、ポルターガイストできたり、誰かに乗り移れたり、誰かを呪い殺せる日も、そう遠くないのかもしれない。
しかし、しかしだ。もしも宙に浮かぶきっかけになった、あの恐怖以上のものを体験しなければ、これ以上の能力が身につかないのだとしたら…………。
おっ、俺はこのままでいい! いいです神様!! どうか、どうかあれを二度も体験しなければならないような事態は勘弁してください!!
だってあれですよ!? 俺が全力で逃げてるのにゆっくり「カツッ、カツッ、カツッ」とか後ろから聞こえてきたりだとか、四つ角でどっちに行こうか迷ってたらいきなり「どちらに行かれるんですの?」とか言って追いかけてきた方向とは別の方から現れたりだとか、突然地面から「おほほほほ。無駄ですの」とか言いながら現れたりだとか、下手なホラー映画より怖かったんですよ!?
そんな恐怖の果てが、ただ浮くだけなら俺はそれでいい。これ以上何を望めっていうんだ。人間、謙虚なのが一番よいのです。あせらず、ゆっくり、のんびりと生きていければそれで十分なんです。
慌てない、慌てない。一休み、一休み。
俺は最近習得した、空中で横に寝転ぶを発動。そのまま風の向くまま、気の向くままを完全再現した状態で眠りにつこうとした。
……今度の敵は空からやってくる、らしい。
最初に見えたのは、飛行機雲だった。すごい勢いで作成される雲を見て、少し感動した。
それからなぜかわからないが、その雲がこちらを目指しているのに気が付いて嫌な予感がした。
急いでその場所から逃げようとしたが、無駄だった。どうやら自動追尾機能を内蔵していたらしい。
あ、死ぬな。と思った瞬間に、視界がぶれた。次に腹に軽い衝撃。最後に音がやってきた。うわぁ、ひょっとして音速超えちゃってますかぁ〜? なんだか、きもちよくなってきたなぁ〜。も、う、ね、む、い、よ、ぱ、と、ら、…………
―― そして世界は動き出す。
まず最初に感じたのは、背中に何かを叩き付けられる感触だった。次に全身を貫く衝撃。最後に、腹に突き刺さる痛み。
それは、幽霊になってはじめて感じるもの。死んでから二度と感じることはあるまいと思っていたもの。
……でも、ぶっちゃけてうれしくとも何ともない。
「つーか、痛いっ!? 痛いって!! 痛いって言ってるだろうがクソッタレ!!」
そうなのです。痛いのです。痛くて悶絶ものです。つーかこれくらいで済んでるのがなんだか奇跡っぽくて泣けてきますけどどうですか?
「言葉遣いが悪い。50点」
「つーか人の腹の上でなにやってやがる!!」
腹の上にいたのは、一人の少女だった。銀色の長い髪を頭の左右で括っている――俗に言うツインテールってやつですな。
金色の瞳には何の感情も宿しておらず、波のない湖のように静まり返っている。
精巧な西洋人形を思わせる容姿だが、なまじ動くだけに奇妙というか、奇怪な印象を受ける。
こいつが下手人らしい。
「汝(なんじ)の名、国寺 真で相違ないな?」
黒塗りに表紙は骸骨の銀細工というお世辞にも趣味がいいとはいえない本を開きながら、少女は言った。
「ああそうだ。っていうかいい加減俺の腹から降りろ! つーかなんで俺の名前知ってんだ?」
「質疑が多い。どれか一つにしろ」
「じゃあ、えーっと。アンタ誰?」
「我に名はない。ただの死神だ」
「へぇ、ふぅん、そう、死神ねぇ。…………死神? あのでっかい鎌持って、人の命を刈る、あの死神?」
「ああ、そのとおりだ」
そういって目の前の少女は、俺の腹に乗ったまま背中から巨大な鎌を出して見せた。……絶対に入れるスペースなんて存在しないと思うのだが、聞いたら負けになってしまうのだろうか。
い、いや、そんなことよりももっと気になることが存在する。
「あの、なんでワタクシにその大きな鎌を向けておられるのでしょうか?」
「今宵の獲物は汝ゆえ」
「うわっ随分直接的ですね。ていうか、俺刈られるの決定!?」
「安心しろ、痛いのは一瞬だけだ」
「どっかで聞いたよその台詞!? つーかマウントポジション!?」
やばい。刈られる。いろんなもんがいろいろと刈られてしまう気がする。
「あ、あの、な、なんで俺が獲物なんですかっ!?」
死神娘はしばらくじっと俺の目を見つめる。あー、なんとなく蛇に睨まれたカエルってやつの気持ちがわかった気がする。
「……なんとなく?」
「疑問系でしかも俺に聞くなよっ!?」
き、昨日とまったく同じような展開になっているのは気のせいでせうか?
