思考過多の記録
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2015年02月12日(木) |
2月の舞台の「ごあいさつ」 |
本当に久々の更新である。 僕が作・演出をした舞台が、先週末幕を閉じた。小さなスペースだったが。たくさんの方に見に来ていただいた。嬉しい限りである。 とはいえ、僕もこの芝居をやるにあたっては、忸怩たる思いを抱えていた。当パンの僕の「ごあいさつ」は、それをかなりストレートに書いたものである。もっと気の利いた、作品世界にさり気なく誘うような素敵な文章を書こうと思っていたのだが、何故かこうなってしまった。 本来、当パンの文章は、まさに当日劇場に来た人しか読めないものである。しかし、敢えてそれを載せてみる。もったいぶるようなことでもないだろうから。 何故そうしようと思ったかというと、この文章を読んで、今回の出演者の1人が、稽古場日記の最終回にとても嬉しいことを書いてくれたからである。 僕は、その文章を読んだ時、涙が出そうになった。その日記は、以下から読める。
http://fbi-keiko.at.webry.info/201502/article_8.html
皆さんは、何を感じるだろうか。 以下、「ごあいさつ」である。
気が付けば、随分と長いこと芝居に関わってきました。もし僕に本当に才能(というと逃げになるので、実力といった方がいいのかも知れません)があれば、この年齢まで続けていれば、今頃は賞のひとつも取り、日生劇場やシアターコクーンあたりで、古田新太さんや宮沢りえさんといった錚々たる役者さん達とともに芝居作りをしていたり、テレビの情報番組のコメンテーターに呼ばれたり、新聞や雑誌からコメントを求められたり文章を頼まれたりする立場になっているはずです。 しかし、現実の僕はといえば、しがない非正規労働者をしながら、このワニズホール3日間5ステの客席を埋めるのですら苦労しているという体たらくです。どうしてこうなっているかといえば、繰り返しますが才能、ではなく実力がないからです。それでも続けているのは、他にやることがないからというのが本当のところなのですが、それでもここまでやってくると、だんだん意地になってきます。何らかの結果を出さなければやめられない、という意地というか、意固地といった方がいいかも知れません。 先日、僕の知り合いが、文学関係のとある賞をいただいたとFacebookで報告していました。それは勿論喜ばしいことですし、僕はその人の表現活動を間違いなく応援しているのですが、どこかで素直に喜べない自分がいたことも事実です。 それは、また置いていかれたという感覚です。ジャンルは違えど、同じ表現活動をしているのに、その人は公に評価され、認められ、僕はそうではないという事実を突きつけられてもなお、手放しでその人を祝福できるほど僕は人間ができていません。これまでFBIの公演に出演していただいた役者さんや、関わったスタッフさんの多くも、今ではもう一つ上のステップに進んでいて、僕からは声をかけられない存在になっています。芝居以外の私生活においても、結婚さえしていない僕を尻目に、僕の同年代や年下の知り合いの子供が、今や学齢期に達しているという事実だけでも、僕がどれだけ他人から後れを取っているかが分かるというものです。 これだけ結果が出ないと、普通はもうとっくに見切りをつけているものだと思うのですが、この歳になってもそういう潔さは身につかなかったようです。 中島みゆきさんの「断崖-親愛なる者へ-」という曲の中に、こういう一節があります。
走り続けていなけりゃ 倒れちまう 自転車みたいな この命ころがして 息はきれぎれ それでも走れ 走りやめたら ガラクタと呼ぶだけだ、この世では
僕はまだ、ガラクタとは呼ばれたくはない。その一心でここまで続けてきました。まさに、意地だけです。他人を巻き込む分、はた迷惑な意地ではあります。けれど、「走り続けていなけりゃ倒れちまう」のですから、走り続けるしかありません。たとえ誰からも祝福されず、誰からも評価されず、何処にも辿り着かなかったとしても、ひたすら走り続けるしかない。 僕の周りには、もう誰もいません。みんなとっくにゴールしてしまったか、背中も見えないほど遠くに行ってしまったからです。僕はたった1人で走っています。孤独なランナーです。でも止まったらそこで終わりです。 いくつになっても、倒れるまで芝居を続けていきたい。表現を諦めたくはない。それが偽らざる今の僕の気持ちなのです。
今回は、ひょんなことから短編2本立てという初の試みとなりました。 しかも、久々の新作です。今の僕のあらゆるものがぎゅっと凝縮されているとも言えます。 お客様の琴線に触れるとか心を動かすなどという烏滸がましいことはいえませんが、せめて何ものかとして記憶にとどめていただけるような形になっていれば幸いです。
本日はご来場誠に有り難うございました。 どうぞ最後までごゆっくりご覧下さい。
息吹肇
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