エンターテイメント日誌

2003年12月27日(土) 2003年映画ベスト30選!

さあ、恒例のベスト30祭りだ!2003年に日本の映画館で初公開された映画のみを対象にしている。以下に挙げる全作品のレビューは今年のエンターテイメント日誌に書いている。具体的な選考理由を知りたければここの目次から探してほしい。また今年は新企画として個人賞を設定した。愉しんでもらいたい。

01. シカゴ
02. 無間道(インファナル・アフェア)
03. ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔
04. 青の炎
05. ロボコン
06. ホテル・ハイビスカス
07. ボーリング・フォー・コロンバイン
08. ファム・ファタール
09. フリーダ
10. 阿修羅のごとく
11. マッチスティック・メン
12. おばあちゃんの家
13. 名もなきアフリカの地で
14. ファインディング・ニモ
15. トーク・トゥー・ハー
16. ゲロッパ!
17. 木更津キャッツアイ 日本シリーズ
18. 裸足の1500マイル
19. 8Mile
20. キル・ビル
21. キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
22. 英雄/HERO
23. マトリックス・リローデッド
24. ラスト・サムライ
25. エデンより彼方へ
26. WATARIDORI
27. 猟奇的な彼女
28. 呪怨2
29. 黄泉がえり
30. 東京ゴッドファーザーズ
次点 チャーリーズ・エンジェル フルスロットル

断トツのワースト1 戦場のピアニスト
下らないワースト2 過去のない男
裏切りのワースト3 キューティ・ブロンド ハッピーMAX 

個人賞
監督賞:古厩智之(ロボコン)
主演男優賞:アンディ・ラウ(無間道)
助演男優賞:エリック・ツァン(無間道)
ヒロインが一番輝いていたで賞:長澤まさみ(ロボコン)
助演女優賞:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ(シカゴ)
撮影賞:クリストファー・ドイル
 (裸足の1500マイル、英雄/HERO)
脚本賞:荘文強/麥兆輝(無間道)
作曲賞:エリオット・ゴールデンサル(フリーダ)
主題歌賞:エミネム(8Mile)
美術賞:霍廷霄/易振洲(英雄/HERO)
衣装デザイン賞:キム・バリット
 (マトリックス・リローデッド)ただしザイオンの場面を除く
舞踏振り付け賞:ロブ・マーシャル(シカゴ)
アクション振り付け賞:ユエン・イーピン
 (マトリックス・リローデッド)
特殊視覚効果賞:ジョン・ゲイター
 (マトリックス・リローデッド)ただしザイオンの場面を除く
オスカー授賞式でハッタリかましてくれたで賞:
 マイケル・ムーア(ボーリング・フォー・コロンバイン)
犯罪者のくせに厚かましいで賞:ロマン・ポルノ好き、
 もとい、ロマン・ポランスキー(戦場のピアニスト)



2003年12月20日(土) 日米アニメ対決!<東京編>

これは前回<グレートバリアリーフ編>からの続きである。

来年のアカデミー賞長編アニメーション部門における、ノミネート資格を持つ11作品が発表となった。以下の通り。

「ブラザー・ベア」「ファインディング・ニモ」「ジェスター・ティル」「ジャングルブック2」「ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション」「千年女優」「東京ゴッドファーザーズ」「ピグレッツ・ビッグ・ムービー」「劇場版ポケットモンスター/水の都の護神 ラティアスとラティオス」「ラグラッツ・ゴー・ワイルド」「ザ・トリプレッツ・オブ・ベルビルド」

このうちから3作品がノミネートされる。ジャパニメーションが3作品、うち今敏監督の「千年女優」と「東京ゴッドファーザーズ」の2作品が対象となっていることが注目される。しかし、結局は「ニモ」が100%間違いなく受賞するだろう。