「さぁ、我に身を任せるがいい」
「なんか絶対違うっ!!」
こうして俺は、巫女さんだけでなく、死神にまでも命を狙われることになったのでした。
嬉しくねぇ、絶対に嬉しくねぇ。
……これ以上、増えないよな?
どっかのエロゲかラブコメの主人公のような展開とか言っちゃダメだぞ?
次回予告
死神娘が言うには、俺は死ぬべき運命(さだめ)にはなかったらしい。
もう変えるべき肉体もないので、このまま魂のみ彷徨い続けると、なんかスンゴイことになるから刈り取りに来たそうだ。
……そういうことは、本編でいいやがれ。
天井裏より愛を込めて
第八話「我が名は、我が名は、我が名は…………何がいいと思う?」
死神娘のモデルは○ンテールだとかブリュンヒル○と思っていてくれれば問題ないっす(判る人だけ判っててくれ
- [2005年11月23日(水)] 休日はトコトンだらけるのは何とかならんか自分。
寝たのが3時。起きたのも3時。もちろん、朝と昼の、ですが。
まぁ、土日とかはもっとひどいんですが。
それからずっとぼんやりとテレビを眺めて、気が付いたらハリポタが終わっておりました。
せっかくの休みになにをやっておるか自分orz
てなわけで天井裏は本日はお休みでございます。
- [2005年11月22日(火)] 夢一夜
桜が舞っていた。
ひらひらと風が吹くたびに散る桜の花びらが舞う様は、雪の降る仕草に似ていて、私は飽きもせずにじっとそれに魅入っていた。
花びらの行く末全てを見納めようとするがうまく行かず、ならばと桜の木全体を眺めようと思ったが、端々で踊る花びらが気になってしょうがない。
どうしたものかと腕を組んで考え込むが、桜を見ているうちにどうでもいいことのように思えてきた。
「そんなに桜に気をとられていると、奪われてしまいますよ」
ふいに女の声が聞こえた。
声のほうを見るといつの間に現れたのか、桜の木の根元に一人の女がこちらに背を向けて立っていた。
美しい女だと一目でわかった。こちらを向いているわけではない。だが、芍薬のような凛とした佇まいも、桔梗のようににすっと伸ばされた背筋も、闇に透かしてもなお黒い色合いをした、桜とともに揺れる腰までもある髪も、すべてが女の美しさを肯定していた。
「こんばんは」
後ろを向いたまま女がこちらに声を掛けた。背を向けたままだというのに、女の声は耳元で話しかけられているかのように聞こえる。鈴を転がすような澄んだ声に、私はやはり美人だなと感心する。
「こんばんは。いい夜だね」
私は、女の後ろ姿と桜を交互に見比べながら挨拶を返す。
「何を奪われるんだい?」
ふと気になったことを尋ねてみることにした。
「眼(まなこ)を。躯(からだ)を。命を。そして、思いを」
「心は既に、奪われてしまっているよ」
まぁ、と女は口元に手を当て、朗らかに笑う。まるで花と咲くように。
それっきり会話はなく、ただ静々(しずしず)と花の雪が降り積もる。
「私は、桜に生まれとうございました」
しじまを破ったのは女の声だった。。
「桜に? 咲けば枯れるが運命(さだめ)のものにかい?」
私の疑問に、女は笑う。
「咲けば枯れるは、この世全ての理(ことわり)にございます。盛者必衰、栄枯盛衰、栄えたものが滅びぬ例(ためし)がございません。そして、それは女も同じことにございます」
女も、と私が問うと、はい、と女が答えた。
「女も盛(さか)りを過ぎれば後は枯れるのみ。若さもいつまでも続きはしません。やがて私も醜く老いてしまう」
