きまぐれがき
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2003年03月13日(木) 悪夢

『あ〜 血糖値がずいぶん高いですね。日本1です!♪〜』
と、医師らしき人物が嬉しそうに指し示す検査表を覗いた
私が、『ギャーー!!』と叫んだところで目が覚めて、
夢だとわかった。
この叫び声は、隣のそのまた隣の部屋で眠っていた小マメの
耳にも響いたらしい。

あれだなあれだ。思い当たることがあった。
寝る前にふらふらとキッチンに行ったところ、テーブルの
上にある「うさぎや」のどら焼きの箱に目が留まったのだ。
上野広小路にあるここのドラ焼きが大好きな私は、ついつい
食べ過ぎてしまう。
この時も、今日はすでに2つも食べているではないかと、
伸ばした手を引っ込めたものの、『私を食べて♪』と甘く
ささやいてくるようなドラちゃんの誘惑に負けてしまったの
だった。

読みかけの通販のカタログを見ながら、とうとう1つ食べて
しまった。
ポットは既に切ってあったので、わざわざお湯を沸かして
お茶まで飲んでしまった。

その後は、お決まりの反省。
加齢とともに代謝量が減ってきているらしいというのに、
運動不足のうえに頭もまったくつかわない昨今、これでは
カロリーの摂り過ぎだ。
気をつけなければ、と。
こうしてなまじ反省などするから自己嫌悪にもおそわれる。
これの繰り返し。
そして夢にまでみてしまうというわけね。

それにしても『日本いち!♪〜』って、あのねドクター!
そんなに喜ばないでおくれ。私の血糖値は正常よ!


2003年03月09日(日) 哀悼...黒岩重吾

作家の黒岩重吾氏が亡くなられた。

氏の作品では古代史をあつかったものが好きだった。
歴史の授業で退屈きまわりなかった古代史の世界が、氏の著書
『天の川の太陽』『天翔る白日』『落日の王子・蘇我入鹿』などに
よってぐんと身近に感じることができた。

ハムレットのように文武にすぐれた見目麗しい王子が古代日本に
もいた。
その王子が悲劇的な死を遂げたとあっては、王子さまが大好きな
私としては読まずにいられるかと、最初に手にしたのが『天翔る
白日』だった。

陰謀渦巻く古代宮廷で、謀反の罪によって持統天皇に処刑された
大津皇子の物語だ。
濡れ衣であったにもかかわらず潔く散った薄幸の皇子と、氏や
歴史家たちは伝える。


 ニ人行けど行き過ぎ難き秋山をいかにか君が独り越ゆらむ

と詠んだ大伯皇女の歌は、弟大津皇子との最後の別れを歌ったもの
だと知られているけれど、こんなふうに短い生涯を閉じた弟への哀歌
なのだと、はじめてひめみこの心情が切々と胸に迫ってきたものだ。

ところが、「まぐわう」という言葉には途惑った。困ってしまった。
なんだか可笑しいのだ。
時は古代だもの、適切な言葉だと言われれば、そりゃあそうなんだけど。

奈良盆地から眺める夕陽は、大津皇子が眠る二上山に沈む。
美しい落陽の光の彼方に逝かれた黒岩氏に合掌。



2003年03月06日(木) F君

中学時代のクラスメートだったF君が、富士山の裾野にある
「種豚センター」というようなところで働いていると訊いたのは、
中学を卒業してから7・8年が経った頃のクラス会でだった。

種豚センターとは、消費者に安全で上質な豚肉を提供すべく、
品種の改良などを行なう所らしいが詳しくは知らない。
F君はそこで生まれた豚が、食肉になるために売られて行くまでの
世話をしているのだという。

豚が、どんなに可愛いかという話をし、別れの時はそりゃぁ辛い、
豚も自分の運命を察するんだ、と言った。

親のように成長を見守り、立派に大きく育て上げたところで手放すのだ。
それに豚の行き先は、未来を望めない屠殺場だ。
限りある短い命の傍での日々は、仕事とはいえどんなに心痛むことだろう。

スポーツマンで、いつも明るく爽やかで、休み時間にはちょこんと机に
腰掛け、面白い話をしては取り巻く女の子たちを笑わせていたF君は
おばあちゃんとの二人暮しだった。
そのおばあちゃんは高校の時に亡くなり、F君は天涯孤独になったと
やはりクラスメートの一人から訊いていた。

