petit aqua vita
日頃のつぶやきやら、たまに小ネタやら…

2005年03月29日(火) た、ただいま〜(泣)

……さっき仕事場から帰ってきたとこです〜。(わ〜ん)

年に一回出すか出さないかの研鑚誌を出す時期がやってきたんです。(泣笑)
慣れない割付け作業に四苦八苦しながら、年に一回しか使わない(だから覚えてない)ページメーカーをカタカタと……。

めったに使わないくせに何でこんなに量があるかな(怒)
(←その空白期間に原稿が蓄積されたせいです)

…いやその。こういった作業、嫌いじゃないんですがあくまでそれはマイペースにできる場合。
気がせいてる時にやるモンじゃないですよ総ルビの原稿なんて!!!(←とっても手間)
普段は、古い機関紙やら新聞やら書類やら、紙の現物を扱う事の方が多いので、(…そりゃ打ち込みとか検索とか資料のリスト作成になったらパソコン使うけど)どうにもこうにも、頭はすっかりアナログ人間なんですな。
画面上での割付けなんてやっぱり実感わかないし感覚つかめない…(しかもめったにしないから)。

やはり平にはデータ入稿なんぞ、夢のまた夢のようです。(…あ、でも、あれの入稿にはワードの割付でいいんだから、ちょっとはマシなのかな…)←あきらめてない。

東京に出張中の室長に申し上げます。(見てる訳ないからこそ言いたいのさ)
どういう見積もりだったか知りませんが。
私がかかってるブツだけで、現時点で100ページ超えましたよ?!
しかもご注文に添うようにすれば、あと十数個のテキストが追加されますが……いいのかな?
「50ページくると多すぎるなぁ…」
………いやその。とっっっっくに、超えました。(指定したブツの量が多いんだってば)
だから室長、コレ、別冊にしましょう。
「薄くても良いから出そう」
…なんてそう言っておいて、このままいくと今回のが最厚になりますぜ。(苦笑)


……そんなこんなで、当分仕事漬けの日々みたいです。
ご心配をおかけして、大変申し訳ございません。
忙しすぎるせいで、体調はすこぶる良いです。(倒れてられない…)
また隙をみて、短くても良いから何か書きたいと思ってます。(語りでもSSSでも…)
あ〜でも、こないだのイランvs日本戦については……
頼まれても聞かれても何も喋りたくない…かな。
むしろバーレーンのサッカーに惹かれる私。(非国民?)
だってねー、すっげ荒削りなんだけど、勢いがあって、気迫があって…なんかイイんですよ。がむしゃらサッカーvv



2005年03月22日(火) 『名前にまつわるエトセトラ』2(親のシュミでした)

「…あ、緒方さ〜ん!」

 打ち掛けの昼休みの間に、棋譜整理のアルバイトについて詳しく話を聞きたかったヒカルは、芦原に精良の行方を尋ね、売店にやってきていた。
 見慣れた白スーツを見かけた時点で声をかけたのだが、そうすると、精良と話していた人物まで一斉に振り向いた。

「?!」

…ので、声をかけたヒカルの方が驚いてしまう。
 思わずそこで立ち止まってしまった。

 そこにいたのは、亜麻色の髪の、華やかながらも、触れれば切れそうな鋭利な空気をまとう精良と。
 さらりとした黒髪の、おだやかな目をした、ふわりとした柔らかい風情でたたずむ男と。
 その身にまとう色彩も雰囲気も違うのに、その顔の造作は明らかに血のつながりを示すかのように似通っていた。――精良の方が、いく分か背は高かったが。

「きんいろのかみ…」

 精良に抱かれていた少女が、ヒカルの前髪を見て、目をぱちくりとさせた。

「せいらちゃん、このおにーちゃん、ピカチュウのひと?」

 姪っ子の言葉に、精良はくすくすと笑って頷いた。
「そうだ。私の車に乗っているピカチュウをくれた人だよ。…そういえば名前も似ているな。…ヒカル、進藤ヒカルというんだ」
 精良がそう教えると、和はひかるおにーちゃん?と精良に確認する。
「…ああ。ほら、和、あいさつは?」
「こんにちは!ひかるおにーちゃん!」
「はい、よくできました」
 精良に褒められて喜ぶ姪を抱き直しながら、精良はヒカルに彼女を紹介した。

