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2002年01月23日(水) |
Добрый день! |
構想4年執筆2週間、テーマ「だけ」なら博士論文級の 卒業論文が本日14時30分完成。同31分プリントアウト。 同40分提出。サルティン・バンコばりの綱渡り。
先週末辺りから家族以外との満足なコミュニケーションも 取らず、妙にストイックな気分に自己満足しながら 家と大学の往復をくり返す。だんだん気分が荒んできた。 気分転換ってこういう時に必要なんだろうなと思いつつも、 絶対的に時間が足りなかったのでそれどころではなく。
変な史料の読みすぎのせいか、言葉の語尾に「候」が 付くようになり始めたのが日曜の夜。そのせいで、 ついに家族とのコミュニケーションにも破綻をきたし始めた。 憲法に保障されている「文化的な最低限度の生活」すら 危うくなり始め、ゼミの先生の違憲性を問うべく 東京地裁に訴えようか、なんて夢見たのが確か月曜の早朝だった。
来週は恐怖の卒論発表。 就職面接より緊張している。 無謀にも先生の専攻分野に挑む格好になってしまったので、 サンドバック状態になるのは覚悟している。
*************************************************************** タイトルはロシア語で「こんにちは!」。 卒論執筆中の息抜きとなったのが来月からの旅の計画を 立てる時間だった。明日からは航空券やビザの手配に 奔走しなければならない。
現在の計画。2月中旬東京を出発。 岡山→下関→釜山→ソウルとJR&船&韓国国鉄で。 ソウルで一週間ほどゼミ合宿に参加し、 現地でゼミメンバーと別れ、ウラジオストクへ。 ウラジオストク→シベリア鉄道→モスクワ→ヘルシンキ。 フィンランドでは話題のユーロを使用する事になる。 ヘルシンキからフェリーでバルト海を渡ってストックホルム着。 3月上旬にスカンジナビア諸国に滞在して そこから先はユーレールパスでヨーロッパをふらふらと。 ヴェネチア、フィレンツェ経由でリスボン近くの ユーラシア大陸最西端のロカ岬までは行こうと思う。 太平洋から大西洋へ。これで大陸横断! 帰国は・・・まあ入社式に間に合えばそれでよし。
ソウルとコペンでは友人と会う予定で、 もしかしたらストックホルムで都合がつきそうな人も。 海外で待ち合わせなんて出来るのだろうか? 成功したら面白いものだ。盛り上がるのだろうな。 後はロシア語の勉強をしなくては。
До свидания!(ダスビダーニャ:さようなら)
必死にグラウンドを駆ける選手達を、 「かつてどこかで見た展開だな」 そんなことを思いながら眺めていた。
その時、こんな声が聞こえた。 「1トライ1ペナルテイで逆転だ」。 そう、1ヶ月前の同じ場所で行われた試合でも、 同じような時間帯に同じ点差をつけられていた。
インジュアリータイム。 一人の選手が、鉄壁のデイフェンス網を するすると抜け出しライン際を疾走した。 奇跡の逆転劇の再来が刹那、頭をよぎった。
ノーサイドの笛とともに、選手達はそれまで所狭しと 駆け回っていた国立のグラウンドに崩れ落ちた。 「奇跡はそう容易く起こらないからこそ奇跡なんだよな」 そんな風に自分を納得させて、卒論の執筆を再開した。
優勝した時のみに歌う事が許されているあの歌を、 10年間の在学中に一度、聴いてみたかった。 最後にあの歌を歌ったあの監督ならば、 10年以上待ちつづけているたくさんの赤黒ファンに、 きっと来年それを聞かせてくれるはずだと思う。
昨年末、ソルトレークオリンピック女子フィギュアの 日本代表選考を兼ねたフィギュアスケートの大会があった。 切符は2枚。うち、1つは早々に決定。残る1つの切符を巡って 村主章枝、荒川静香の両選手がこの大会で争い、結果、 村主選手が代表に内定した。 おめでとう、そしてオリンピックで頑張ってください。 これでもう誰もあなたの名前を読み間違えなくなると思う。
************************************************************ 大学2年の春、村主選手が所属する学部で僕は アルバイトをしていた。新入生にシラバスや 学生証を配布したり、科目登録を受け付けたり するのが仕事だった。
その年、某有名芸能人が入学する学科の担当を巡って、 アルバイトの間で当然のごとく争いがおこった。 けれど、僕は普段の行いの悪さを露呈し(?)、 あっさりとじゃんけんに負けてしまった。 こうしてやむなく、僕は他の学科の担当となった。
入学式の日の仕事は、新入生に名前と写真を確認して 学生証を手渡すというもの。マンモスと揶揄される程の あまりの人の多さと、すぐ後に控える入学式に対する 不安もあってか、どの顔も緊張気味。
「あ、あの・・・」 「はい?」 「ネクタイの結び方がわからないんですけど・・・」
訛りの入った口調でちょっと似合っていない スーツ姿の新入生に、そう声をかけられ、 自らの一年前を思い出して思わず苦笑しながら、 結び方を教えたりするなんていうこともあった。
************************************************************ そんなハプニングも過ぎ去り、いつ果てるとも 知れぬ単調な作業に少し飽き飽きし始めていた時、 一人の女の子が僕のいる窓口にやってきた。 そして学生証と引き換えに提出された合格通知書には こんな名前があった。
○○学科 村主 章枝
「はい、えーと、ムラヌシさんですね?」 「いえ、スグリです」
どこか少し怒りを込めたような、凛とした声で返されて、 僕は思わず彼女の顔をまじまじとみつめてしまった。 他の新入生が服装や化粧でどんなに頑張っても緊張感や あどけなさを隠せないでいるのに対して、彼女の表情は とても落ち着いていた。それは自信に満ち溢れた表情とも 異なっていて、確固たる自分の信念に裏打ちされて何かを まっすぐ見つめるような、そんな表情だった。
気を緩めっ放しで作業していた僕は、思わず居住まいを 正して、詫びの言葉と共に書類一式を彼女に手渡した。 この日僕は200人近くの新入生を相手したが、 今でも顔と名前を覚えているのは彼女一人だけだ。
その彼女、村主章枝選手が日本女子フィギュアスケートの エースであると知るのに、そう長い時間はかからなかった。 国際大会での華々しい活躍が間断なくメデイアを通じて 耳に入ってきた。そして最近、彼女の4大陸選手権での優勝に よって、ソルトレークオリンピックでのフィギュア女子日本代表 の枠が1つ増えたということを知った。
あの時彼女は、それまで何度も読み間違えられた名前を 同じように読み違えた人間がいた、と刹那不快に思った だけなのだろう。けれど、鮮やかな残像を一方的に心に 焼き付けられてしまった僕は、今度のオリンピックで彼女が 表彰台の一番高いところに立って欲しい、と強く願っている。 同じ大学の人間として、なんていう薄っぺらな動機の他に、 ほんの少しばかりの個人的な思い入れをこめて。
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