誰かの『ドナドナドナの世界だね』と言う声に、F君は相変わらず
爽やかに笑った。
そんなF君の笑顔を見ていたら、中学時代ダイナミックなテニスの
プレーで他校の女生徒までも熱狂させた勇姿と、富士山を背景に、
遠くに去って行く豚を見送るF君の姿とが、目の前を交互に浮かんでは
消えて行った。
その途端、どうしたのだろう。私の心は、涙の雨でザァザァ降りと
なってしまったのだ。

そしてこの日から、豚肉を食べることができなくなった。



2003年03月03日(月) 怖〜いお雛さま

雛祭りの時期に祖母の家に行くと、手を繋いでまず連れて
行かれるのが、普段はあまり行ったことのない奥の座敷だった。
『見て欲しいの』と祖母がおごそかに襖をひくと、ぼんぼりの
薄明かりの中に浮かんで見えるのは、だんだん飾りで息を潜め
ているお雛さまたちだった。

戦争でどれも焼けてしまって、これだけが残ったというその
雛飾りは、祖母の祖母が子供の頃から大切にしていたものなので、
疎開先に預けていた為に、戦災に遭わずにすんだのだという。

祖母の祖母とは、いったい私からみたら何代さかのぼるのだ?
その人はいつの時代に生きていた人なのか?
明治か?大雑把に計算すると江戸末期かもしれない。
それにお雛さまを疎開?とは、どういうことだ?
祖母は、大空襲で焼け野原となった東京の空の下で、この戦争は
勝つはずがないと確信した、という話をよくしてくれた。
人間はB29が投下する焼夷弾から逃げまどっていたというのに、
雛は優雅に疎開先にいたのか?

『ねっ』と、うなずくように祖母が見渡す雛壇を見ると、確かに
時代を感じる色焼けした装束に身を包んだ、髪の毛の抜け落ちた官女、
顔の剥げた家来たちがこちらを見て笑っている。
そして、もうすぐ天井についてしまうようなてっぺんのお内裏さまの
女雛には、なんとなんと顔がなかったのだ。
疎開先から戻った時には、こうなってしまっていたらしい。
『この古いお雛さまに、現代風のお顔をつけてあげても、合わないから』
そのままなのだという。

家に帰って母に話すと『そうよ、小さい頃あのお雛さまを見て、あなた
怖がって泣いてヒキツケを起こしたのよ』と言った。


2003年03月01日(土) アイライン

コンタクトレンズが今日で終るので眼科へ買いに行く。
使用しているのは1dayの使い捨て。
3ヶ月分ごとに購入しているのだが、残り少なくなってもつい面倒で
グズグズしているのだ。

やっぱり眼科の受け付けの人は、職業柄人の目元が気になるのでは
ないだろうか、ふと余計なことを考えてしまったのがいけなかった。

気合いを入れてアイラインをひいたのだ。
リキッドタイプ、ボールペンのように先端を押すと1回分が毛先に
滲み出てくるようになっている。
右目完了。今度は左眼。ところが液が毛先に出てこない!
買ったばかりで、液はたっぷりあるはずなのに。
振ってみても、カチカチとポッチを押さえても頑として出てこない。
分解してみたが、辺りに液が飛び散っただけで改善できない。
無駄な時間が過ぎただけだ。
こんなことに手間取ってしまい、ひいてしまった片方のラインを
落としている時間もなくなった。

仕方ない右は見事に引き締まった目元、左はうすらボケた情けない目元の
まま出かけてしまいましたわよ〜ん。



2003年02月26日(水) グサッ!