「進藤、前に話しただろう。この子が私の姪だ」
「あー、ぬいぐるみの」
 ヒカルは先日のぬいぐるみの一件を思い出し、頷いた。なるほど、精良は彼女のために、ぬいぐるみを選んでいたのだ。ヒカルの前髪をじっと見つめている子供は興味深々な様子で、そんな少女にヒカルはにっこりと笑ってみせた。
「こんちは!俺、進藤ヒカルだよ。「あい」ちゃんでいいのかな?」
「うん!「かず」じゃないよ!「あい」なの!」
「?」
 和の言葉の意味が分からなかったヒカルは首をかしげた。

「平和の「和」と書いて「あい」と読むんですが、なかなか最初から漢字を見て正確に読まれることが少なくてね…。子供なりに、気にしているようです」
「とーさん♪」
 少女は父親から伸ばされた腕に抱かれる。父親は子供を抱き直すと、ヒカルににこりと笑いかけた。
「はじめまして。緒方精良の兄です」
「あ…ハジメマシテ……進藤ヒカル…です」
 緒方によく似た顔に穏やかに微笑まれて、おまけにこういう者です、と名刺まで渡された。こういうやりとりに慣れていないヒカルは少しとまどってしまう。
「こら、進藤」
「なに」
「こういう時には社交辞令でも良いから、「いつも緒方センセイにお世話になってます」くらい言え」
「お世話って…バイトの話はこれから世話になるんだから、まだ世話になってないじゃん。社交辞令って、ウソつけばいいの?」
「…あのな……」
 眉をひそめる精良に、和がきっぱりと言った。
「ウソついちゃいけないんだよ!かーさん、いつも言ってるもん!」
「そうだよな〜vvあいちゃん。ウソはいけないよな〜vv」
「お前の思考は三歳児並か……?」

 そんなやりとりに、和を抱いたままの兄がくすくすと笑った。
「兄さん?」
「…いや、最近の子は度胸があるなと思ってね…アキラくんといい、進藤くんといい、精良に向かって真っ向から言い返せるなんて、大したものだ」
「えー、搭矢と一緒?!あんな、心臓から血管までアラミド製なヤツと一緒にされたくないなぁ…」
「あらみど〜?」
 首を傾げる和に、ヒカルはにっこり笑って答えた。
「「すっげえ丈夫」ってことだよ。落としても壊れないぜ?」
「たかいところからでも?」
「おう♪壊れない壊れないvv――ってーか、あの石頭じゃ落ちた先のコンクリまで割れるって♪」
「あきらおにーちゃん、すご〜いvv「あんぱんまん」みたい〜〜vv」

…別の意味でアキラを尊敬してしまった和に、ヒカルは爆笑していた。これは絶対、和谷に教えてやらねば!と固く決心する。

「…アキラくんと彼……仲が良いのか?」
「……ああ……まぁ………対局して検討やる度に、熱くなりすぎて怒鳴りあいするくらいには」
「それは、また……」
 あの、大人びたアキラくんが。
「微笑ましい光景だろうねぇ。機会があったら一度見てみたいな」
「ガキ同士のケンカなんだけど?まるっきり」
「だから楽しそうなんじゃないか」



 すっかり打ち解けた様子の和は、父親の腕から下りてヒカルとしゃべっている。ヒカルも、和の目線に合わせてしゃがんでやっていた。
「…ね、ひかるおにーちゃん。それなぁに?」
 どうやら、ヒカルがさっき和の父親から貰った名刺が気になるらしい。
「…ん?名札みたいなものかな〜?自分の名前と、こんな仕事していますよって書いてあるんだ。…ほら」
 ヒカルは和に名刺を見せたが、和にはまだ漢字が理解できていない。
「なんてかいてあるの?」
「……ん?あいちゃんのお父さんの名前。えーと…「おがた……ふみや」?」
 すると和はぶんぶん、と首を振った。