私は女が老婆になったさまを想像しようとした。しかし僅かばかりの、桜の木より別(わか)たれた花弁が地面に降りるまでの刹那を経て、首を横に振る。美しい女の醜くなる様、というものが思い浮かばなかったのだ。
「しかし桜とて、やがては枯れる」
「ですが、春が訪れれば再び咲き誇りましょう」
そうか、としか最早答えようがなかった。ただ哀しかった。訳も分からず、理由すら見つからず、それでも私の桜に奪われてしまった心は哀しいと言っていた。
びゅう、と風が強く吹く。桜の花びらが私を覆い尽くそうと一斉に散る。
女がこちらを振り返るのが気配で分かる。しかし、桜の壁が邪魔をして見ることが叶わない。
「知っておられますか? 根元に女の死体が埋まっているから桜はこんなにも綺麗な花をつけるのだと」
「ああ、坂口安吾だったか」
花の吹雪がぴたりと止む。
「ならばこの木の下には、いったい誰が埋まっているのでしょうね」
私であればよかったのに。そう言って笑っていたのは、確かに私の妻であった。
妻が死んだ、と知らされたのは私が起きてまもなくだった。投薬自殺であったらしい。
とても安らかな死に顔だった。夢で見たあの笑顔のように。
葬儀の後、私は近所の公園に来ていた。夢で妻と一緒に見たものほど大きなものではないが、桜の木がある公園だ。
「遺体を埋めるわけにはいかないが」
そう断って、私は懐から一房の髪の毛を取り出した。妻の遺髪だ。
ほんの少しほど地面を掘り起こして、そっと髪の毛を埋める。
「また、会えるかな?」
私は木の幹に手を当てて、そう桜の木に尋ねた。
――春になれば、必ず。
そんな妻の囁きが聞こえた気がした。
なんか今一なんでそのうち書き直します。
「天井裏」のほうは今日はお休み。……明日も書くかどうか微妙ですが(爆
- [2005年11月21日(月)] 天井裏より愛を込めて 第六話
俺、国寺 真。浮遊霊やってます。
世界は、局地的に驚きで満ちています。
天井裏より愛を込めて
第六話「『ガラス玉』に映った月」
「巫女?」
「はいですの。あ、これ名刺ですの」
そういって手渡されたのは、『三笠神社 新米巫女 三笠 清凪(みかさ きよなぎ)』と書かれた紙切れ。いや、名刺か。
突っ込み待ちなのだろうか? 常識で考えるのならそうなのだろうだろうが、むしろ突っ込んだら負けか? 負けなのか?
しかしなんだ、この、キラキラした瞳でこっちを見つめている少女は? まるで「すばらしい出来栄えでしょっ?」と声が聞こえてきそうな笑顔は。なんとなく、初めて仕事で名刺を使ったときのことを思い出して涙がこぼれた。
っていうか、
「俺幽霊だからもらってもしょうがないし」
現にさっき掴もうとした俺の手は空を切った。
「残念ですの。ようやくもらってくれる人が見つかったと思ったのに」
幽霊相手に名刺なんて不必要だとお兄さん思います。
「それよりも幽霊でいらっしゃいますの?」
「巫女なのに気づいてなかったんかい」
「私(わたくし)、幽霊の方に会うのははじめてなもので」
それでいいのか、日本の巫女産業。
「あの、お名前は?」
「国寺 真。出来立てほやほや、ってほどでもないが、新米幽霊だ」
「まぁ、私と同じですわね」
確かに新米だと名刺には書いてあった気がする。
「国寺さん。成仏なさいませんか?」
唐突に巫女さんはすっごい笑顔でそんなことを言った。今までも笑顔だったのだが、濃度が違う。笑顔濃度。
今までの笑顔はぽややん級だったのだが、今の笑顔はずごごごご級だ。亜熱帯気候がツンドラ気候になった、といい直したほうがいいか? 常夏の砂浜がキラウエア火山の火口?
