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2005年10月30日(日) 私には日記が必要だ

「やりたいです」と言ってやらせてもらった雑誌が作り終わった。課題は山ほど残ったが、後悔がないようにがんばれた気がするので、1週間くらいはゆっくり仕事しようと思う。ここ数週間は生活全般が殺伐として、新聞も満足に読めず、家事をしても集中できずという状況だった。プレッシャーに弱いのかもしれない。

仕事は楽しいが、私は性格が横着な上、おっちょこちょいで頭の回転も早い方ではないので、編集者にはあまり向いていないと思う。ただ、少なくとも今はその「向いてなさ」の一部は自分の努力で改善できる部分だと信じている。原稿で誤字が多いなら、人より1回多く見直せばいいし、作業が遅いのなら、1日多く休日出勤をすればよい。実際、こんなかっこいいことを書けるような仕事ぶりではなく、上司に「こいつはダメだ」と思われているのではないかと、常に怯えている。

しばらく文章が書けなかったので、こうしてキーボードに向き合えるのが楽しい。就職活動をしている頃は、「書くことを仕事にしたい」と編集者を目指した。しかし、自分の好きな文章をつらつらと綴ることと仕事で「良い本」を作ることは全く違う。仕事で書く文章は、私が好き勝手に書くものよりもずっと実(じつ)がある。「彼らのゆったりした生活を覗いてみましょう」などと書こうものなら「雰囲気ネーム。再考してください」と赤字が入る。今の仕事のそういう部分(曖昧さを取り除いてわかりにくい部分をわかりやすく説明していくプロセス)は、結構好きだし世の中の本を以前よりも信頼するようになった。

働くことについては、よく友人と話す。私がご飯を食べるような人たちは、皆本当に頑張って働いていて、皆悩んでいる。テレビ番組などで語られる若者たちの像にどうしても違和感を持つのは、自分や、まわりの人たちのうまく言葉に出来ない葛藤や不安を、肌身を持って理解している大人(そもそも大人って誰だ)が少ない気がするからだ。このもやもやについて、何度か日記に書こうとしたが、うまく言葉にならなかった。

この土日は、仕事で約束を延期にし続けていた友人たちと会った。日曜はヴィム・ヴェンダースの映画『ランド・オブ・プレンティ』を見る。

9.11とアメリカ合衆国の近影を撮った、本当に素晴らしい作品だった。シニカルだったり思わせぶりだったりする部分は一切ない。正面から問題に向き合い、問題を正面から映している。私は絶対にアメリカに住みたくないのだけれど、その理由はあまりに巨大で、内部に矛盾を抱えこみまくっていそうだから。ヴェンダースの映画には、そんな矛盾だらけのアメリカを祖国として持ち、最終的に受け入れ、愛するしかない人々が出てくる。彼らがいる限り、アメリカに希望はあると感じる。

とるに足らない私の日々には、こうして心を動かされ、涙を流すできごとが必要なのだ。絶対に。来週はジャ・ジャンクーの『世界』(前作の『青の稲妻』がめちゃめちゃ良かった)かゴダールの『アワーミュージック』だねと話して別れた。

話が前後するが、金曜日に「高校時代の友人の、元彼」(複雑)から電話がかかってきた。「おまえ、あいつらとは会ってるの?」と聞かれる。「ううん、全然会ってないけど」と返すと私の少し残念そうな様子で「俺は高校の友達は大切にしているからな、良く会ってるよ」と言われた。

それで気付いたのは、私にとって「会っているか、会っていないか」はさほど重要ではないということ。「○○ちゃんが、(私の友人として、世界のどこかに)いる」感覚が頭の隅にあって、それは「ある」「いる」だけであたたかく、幸せなことであり、現実的に言葉を交わすとかお茶するだとかご飯を食べるだとかは、副次的な要素なのだと思う。

どうでも良いことをつらつら書いた。また更新していきますので、ぽつぽつ見てくれたら嬉しいです。



2005年10月23日(日) 校了したらたくさん寝たい。

この2週間は仕事に集中していて書けませんでした。よく「仕事大変?」と聞かれますが、大変だということではないと思う。私の要領が悪い。それと、自分以外の職場の人の状況がよく分からないが、終電近くまで働いている話をよく聞く。「6時退社のOLさんはいいよねー」などとグチる人がいるけれど、本当にそんな人は存在するのだろうか。私のまわりの人は頑張っている人がとても多いので、よく分からない。とにかくあと少しなので頑張る。



2005年10月10日(月) 川上弘美『センセイの鞄』

川上弘美『センセイの鞄』。久しぶりに恋愛小説を面白いと思った気がする。

江國香織や吉本ばななの書く恋愛小説の主人公に、私は死んでも感情移入できない。彼女たちはたいていお風呂にバラを浮かべたりするし(私はお風呂が嫌いだ)男性のいない時に、なにやら虚無った気持ちでおしゃれな雰囲気のバーに行ったりするし(私は花まるうどんが落ち着く)だいたい、顔がかわいいんだかスタイルが良いんだか知らないが、冗談の一つも言わないくせに、男の子にもてている。

『センセイの鞄』の月子は、とても面白い。顔もけっこうかわいいんだろう。でも40近いし、もろもろの問題でもてない。多分。

月子が、寂しくて歩きながら泣くシーンがある。一人で、泣くシーンだ。この恋愛小説の中で、私が一番良いと思ったのはここだった。一人で、泣く。

ananがよく書いている「彼がいない時でも、一人で行動できる女になりましょう」というのに、私は長年腹を立ててきた。そんな無理矢理一人にならなくても、こちとらひとりじゃ!と。だから川上弘美のように、きちんと一人を書ける作家が好きだ。「一人だ、さみしい、虚無だ」という、書いたところで何も心を動かされないことばを使わず、心地よいくらいの軽妙さで、ぷぷっと読者を笑わせながら、川上弘美はどこまでも一人の女の子を書いてくれる。



2005年10月03日(月) もう少しで元に戻します。

彼が村上龍が好きだというので、「村上龍と週刊誌が好きなのはあなただけですよ」と言ったら、彼は本当に呆れて笑って「そんな人はいっぱいいるよ」と答えた。村上龍と週刊誌が好きなサラリーマンは世の中にたくさんいるらしい。

私のまわりには、村上春樹とマルタンマルジェラが好きな人ばかりだったから、気が付かなかった。

「ああ、はいはい」とカテゴリーわけできるリアルを、ひっくり返して皮肉って、裏から見て一周した後もう一度表に返して笑い飛ばしたり言い換えたりする。そんなことばかりをしてきた。そうして結局行き止まりの所を、反対から見て「行き止まりじゃないよね」と言ってきた。

そういうウィットを、虚しいだとか醜いだとか、そんなことは思わない。辛くなることもあったけれど辛くないこともあった。

今は、けっこう毎日楽しい。村上龍の『最後の家族』を借りて読んだ。面白い小説だった。「村上龍はさ、ホワイトバンド付けててもいいんだよね。たぶん。許せる。村上龍はさ、面白い小説が書きたいだけだと思う」。


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