「ちがーう!父さん、そんな名前じゃないもん!」
「…へ?違うの?」

 本人から渡されたものだし、まさか本人のものじゃない、なんて有り得ない。…するとやはり読み方がまずかったのだろうか。

「?」

 ヒカルはまじまじと名刺を見つめた。


『緒方 史哉』


 そう印刷された名刺を。



2005年03月20日(日) 転んでる転んでる(久々の「義経」語りです)

いや〜、奥州の武士には都のジャニーズのキラキラは眩しかったらしい(笑)。
転ぶわ転ぶわ…地元の武士が…ころころとvv
イイのか?!イイのか?!そんな純朴で!!奥州人!!
…まぁ昔っから都人には弱いというか…甘いというか…(苦笑)。
奥州藤原氏の初代清衡の頃からしてそうだもんねぇ。(「炎立つ」参照。知ってる人いるかな?)
藤原氏父はおろか、兄弟をもころころと転び、地元の武士は娘を嫁に!と言い出し、佐藤兄弟も転び……。
…ええ、奥州が義経一大ファン倶楽部と化しつつあります。
……だから、楽しみなんですよね〜vvいよいよ義経が頼朝の元に駆けつけようとする時の地元の引きとめっぷりが!
そして結局は義経の意思に負けて心ならずも送り出す時のその見送りの壮絶さが!!
……「炎立つ」以来の衝撃のシーン、期待しています。


しかしこう見ていると…確かに、目先しか見ないひたむきさが眩しいのかもしれないけれど、やはり義経には政治力はないなぁと。
流されまくってますからね。
その上若い頃の周囲の環境には恵まれてますね。
……裏を返せばそれだけ揉まれていないって事なんだけど。
頼朝サンなんてねー。幼い頃から、伊豆でかなりの不遇の生活を送ってきたはずですから。
…なのに、昼はのほほんとしながら、しっかり京の情報、平家の情報を手に入れるしたたかさは流石と申せましょう。
さすが生まれながらに総領として育てられただけありますね。
…そして、義経の扱いに対して、平家方や秀衡に思いは馳せても、弟である義経には関心を寄せない頼朝にーちゃんがナイスですvvそうそう。頼朝にーちゃんはこうでないと♪
中井貴一サン、ホントはまり役……。

平家方では、重盛が面白いことになってますvv
清盛に向かって、「院も罰せられませ!」の発言!
いや〜、『平家物語』には有り得ない重盛の発言です。(模範的な人物としか書かれてないからな…)
…まぁ、『平家物語』の重盛さんは結構謎な人なので、それだけ自由度も高いんですが。
どうやら、「義経」の重盛は、平家ににじみ始めた暗部をさらに濃く侵食させてゆく触媒のような存在になるみたいですね。
…ええ、『平家物語』でも、重盛の死から、一気に時代が流れてゆきますから。
地味なんだけど、途中でとっとと死ぬ人なんだけど、結構大事なキーパーソンです。


…さてところで。
やはり時代劇ですから、その時代時代の所作指導はされている訳なんですが。
「義経」で分かりやすいのは、別れの時に手を振るその振り方。
手を前後に動かしているはずです。
今みたいに、横じゃないんです。
……それなのにね。
一人だけ「バイバイ」の手の振り方になってましたようじきさん!(大笑)
他の皆が微笑ましくも一生懸命所作指導に従って手を上げて前後に動かしている中だから、余計に目立つ目立つ。(笑)

そうそう、南原さんが義経一行の中にいますが、さすがだな〜、と思うのが、動作や表情が大きくて、つい目をひいてしまうこと。
顔いっぱいで演じてる、って感じで、好感が持てます。
画面に出てくる度に喜んでます。



2005年03月19日(土) ランナーズ・ハイ

…えー、現時点でも状況はあまり変わっておりません。

相変わらず、「何事?!」って自問自答したくなるほど仕事や何やでバタバタしています。
決して体調不良起こしていたんじゃないですよ〜。
ご心配かけていたようでスミマセン(苦笑)