なにも同じ今敏監督作でアカデミー賞を競い合わなくても、「東京ゴッドファーザーズ」の公開を先延ばしにすればチャンスが増えるのにと考えるむきもあろう。しかし、そうはいかない事情があるのである。来年日本では世界のアニメーションをリードする巨匠、いわるゆる<御三家>がそろい踏みをする。宮崎駿監督が「ハウルの動く城」、「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟を熱狂させた押井守監督が「攻殻機動隊」の続編「イノセンス」を、さらに「アキラ」の大友克洋監督が「スチームボーイ」を公開予定なのだ。いやはや壮観である。このうちいくつの作品が2004年中に北米公開されるかは判らないが、「ハウル」も「イノセンス」も制作にディズニーが加わっており、「スチームボーイ」もアメリカで激しい争奪戦が展開されるのは必至だろう。配給する側も是非アカデミー賞アニメーション部門で受賞したいし、またその可能性が極めて高い3作品である。だからおそらく競合しないように北米では2004年と2005年に分けて公開されることになるだろう。ちなみに2005年にはピクサー社の真打ち、ジョン・ラセター監督期待の新作「Cars」が控えている。宮崎監督としても「千と千尋の神隠し」北米公開で尽力してくれた恩人のラセターさんとオスカーを巡って争いたくはないはずだ。ピクサーとジブリ作品の配給を担当するディズニーとしても両者の激突は避けたいところだろう。だから必然的に「ハウル」の全米公開は2004年になる。つまり今敏監督の映画を2004年に公開しても端から勝ち目はないのである。ゆえにいくら分が悪くても今年勝負せざるを得なかったのだ。

今監督の「千年女優」と「東京ゴッドファーザーズ」を観て感じる印象は「火垂るの墓」「おもいでぽろぽろ」などの高畑勲監督作品を観た後のそれに非常に近いものがある。つまり一言で言えば「実写でやればいいじゃん。」ということ。アニメーションらしいイメージの飛躍に乏しいのである。誰もアニメにリアリズムを求めていないのにという苛立ち。

アニメ・ファンの間での今敏作品の評価は「質は高いが内容がつまらない」ということに集約される。例えば「千年女優」を例に挙げるなら、確かに老女優の回想を彼女が出演した映画の数々を駆け抜けるように戦国時代から未来まで時代を錯綜させて描くというアイディアは秀逸である。しかし、結末がいけない。<鍵の君>である憧れの男を追い続けて時をかけるヒロインがテーマなのだが、最後の台詞が「だって私、あの人を追いかけている私が好きなんだもの。」にはずっこけた。自己完結。結局、ストーカーの話だったんかい!?浪漫もヘチマもありゃしない。お粗末。

「東京ゴッドファーザーズ」は登場する各キャラクターがよく描かきこまれていて、少なくとも「千年女優」よりはマシだった。しかし、偶然の積み重ねに頼り切り、その安易な発想を全て<クリスマスの奇跡>という免罪符で誤魔化そうとする姿勢には感心できない。評価はB-。

名脚本家でもあったビリー・ワイルダーは嘗てこんなことを言っている。「シナリオ作りにおいて偶然を用いても良いのは一幕まで。二幕や三幕で偶然に頼るのは稚拙なライターだ。」その悪しき典型例が「東京ゴッドファーザーズ」である。

この脚本を担当した信本敬子はテレビドラマ「白線流し」で有名だが、実は僕は「白線流し」の初期のファンだった。しかし、ドラマの後半やたらと偶然の積み重ねの展開となりウンザリした覚えがある。例えばヒロインの酒井美紀が大学入試に臨む。試験会場に着く直前、何故か早朝の大学のキャンパス前に妊婦が切迫流産になりかかって倒れ込み、うめいている!?妊婦に付き添って病院に行った彼女は結局試験が受けられなくて浪人するのである!!<<オイオイ。設定自体が異常に不自然だし、彼女は救急車を呼ぶなり試験会場の係員に任せれば病院まで見ず知らずの妊婦に付き添わなくてもすむことだろう。仮に試験が受けられなくても追試という手もある。信本敬子よ、ドラマを盛り上げるためとはいえそりゃあいくら何でも酷すぎる。もう一度基礎からシナリオを勉強し直しなさい。

というわけで「千年女優」も「東京ゴッドファーザーズ」もアカデミー賞の受賞はおろかノミネートも危ういと考える次第である。



2003年12月17日(水) 日米アニメ対決! <グレートバリアリーフ編>

ピクサーの新作「ファインディング・ニモ」が日本で公開2日間の動員数、興行成績において「千と千尋の神隠し」の記録を塗り替えたとの報道がマスコミを騒がせた(←詳細はここをクリック!)。しかし、これはペテンである。こんなインチキに騙されてはいけない。是非ここの記事を読んでもらいたい。ブエナビスタが発表した動員数90万人、興収11億1620万円という数字は、なんと先行上映3回分を含んでいるのである。一方で「千と千尋」は先行上映を全く行っていない。つまり「ニモ」の先行3日間+初日・2日間=5日間の成績と、「千と千尋」の純粋な2日間の成績とを比較しているのである!無茶苦茶な話だ。結局実質的には「ニモ」は「千と千尋」に全く勝ってなどいないのである。今後是非、興行成績の計算は先行上映を対象としない集計法に改めてもらいたい。だって今度は「ニモ」の記録を塗り替えようと想えば、先行上映を5日間くらいすれば簡単に出来るでしょ(笑)?

