記念寫眞
 こんな知人が居ました、と以前知り合ひの女性に話しました。

 こんな知人が居ました。
 彼は僕が高校の頃に知り合つた格好良い中年男性でした。
 彼は僕に會ふ度に、僕を「自分の娘の様に想っている」と言つてくれましたが、決して其の「娘」と二人で寫眞に收まりはしませんでした。彼はいつも僕のカメラのレンズを避けてました。
 僕だけでなく、僕以外のどの女性とも彼は二人で寫眞を撮るのを控えてました。唯一人彼の奧樣との寫眞を除いては。
 彼は妻以外の女性との旅行では決して記念寫眞に寫らうとはしませんでした。後で浮氣の證據として妻に其の寫眞を付き付けられ、責められるのが判つてゐたのでせう。
 彼が安心して寫眞を撮られるのは奧樣にだけで、安心して一緒に寫るのも奧樣とだけでした。

 一緒に寫眞に寫らうとしない人に出會ふ度、僕は彼の事を思ひ出します。
 どの愛人とも別れやうとせず、どの愛人との浮氣の證據も殘さず、奧樣の浮氣の追及をかわし續けた彼の事を。

 ねえ、決して貴女と記念寫眞に寫らうとしない其の彼は、本當に貴女だけの彼ですか。
 本當に今度こそ、貴女だけの彼だつたらどれだけ僕は貴女を祝福することでせう。
2004年08月16日(月)
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