忙しさは相変わらずというか、今後の10年計画の事業プランを聞かされてさらに気が遠くなったというか……。
当分は室長を見習って、「楽しいなぁ〜♪」とカラ元気でもひとりごちながら、兼務・兼務で積もる仕事を仕上げていくしかなさそうです。(ピーク超えると、意味不明の独り言が飛び交う職場…ふふふ…愉快ですよ…ええ……上司は「僕はドコ?ココは誰?」ってのたまい始めるし、同僚はオネェ言葉になるしさぁ。)

…そんなこんな状態だったのですが。

…なんかこう、最近そんな状態なのにも関わらず精神的に元気になってきちゃいましてね。(笑)
きっとバタバタしすぎてしすぎちゃって突き抜けたのではないかと思うのですが。
いわゆるアレですよ。ランナーズ・ハイっての。
脳内麻薬出まくり状態?

まぁそのおかげでちょっと復活して久しぶりにココでくっちゃべってるんですが。

なんとな〜く、書けそうな気もしてきたので、ぼちぼち復活しようと思います。
もちろんオガヒカ中心でいくつもりなんですが、以前にも増して突拍子もないジャンルに飛んで書きなぐったりする可能性が大にもなってきてますんで、

覚悟してくださいねvv



2005年03月07日(月) 目〜が〜ま〜わ〜る〜〜

書きたいことはたっっっっくさん!あるんです。
J1開幕とか。
F1開幕とか。
義経のこととか。
先日友人と『おお振り』で盛り上がったとか。
もちろん『黄金色の〜』も、『名前にまつわる〜』も、忘れてません!
企画だってあるのに!!

……それを文章化する時間がどうにもこうにも取れません…。
日曜日仕事で、明日振替休日取れる筈でしたが、どうやらブッ潰れそうです。(わ〜ん)
おかしいな〜?私の部所、年度末なんて関係ないはずなんですけどねぇ…?
(いやどう考えても仕事以外の用事も多すぎる……謡とか音頭とかお茶とか劇とか歌とか……はぅ〜)


すいません。
気長〜〜に、構えてやってくださいませ。m(_ _)m



2005年03月02日(水) 『名前にまつわるエトセトラ』(華氏シリーズ)

昼時、対局は打ち掛けとなり、棋士たちはそれぞれ昼食をとるなり、休憩するなりと思い思いの時間をすごそうとざわめいていた。

「緒方先生!」
 そんな中、精良は棋院の職員に呼び止められる。
「なんでしょう」
 すらりとした肢体をいつもの白いスーツをまとう彼女は、まだ対局の雰囲気をひきずったままだ。ぴしりとした冷徹な視線が眼鏡越しに職員に刺さる。
 彼は一瞬たじろいだ。
「あ…あの……お客さんです」
「客?」

(対局日だというのに何て迷惑な)

…精良は心の中で悪態をついたのだが、職員をはじめ周囲の人間は彼女がどう思ったのか聞こえたような気がした。
 その表情といい、視線といい、雰囲気といい、全身で「迷惑だ」と語っていたので。
 そんな精良に相対する職員は自分の不幸を呪いたくなったが、とりあえず、誰が客として来ているのかを伝え終わらないことには、彼の使命は終わらない。先程事務室で誰がこの用件を精良に伝えるかでさんざんモメた挙句、結局クジ引きで見事当たりを引き当てたのが彼だった。
…そういえば、今朝の占いでカニ座は最下位だった。しかも「仕事で突然トラブルに巻き込まれるかも〜」。…確かに当たってる。
 しかし当たってるからどうだというのか。この状況は変わらない。

「…あ、緒方さ〜ん」

 緊迫した空気を破ったのは、能天気な彼女の弟弟子の声だった。

「お兄さんと姪御さんが売店のところに来ていましたよ。緒方さんに会いにきたんじゃないですかぁ?」
 その言葉に続いて、職員も必死に続ける。
「…はい。お身内の方と伺っております。「売店で待っているから」…と伝言が……」