ズキズキ痛む気分。心にヤイバが突き刺さっているようだ。
悲しみのヤイバと言ったのは、ゲーテのミニヨンだった。
私のは言葉のヤイバだ。あ〜ヤダな。
ハガネのように頑強な心となって、飛んで来るヤイバを弾き飛ばしたいぞ。

なんにも考えたくない今夜は『ドッグショウ』のDVDを見る。
全米から愛犬自慢のカップルが、ドッグショウに参加する為に集まってくる
お話だ。
犬はまともだけど、人間がなんだかすごい。
富豪のヨボヨボにやせ細ってしまっているお爺さんの奥さんは、若くて
プリンプリンでぼんやりした女だ。
お化粧にだけ力が入りすぎていて、あとは抜けている。
陽気なゲイカップルが抱えていた犬は、ガクンとすぐに首がうな垂れて
やけにくにゃくにゃしていたなぁ。
優勝したのは、ペルーのフジモリ元大統領のような地味目の男と、男遍歴の
激しい過去をもつ女とのカップルの、夫の方に似た地味目の犬だったのが
以外だった。

中継のアナウンサーは、犬の審査についての知識がまるでない。
犬を観察する審査員のしぐさに、いちいち大げさに驚き、隣にいるコメンテーター
のような男に質問攻めだ。
どんな質問をされようが、ソフトにかわすこのコメンテーターは、
ニュースステーションで久米宏の横に座っている萩谷氏に、どこから見ても
そっくりだったのには、嬉しくなった。

この萩谷氏を見つけた辺りで、すっかり私の気分もなごんでいるのに気が付いた。
単純。


2003年02月25日(火) 今年もやって来た。

それは鼻からきた。
昨年までは目周りから始まっていたのに。花粉症。
鼻の中に小さな蜘蛛を飼っているような気がする。その蜘蛛がジワジワ
動くのだ。痒いし、くしゃみの連発だ。
鏡でよ〜く見ると、小鼻の周りは長年にわって激しく鼻をかんできた
痕跡として、毛細血管が切れて赤く血管が浮いてしまっているではないか。

目などもまぶたをひっくり返して、掻きまくってしまう。
毎年眼科で『角膜が傷ついてますね〜』と言われるほどだ。
その挙句、マルチーズのように目周り赤く涙目となる。
これが秋の十五夜あたりまで続く。
なんとも憂鬱なことだ。


2003年02月24日(月) レイフに満足

『レッド・ドラゴン』のレイフ・ファインズは、私がかねがねこんなレイフを
見てみたいと思っていたとおりの役柄だ。
猟奇殺人犯。
過去の作品のどの彼を見ても、チラリと猟奇的な薄気味の悪さが感じられ
ドキッとしてきた。目元に漂う尋常ではないただならぬ気配がクセ者なのだ。
そのクセ者を、映画館の座席から愛を込めて見守るワタシ。満足。
作品としての出来は賛否それぞれだろうが、前作の『ハンニバル』よりは
楽しめた。


2003年02月22日(土) ペリクリーズ

『ペリクリーズ』の前売り開始日を忘れていた。
仕方なく一席だけ空いていた座席を取り敢えずは
おさえているが、Yahoo!のオークションを睨んでいる毎日。

関西での公演は英国公演後。
チラシにはすでに「ナショナルシアターからの凱旋公演!」
と書かれている。
あら凱旋って、勝利を収めて帰還することではなかったの。
成功してこその凱旋でしょ。まぁいいか。
蜷川は常に勝ち進むべき使命をおびているのだと、解釈しよう。

トレバー・ナンの要望とのことだけど、この作品シェイクスピア
のなかでも、日本であまりとり上げられないが、英国では
ポピュラーなのだろうか。
波乱万丈の旅の物語。松岡和子氏の翻訳での舞台化。
今の時代を意識しながらシェイクスピアの台詞を語らせる
素晴らしい翻訳だ。


2003年02月21日(金) 雨の日の犬の散歩は



そぼ降る雨、犬の散歩が大変だ。
うちのサーシャは、こんなことで生きていけるのかと
心配させるほどの神経質な犬なのだ。
雨粒にあたるのはもちろん、濡れた地面を歩くなんてことは
イヤでイヤでたまらない。
でもトイレは散歩でと頑なに習慣を守っているのだから
仕方がない、雨足が少なくなったところで、お決まりの会話。

『今のうちにお散歩に行こうね』
『...........』イヤだと言う。
『チーチやウンタンを我慢するのは辛いよね』
『...........』足の裏が濡れるほうが辛いと言う。
『また膀胱炎になっちゃうよ』となだめになだめて散歩に連れ出す。

もう1匹いるゆきちゃんは、でもの腫れ物ところかまわず、
もよおしたい時には自分のハウスの中でだろうが平気〜という大らかさ。
天候なんか眼中にない。だいたい人の話など訊かない。
これはこれで困ったもんなんだけどね。



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