まあ、それはさておきCGアニメーションとしての「ファインディング・ニモ」の出来はパーフェクトである。幼児・小学生を対象の作品と考えれば100点満点だ。僕の評価はA-。何でマイナスが付くかといえば、それは成熟した大人を対象に考えた場合、物語が物足りないから。ただそれだけだ。しかし、アニメーションは本来子供たちのためのものだし、そんな保留は些事に過ぎない。

とにかく映像の美しさに目を瞠った。従来CGというメディアは水を描くことを苦手としていた。光の屈折による歪みや反射を表現することが極めて難しいからだ。それをこうして見事にクリアした「ニモ」のスタッフには惜しみない拍手を送りたい。また、ストーリー・テリングの巧さも特筆すべきだろう。要所要所で登場するキャラクターがそれぞれ実に魅力的に愛情を込めて描かれているのが素晴らしい。脚本の練り上げがお見事。ヒッチコックの「サイコ」と「鳥」のパロディには大爆笑。バーナード・ハーマンが作曲したあの有名な音符まで飛び出してきて驚いた。大人の観客への目配りも抜かりない。さすがピクサーだ。今のディズニーには到底敵わない芸当である。

余談だが未だに「ピクサー映画」を「ディズニー映画」と混同する無知な輩は生息しているのだろうか?これはくどいくらいに当日誌で何度も書いているのだが、ディズニーが配給したら「ディズニー映画」になるのなら「千と千尋の神隠し」もディズニー映画だ。そんなの変でしょ?

長くなったので後半は後日。Coming soon...



2003年12月14日(日) 師も走る!年末一挙、大放出。

なかなか今まで書けなかったレビューを、ここでまとめて簡潔に放出しよう。今回初の試みとして作品ごとに評価のレイティングを併記した。これは 米国のYahoo! Moviesの基準に準拠してGrade ABCDFの5段階に分類。Cを並の出来とした。今年公開された作品を例に挙げると「インファナル・アフェア」や「ロボコン」がA、「木更津キャッツアイ 日本シリーズ」がB、「座頭市」がC、「マトリックス レボリューションズ」がD、「戦場のピアニスト」がFといった具合だ。

「名もなきアフリカの地で」評価A-:アカデミー外国語映画賞受賞、ドイツ映画。まず、この映画の制作者たちのアフリカへの愛情が画面から滲み出ていて好印象を覚えた。アフリカを舞台とした映画は今まで沢山観たが、観賞後に「嗚呼、アフリカに往ってみたい!」と心から想ったのは今回が初めてだ。ナチスを逃れてケニアに渡ったユダヤ人一家。当初は現地に馴染もうとする父親と、ドイツでの生活様式を頑なに守ろうとする母親の対立が描かれるが、その両者の立場が時を経るとともに微妙に変わっていく課程がすこぶる面白い。「戦場のピアニスト」みたいに批判することを許されない絶対弱者・絶対被害者としてのユダヤ人を描いていないところが良い。主役の女の子が可愛い。子役が成長して役者が入れ替わると、そのイメージが崩壊する例がしばしばあるが、この映画では違和感なく成功している。また、料理人の<オウア>が何とも味のあるもうけ役。渋い、惚れた。

「ラスト・サムライ」評価B:とにかく渡辺謙、彼に尽きる。これぞ武士道。さらに真田広之、小雪ら日本勢の役者たちが実に好演。またハリウッド映画にもかかわらず、日本に対する描き方が好意的でこれは意外な拾いものであった。映像は雄大で美しく、音楽を担当したハンス・ジマーも久しぶりに良い仕事をした。ただ、ニュージーランド・ロケはやはり「どこが日本ゃねん!」と突っ込みを入れたくなったなぁ。だってあんな広大な草原は日本にないし…。