よくわからない? 安心しろ。俺にもよくわかってない。
唯一つわかっていること。このままここにいたらやばい。それだけは本能が教えてくれた。
「じ、じゃあ、俺はこの辺で」
そそくさとその場を去ろうとする俺。しかし、そうは問屋が卸してくれないらしい。
「ふふふ。どこに行かれますの?」
がっちりと首根っこを掴まれる。むしろ鷲掴みです。
「いや、ちょっと所用を思い出しまして」
「私を置いてですの? 酷い方ですわ」
振り向くな、振り向くんじゃない。終わる。振り向いたから何かが終わる。そしてはじまる?
「帰る! 僕、おうち帰るのっ!!」
「駄々をこねても駄目ですの。成仏なさいまし」
「いーやーだー!!」
俺の悲鳴は、誰にも聞き届けられることなく、夜の街中に響き渡った。
あ、今日ってば満月なんだっけ……。
って現実逃避してる場合じゃねぇつ!?
「うふふ。痛いのは最初だけですの」
「いーやーっ! おーかーさーれーるー!!」
次回予告
「ということで、国寺さんは成仏されてしまったので、次回からは私、三笠 清凪が活躍する除霊活劇『成仏されちゃいますの?』がはじまりますの」
「くぉらっ! 勝手に殺すんじゃねぇっ!!」
「真さんはもう死んでますの」
「揚げ足取んなよ。つーかなんだよ、除霊活劇って?」
「現れる怨霊悪霊魑魅魍魎を千切っては投げ千切っては投げ、ですの」
「いや、意味わかんねぇし」
天井裏より愛を込めて
第七話「晴れ、ところにより死神娘」
「ネタ切れですの?」
「それは言っちゃめーなのよ」
- [2005年11月20日(日)] 天井裏より愛を込めて 第五話
俺、国寺 真。
怨霊になりそうな勢いです。
天井裏より愛を込めて
第五話「『ヒトリノ夜』のその向こう」
「なんかさぁ。この辺って、ヤバくね?」
「あ。俺も思った。背筋に悪寒走るっつーか」
「はっはっは。テメェラ風邪でも引いてんじゃねーの?」
そんな話をしながら通り過ぎる若者たち。俺はそれをぼんやりと見送った。
自分の葬式から三日、俺はぼんやりと街を徘徊している。目的も理由もない。ただひとつのところにとどまりたくなかった。それだけだった。
「おやまぁ。すごい瘴気だね、これは」
俺の視界に一人の男が目に入った。若い男だ。身長は俺よりも高いと思う。
「君、このままだと“堕”ちるよ?」
男は俺のほうをじっと見詰めてそういった。
「お前、俺が見えるのか?」
今まで俺のことが見えたものなどいなかった。親父も、友人も、街の辻占も、通行人も、誰も俺に見向きもしなかったというのに。
「僕は君の御同類だからさ」
「御同類?」
「幽霊、ってことさ」
幽霊。死者の魂。死んだものの果て。死人の行き着く先。
「俺は、……」
「君は死んでいる。それは理解できてるかい?」
覚えている。雨の日の夜、俺はアイ○を助けようとしてひき殺された。
覚えている。葬式の日、謝りに来た女の申し訳なさそうな顔を。
覚えている。車の助手席に乗った男の、軽薄な笑いを。
「ぐうっ!?」
焼き焦がすような殺意。焼き尽くすような怨嗟。
身体の内から真っ黒なものが噴き出す。誇張や比喩表現ではなく。
闇は全てを喰らい尽くそうと、まずは目の前の男に狙いを定めたようだ。
「お、落ち着きたまえ。僕は敵じゃない」
男の言葉にぴたりと止まる闇。
「お前は、なんだ?」
「だ、だから言ったろう。御同類だって」
「俺はいままで幽霊なんて出会わなかった」
「それは君がまだ生きた頃と同じ目で世界を見てたからさ。言い換えれば、君はより死に近くなったといえる。それよりも、これをどうにかしてくれないかい?」
そういって男は、自分の目前まで迫った闇を指差して苦笑する。
「あ、ああ。悪い」
俺は謝って闇をどうにかしようとする。……どうにか?
