エンターテイメント日誌

2007年02月24日(土) 今年もやります、アカデミー賞大予想!

「ディパーテッド」の評価はD。オリジナル「インファナル・アフェア」の足元にも及ばない救いようのない駄作である。元祖にあって焼き直し(リメイク)にないもの。それは男の色気であり、情愛や絶望、すなわちエモーションである。なんなんだ、あのくだらないラスト・シーンは!?ただし、これでスコセッシがオスカーを獲ることに筆者は異議を唱えない。功労賞という意味で当然であろう。むしろ遅すぎた。スコセッシは「タクシー・ドライバー」か「グッドフェローズ」「レイジング・ブル」あたりで受賞すべきだった。

さて、今年のオスカー予想である。

作品賞:リトル・ミス・サンシャイン
監督賞:マーティン・スコセッシ「ディパーテッド」
主演女優賞:ヘレン・ミレン「クィーン」
主演男優賞:フォレスト・ウィッテカー「ラスト・キング・オブ・スコットランド」
助演女優賞:ジェニファー・ハドソン「ドリームガールズ」
助演男優賞:エディ・マーフィ「ドリームガールズ」
オリジナル脚本賞:マイケル・アーント「リトル・ミス・サンシャイン」
脚色賞:ウィリアム・モナハン「ディパーテッド」
撮影賞:エマニュエル・ルベツキ「トゥモロー・ワールド」
美術賞:パンズ・ラビリンス
衣装デザイン賞:Curse of The Golden Flower
編集賞:ディパーテッド
視覚効果賞:パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト
メイキャップ賞:パンズ・ラビリンス
音響賞:ドリームガールズ
音響編集賞:硫黄島からの手紙
作曲賞:パンズ・ラビリンス
歌曲賞:Listen「ドリームガールズ」
外国語映画賞:パンズ・ラビリンス
長編アニメーション賞:カーズ
短編アニメーション賞: マッチ売りの少女
長編ドキュメンタリー賞:不都合な真実

*短編ドキュメンタリー賞と短編実写映画賞については作品に関する情報が全くないので棄権する。

監督賞と演技賞について、波乱はほとんどないだろう。可能性が若干あるのは助演男優賞がアラン・アーキン「リトル・ミス・サンシャイン」に置き換わるくらいか。今回一番混沌としているのが作品賞。正直分からない。

期待しているのはメキシコ人の撮影監督ルベツキの受賞。アルフォンソ・キュアロン監督の「リトル・プリンセス」を観た瞬間から彼のライティングの虜になった。テレンス・マリック監督「ニュー・ワールド」の映像美も圧巻だった。



2007年02月17日(土) フレンチ・ノワール

フィルム・ノワールの傑作は「LAコンフィデンシャル」「インファナル・アフェア」以降途絶えて久しい。「あるいは裏切りという名の犬」はフランスから届いた久々の快作という前評判で期待して観に行った。ロバート・デ・ニーロ主演でハリウッド・リメイクも決まっているという。

評価はD。失望した。つまらん。まずこの物語の主題は「友人から裏切られた男の絶望」の筈だ。しかし、主役の男ふたりがかつて親友だったという肝心の部分が全く描かれていないために、エモーションを喚起しない。だって最初から対立してんだもん。過去にひとりの女を奪い合ったというのも会話だけで処理されているので設定が生きていない。つまりシナリオが駄目。

それからやっぱりノワールって男の色気が出ないと魅力ないんだよね。「LAコンフィデンシャル」も「インファナル・アフェア」も男たちが格好良かった。でも「あるいは裏切りという名の犬」のふたりは鼻がデカイだけでお粗末。音楽も屑。論外。フランス映画再興の日はまだまだ遠い。あ〜ぁ、ロベール・アンリコ監督の「冒険者たち」(1967)なんか大好きだったのになぁ。アラン・ドロンとリノ・ヴァンチュラが良かった。そしてなんてったってふたりの男が愛するレティシアを演じたジョアンナ・シムカス!口笛の「レティシアのテーマ」も哀愁が漂っていて胸に滲みた。