 精良は眉をひそめた。…しかし、先程までのあからさまに険悪なオーラは引っ込んでいる。
「…やれやれ、何の用事なんだか……」

 精良は階下に向かう為、エレベーターへと去ってゆく。
 コツコツと響くヒールの音が消えた時。芦原は「ありがとうございますぅ〜」と職員にすがりつかれたのであった。
――それをまあまあと宥めながら、さりげなく次回の囲碁セミナーの行き先を某棋士と交代してほしいなぁ…なんて交渉をもちかけてゆく。…こうして、「搭矢門下はクセ者揃い」という定説は確固たるものになってゆくのであった。










 一方、精良は売店の本棚でぱらぱらと本をめくる兄と、その足元にまつわりつく少女の姿を見つけた。

「兄さん?」
「――やぁ、久しぶり」
「せいらちゃん♪」

 妹の声に気づいた兄はぱたん、と本を閉じて穏やかに微笑み、少女は嬉しそうに精良の元に駆け寄るのだった。
「ひさしぶりだね、和」
 自分の足元にぎゅっと抱きついてくる少女を、精良はふわりと抱き上げる。少女は嬉しそうにきゃあ、とはしゃいだ。
「対局日だから、遠慮しようとは思ったんだが…和が会いに行くと聞かなくてね」
 すまないな、という風に彼は苦笑した。
 一人娘にどこまでも甘い兄に、精良もつられて苦笑した。
「…まぁ、今は丁度打ち掛けだから……」
「あのね、せいらちゃん、あしたね、あい、おぶたいにでるの!」
 精良の言葉をさえぎり、少女はにっこりと微笑んだ。
「おぶたい…って、舞台か?」
「明日の『鞍馬天狗』で、初舞台だよ。急遽決まったので、今日申し合わせをしてきたところだ」
「あいねー、きものきて、「ちご」になるのー♪」
 嬉しくて仕方ないらしい少女は、満面の笑みを浮かべる。
「和、渡すものがあったんじゃないか?」
 父親の言葉に、少女ははっとして、慌てて肩からさげていたポシェットからいびつに折りたたまれた紙を取り出し、精良にさしだした。
「…ええと…「よかたらみにきてくだしゃい」!」
「よかったら見に来てください」…おそらく父親が教えたであろう言葉を丸読みしながらチケットを差し出す姪の可愛らしさに、精良もつられて微笑む。そして。ちいさな手からチケットを受け取った。
「…ありがとう。是非、見に行かせてもらうよ」
 大好きな「せいらちゃん」にチケットを自分で渡せた上、来てもらえると返事までもらったので、少女は精良の腕の中で大はしゃぎしてばたばたとあばれる。
 そんな興奮状態の娘を抱き取りながら、兄は妹に確認した。
「いいのか?」
「明日なら大丈夫。指導碁の予定もない。…それに、せっかくの和の初舞台で、本人からチケットまで貰ったんだから」
 ありがとう、と、姪のさらさらとした黒髪をなぜると、少女はくすぐったそうに首をすくめた。
「助かったよ。ついでにビデオ撮影も頼む」
 自分は出演者側なので、娘の初舞台をビデオに撮る事ができない上、妻に頼もうにも妻は精密機械類ととことん相性が悪いのだ。おかげで、パソコンや撮影機材一式、彼女は接触禁止なのである。
「そっちが本命か。親父たちに頼めば喜んで撮ってくれるだろう…」
 …ジジバババカだから。
「たぶん…撮りまくるだろうなぁ。和「だけ」を」
 …ジジバババカだから。
 自分の両親がやるであろう行動が容易に想像できて、兄妹は苦笑した。
 それでは、何の舞台に出たのかなどの記録にならないのだ。後で映像を編集するのにかなりキツい。

「…分かった。撮るのは『鞍馬天狗』だけでいいな?」
「できれば俺が出る『草紙洗』も撮ってほしいな」

 仕方ない、と了承した精良に、にこにこと兄は追加注文してよこす。…決して横暴な兄ではないのだが、このおっとりした兄の要求に、精良は何故か昔から逆らえないでいるのだった。


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