「なぁ、ひとつ聞いていいか?」
「僕にわかることなら」
「これ、なんだ?」
「な、なんだ、って君が出したんじゃないのかい?」
「いや、気が付いたら出てたし」
俺はぽりぽりと頬を掻く。
「僕も詳しくは知らないんだけど、恐らく君の負の感情の発露、みたいなものじゃないかな?」
「負の感情? あれか? フォースのダークサイド?」
「怨霊とか、悪霊って聞いたことないかい? 多分、これがそれらの素みたいなものさ」
……俺の発言はきれいにスルーされた。
そういえば幾分か気持ちがすっきりしたような気がする。
「ようするにストレスみたいなものか」
「……ストレスに他人を巻き込まないでほしいものだけどね」
男は冷や汗を顔に張り付かせて真っ青な表情で虚ろに笑う。
「ま、悪感情は溜め込まないほうがいいってことさ。そのうち“堕”ちるよ?」
「“堕”ちる?」
さっきも聞いたような言葉。なぜか妙に引っかかる。
「早い話が成仏できずに自縛霊と化すってことさ。転生さえ許されず、自分が何故そこにいるのかさえも思い出せないようになる。悲惨だよ? そうなってしまったら」
男はそう言って暗く嗤う。その顔に俺は恐怖を感じずにはいられなかった。奈落に突き落とされるような、そんな笑顔。
「じゃ、僕はそろそろ行くね。君も早いところ成仏してしまったほうがいい」
そういって男は俺に背を向ける。
「なあおい!!」
俺は思わず呼び止めた。聞きたいことなんてなんにもないのに。
「なんだい?」
男は振り返らずに立ち止まったまま顔だけこちらに向けた。
「助かった。ありがとう」
そんな言葉が口をついて、言った自分自身が驚いた。男もやや驚いた顔をしたが、手を少しだけ上げるとそのまま去っていった。
「成仏、か」
俺はその場に留まって、先ほどの男との会話を思い出していた。
今すぐ成仏するのが恐らく一番いいのだろう。成仏した先のことはどうなるかはわからないが。
しかし、いろいろと問題がある。
まず第一に、どうやって成仏するのかがわからない。坊さんにお払いしてもらえばいいのだろうか?
そして、今の俺の存在が消えてしまう。それが怖い。俺はもう一度死ななければならないのか? 一度目はあっという間に死んでいたからよかった。しかし、今度は? 一瞬で消えてしまえるとどうして言える?
最後に、やっぱりあの男は許せない。
「跪かせて俺に許しを乞うぐらいまで嬲らなくては」
うん、それが今の俺の行動理念だ。間違いない。
そのとき、がさりと物音がした。野良犬か野良猫、もしくはカラスだろうか? 動物には幽霊の存在がわかるらしく、前を通り過ぎるたびに吠えられたり、警戒されたりする。実害はないのだが、なんというかうざいのだ。
……しかし、今回はそのどれでもなかったらしい。
「誰か、いますの?」
周りには俺のほかに誰もいない。いや、そもそも俺は幽霊だからカウント外だ。つまりは誰もいない、ってことだ。
振り返ると、そこには信じられない光景が広がっていた。
「えっ?」
いや、そこにいたのは一人の少女だ。
歳は高校生ぐらいだろうか。利発そうな少女に見える。長い髪は頭の上でくくられてる。いわゆるポニーテイル。
美少女ということを除けば、どこにでもいる普通の少女だ。唯一の特異点を除けば。
「なぜに巫女服?」
「巫女ですから」
そういってにっこりと笑った少女は、どこからどう見ても巫女さんだった。
次回予告
暗い話もそろそろ終わりそうな、そんな夜。
俺の目の前に現れたのは、新米の巫女だと名乗る少女。
俺ってば成仏されられちゃいますか?
天井裏より愛を込めて
第六話「『ガラス玉』に映った月」