「あるいは裏切りという名の犬」のリメイクが成功するかどうかは脚本家次第だな。



2007年02月10日(土) 一挙放出!新春、短評祭

「木更津キャッツアイ/ワールドシリーズ」評価:C-
クドカン(脚本家:宮藤 官九郎)のホンは面白い。しかし所詮これはテレビドラマだな。

「ヘンダーソン婦人の贈り物」(←クリックで公式サイトへ)評価:B
大女優ジュディ・デンチ(007のM)が貫禄の名演。ミュージカル仕立てなのも○。

「鉄コン筋クリート」評価:C−
セル画アニメとCGの融合が素晴らしく、技術的には見ごたえあり。しかし如何せん物語が陳腐で詰まらない。松本大洋の原作(漫画)に問題あり。絵は凄いけれど中身が空っぽ(つまり見掛け倒し)という意味で大友克洋の「AKIRA」を想い出した。

「不都合な真実」評価:B+
今年のアカデミー賞ドキュメンタリー部門はこれで決まり。ためになるし、面白い。元米副大統領のアル・ゴアさんのユーモアを交えたプレゼンテーションの上手さに舌を巻いた。是非オスカー・ナイトでも彼のスピーチが聴きたい!

「世界最速のインディアン」評価:B+
アメリカという国は開拓者精神(Frontier Spirit)を持った者に対しては寛容なんだなぁとしみじみ想った。生きる勇気を与えてくれる映画。何が凄いって、こんな辺境の地でロケされた低予算映画に名優アンソニー・ホプキンスが出演していることだろう。彼の役者魂にブラボーの花束を。



2007年02月03日(土) 檀れい、あるいは楊貴妃の再来

檀れい(「壇」じゃありません)は美しいひとだ。1999年に宝塚大劇場で月組の娘役トップとしてデビューした「螺旋のオルフェ/ノバ・ボサ・ノバ」を観劇して以来、筆者は彼女のファンである。東京の日生劇場で観た「風とともに去りぬ」のメラニー役も良かったが、なんといっても絶品だったのは星組に組替えになって主演した「王家に捧ぐ歌」(宝塚版アイーダ)である。彼女が演じた王女アムネリスの匂いたつ気品、高貴な色香、凛とした佇まいには圧倒された。DVDが発売されているので疑わしいと思う人は是非観てほしい。

檀れいはダンスが苦手だ。歌もあまり上手くない。演技力があるわけでもない。しかし、それらの欠点を補って余りある美貌が彼女の最大の武器だ。美は全てを超越する。それさえあれば充分だ。清く正しく美しく〜それがタカラジェンヌの基本である。

9割強を女性が占める宝塚ファンの多くは男役しか眼中にない。だから美貌の娘役は嫉妬の対象となり激しいバッシングを受ける。圧倒的人気を誇った大地真央の相手役だった黒木瞳がそうだった。剃刀の刃が入った封書が送られてくることなんか日常茶飯事だったそうだ。檀れいも在団中は激しい攻撃の的となった。しかし彼女は負けなかった。歌劇団の中国公演では絶賛を博し、「楊貴妃の再来」とまで呼ばれた。

彼女の退団後、すぐにアプローチしてきたのが山田洋次監督である。山田洋次の壇れいに対する賛美も凄まじいものがある。まあここを見て欲しい。「武士の一分」の彼女も本当にため息が出るくらい美しかった。文句なし、新人賞総なめも当然である。

山田洋次が日本共産党支持者であることは有名で、その左翼イデオロギーが映画に顔を出すとウンザリする事が多い。「隠し剣 鬼の爪」でも理不尽な封建制度への怒りとか軍隊批判とか、どうでもいい主張が鼻についた。しかし、「武士の一分」ではエンターテイメントとしての映画作りに専念しており、予想外に出来が良かったと思う。正当な評価としてはB+なのだが…、う〜ん、檀れいに目が眩んでAにしておこうか。

とにかく観客の予想を裏切らない予定調和の安心感が心地よい。時代劇の定番である悪代官が登場した時はやんややんやの喝采を送りたくなった。檀れいに優しい言葉をかけようが、もう見るからにそういう顔をしているんだから笑っちゃった。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]