「フォーン・ブース」評価C+:男臭い戦争映画の傑作「タイガーランド」のジョエル・シューマッカー監督とコリン・ファレルが再びタッグを組んだ作品。電話ボックスという限定された空間で展開されるサスペンスがスプリット(分割)画面などのテクニックを駆使しながら一気呵成にクライマックスへとなだれ込む。短い上映時間が小気味よい。シューマッカーとしてはこういう舞台みたいな設定でいかに観客を飽きさせないかという実験であったろうし、ファレルにとっては一人芝居みたいな状況における自分の役者としての腕試しの場でもあったのだろう。そういう試みという意味ではこの作品は見事に成功している。しかし、映画の最後に登場する真犯人の動機が曖昧で、まるで彼が「エンゼル・ハート」に於ける<悪魔>みたいな設定だったのが納得いかなかった。シューマッカーには来年クリスマス・シーズンに公開が決まっているミュージカル映画「オペラ座の怪人」に期待しよう。



2003年12月08日(月) 日本一早いオスカー予想!

2004年に開催される第76回米アカデミー賞を早々と大胆予想してお目にかけようか。

まず来年のアカデミー賞で作品賞と監督賞の最有力候補は「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」(以下LOTRと略す)であることは揺るぎのない事実である。LOTRは第一作目と二作目も高い評価を受けてアカデミー賞にも大量にノミネートされた。しかし、未だ作品賞と監督賞は受賞していない。今までは投票するアカデミー会員の意識としても、シリーズ半ばで正当に評価するのが難しいと躊躇い、保留にする場合が多かったのではないだろうか?しかし「王の帰還」でついにこの映画史に残るエポック・メーキングな作品は幕を閉じる。そこでアカデミー会員の中で三作トータルでの評価を今回しようとする動きが出てきても当然なのではなかろうか?LOTRにはそのシリーズものとしての強みがある。

僕はその対抗馬として強力に押したいのがティム・バートン監督の「ビッグ・フィッシュ」(←クリックすれば公式サイトに飛べる)である。その予告編を観て驚いた。
「来たーっ!!オスカーに向かって直球ど真ん中だぁ。」と想わず叫びたい心境。ほら吹きの父親と息子との心の交流を描いた作品のようだが、その表現方法がいかにもティム・バートンらしくてファンタスティック!素晴らしい。なんだか雰囲気が「フォレスト・ガンプ」を彷彿とさせて関係者の意気込みがひしひしと伝わってくるのだ。スタジオのソニー・ピクチャーズもこの映画に相当な自信と期待を持っているようだ。実はこの映画は元々封切りが11月26日の予定であった。しかしそれが急遽延期され、ニューヨークとロサンゼルスのみの限定公開という形で12月18日に封切られ、年明けに全米公開される形に変更となった。つまりオスカー狙いの典型的な戦術をとったのである。個人的にはこの「ビッグ・フィッシュ」が一番の期待である。また、僕の大好きな作曲家ダニー・エルフマンがこれで悲願の初オスカー受賞となるかにも、大いに注目したい。

作品賞・監督賞の他の有力候補はクリント・イーストウッド監督の「ミスティック・リバー」と(「イングリッシュ・ペイシェント」「リプリー」の)アンソニー・ミンゲラ監督の最新作「コールド・マウンテン」などである。

話題の「ラスト・サムライ」については役者陣が期待できそうだ。トム・クルーズの主演男優賞、渡辺謙の助演男優賞へのノミネートは堅いだろう。トムの受賞はあり得ないが渡辺謙は有力候補として急浮上しており、可能性が十分ある。僕も既にこの映画を観たが、本当に彼の演技は素晴らしかった。これぞ「武士道」。日本の誇りである。

助演女優賞についてはこんどこそ「コールド・マウンテン」のレニー・ゼルウィガーが獲らなければいけないだろう。彼女は「ブリジット・ジョーンズの日記」「シカゴ」で二年連続アカデミー主演女優賞にノミネートされ、どちらも涙を呑んでいる。余りにも可哀想だ。故に今回同情票が集まる可能性が極めて高い。レニーくらいの実力と華のある女優さんにはそろそろオスカーもあげていい時期だろう。しかし、個人的にはやはりコメディーではオスカーの受賞は難しく、シリアスものなら比較的獲りやすいという、いつもの<オスカーの法則>に則った結果に落ち着くとしたら、なんだか厭だなぁという想いは確かにあるのだが。最近ヒュー・グラントが「コメディ映画での演技に対する評価が不当に低い」と憤っているという記事を読んだが、ごもっともである。

