赤睫毛
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最初から何も合ってなんかなかった。
わたしさえいなければ あなたは自由になれるのに。
あなたさえいなければ わたしは楽になれるのに。
ほら。
わたしなんてそんなもの。 すぐに忘れてしまうから。
もう嫌いでしょう?
わたしのこと。
もう
あなたにわたしが必要ないならば
わたしは
わたしだけを愛してくれる
わたしを必要としてくれる人の処へ行こうと思います。
復習劇のはじまりはじまり
ご静聴くださいませ。
雲の隙間から 命を奪う
小虫が群がりアーチを作り 瞼に挟まって命を絶つだけ
赤くなった肌は 粉を吹いて一層赤く
滲む汗も 流れることは無く
聞こえない蝉の声と 聞こえない君の声に ただ耳を澄ます
どうか
強く強く抱きしめて。
どうか
壊れるまで抱きしめて。
どうか
壊れても狂うまで愛して。
細く細く 白くなってしまって
プチン
音を立てて切れる。
この灯りの下に私は呼吸をする。
少しそれを止めてみよう。
午前三時に鳩が鳴く。
見ていたものも
今の私には見えなくて
触れていたものも
今の私には触れられなくて
同じ時を生きているはずなのに。
細胞と赤ん坊たちが騒ぎ出している。
どうか。
そう祈るばかり。 時は過ぎ。
風が吹いてもわたしは動かない。
雨が降ってもわたしは壊れない。
空から零れる光もいらない。
朝露に濡れる若葉もいらない。
月の色に光る桜もいらない。
欲しいものは指の隙間を取りぬけて落ちて逃げる。
あたしには何もないよ。
罰はあたしに下る。 黒くなった鳩と白い烏の屍を背景に
どうか
どうか
黒い涙を流しましょう。
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