さて、ワーナー・ブラザースは「マトリックス」でオスカーを(票割れをせず)確実に取るために今回のエントリーを「レボリューションズ」に一本化するらしいのだがこれは明らかな戦略ミスではなかろうか。僕は視覚効果のおもしろさという点では凡庸な「レボリューションズ」よりも創意工夫のある「リローデッド」の方が格上だと想うのだがどうだろう?これで視覚効果賞については「マトリックス」受賞の可能性はなくなったという気がする。「王の帰還」でLOTRがおそらく三部作連続受賞を果たすであろう。「レボリューションズ」の映画としての出来が余りにも酷すぎるので、音響賞や音響効果賞の受賞も危ういのではなかろうか?どちらも対抗馬に「王の帰還」という強力な作品があるし。もしかしたら「マトリックス」全滅の可能性さえ出てきたと感じている。

長編アニメーション部門はピクサーの「ファインディング・ニモ」以外の受賞はあり得ない。全く死角なし。先日ノミネート資格を持つ11作品が公表されたがジャパニメーションでは今敏監督が「千年女優」「東京ゴッドファーザーズ」の2作品、さらに「劇場版ポケットモンスター/水の都の護神 ラティアスとラティオス」が入っている。「千年女優」と「東京ゴッドファーザーズ」はどちらも既に鑑賞済みだが、評判倒れのこれら作品批判については近いうちに必ず書くつもりだ。



2003年12月04日(木) レボリューションズは何故退屈なのか?

ウォシャウスキー兄弟は漫画とジャパニメーションおたくであり、大友克洋の「アキラ」が大好き。さらに「マトリックス」の企画は押井守監督のアニメーション「攻殻機動隊」の表現法を実写で再現したいという発想から始まっという事実とは余りにも有名である。また「マトリックス」の世界がいかに「新世紀エヴァンゲリオン」に似通っているかについては5/316/7の日誌で詳しく論じた。で、大友・押井・庵野の模倣をした挙げ句の果てに「レボリューションズ」のクライマックスでは「風の谷のナウシカ」になっちゃうんだから呆れ果てた。だって王蟲(オーム)の触覚が伸びてくるんだゼ!?我が目を疑ったね。いや、オマージュとかリスペクトなどといった綺麗な言葉で誤魔化せるレベルじゃもうないよ。最後の砦=宮崎アニメまでパクった日にゃあ、あんたら節操がなさ過ぎると言われても仕方ないんじゃないの?ネオの姿が十字架上のキリストにだぶる場面はまたまた「新世紀エヴァンゲリオン」の猿まねだし。最早、畜生道に墜ちたな。

このシリーズの最大の魅力はバーチャル・リアリティの世界での超現実的なアクション場面である。たしかにあのマシンガン撮影という手法は画期的だった。しかし、「レボリューションズ」のアクションの主体は現実世界のザイオンで繰り広げられる。結局自らその最大の武器を放棄したのである。だから単なるSF戦争映画になってしまって、画面の殆どがCGで覆い尽くされたアクション・シーンは「スター・ウォーズ」のクローン戦争の場面と大差なく、極めて退屈である。人間さまの兵器は完全に「エイリアン2」に登場するパワーローダーの二番煎じだし。アホくさ。

それにあのラストは何??結局問題は何も解決してないでしょ。人間とマトリックス=コンピューターとの戦いは休戦状態になっただけで、マトリックスが破壊されない限りエネルギー源として<人間電池>が必要なんだから。両者が共生できる筈ないじゃない。また振り出しに戻っただけ。なんだか観客を馬鹿にした物語だ。

「リローデッド」に出てきたネオの前に5人の救世主がいたという話も「レボリューションズ」では無視され、ネオの超能力やエージェント・スミスがマトリックスの世界のみならず現実世界にまではみ出してくるというのも無茶苦茶な話。ウォシャウスキー兄弟さんたちよ、そりゃいくら何でもルール違反だろ?SFにはSFなりの仁義というものがあるだろうが。

結局大風呂敷を広げたまま、何も収拾をつけないで無責任に放置したという意味においてもやはり「マトリックス」という作品は「新世紀エヴァンゲリオン」そっくりだったという訳である。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]