エンターテイメント日誌

2001年02月24日(土) 告別

大林宣彦監督の新作、「告別」をBS-iで観た。そもそも、この放送のためにハイビジョンテレビを買ったようなものなのだから。
期待に違わず久々の大林映画の傑作に快哉を叫びたい!尾道シリーズの「あの、夏の日」に頭を抱え、セガのロボット犬のために大林監督が撮ったプロモーション・ビデオ「自由にならないもの」を観て椅子からずり落ち、余りの酷い出来に、深く失望の溜め息をついたあの辛い日々・・・。「もう、大林監督は駄目なのか?」と本気で考えたことさえあった。
しかし、もともと出来不出来に激しいむらのある監督である。これまでにも「金田一耕助の冒険」「ねらわれた学園」「漂流教室」など、世間をアッ!と驚かせるような「トンデモ映画」を撮っているではないか・・・そう、自分に言い聞かせ、慰めてきた。そして、それがやっと報われる日が来たのである。
主人公が時空を越えて青春時代の自分の恋人と再会するという設定は、僕がこよなく愛する大林映画「はるか、ノスタルジイ」に何処か似ている。自転車に乗るヒロインといえば「さびしんぼう」を彷彿とさせる。全編に流れるピアノ曲、リスト作曲の「ため息」は、「姉妹坂」「三毛猫ホームズの推理」など、既に過去の大林映画に登場済みである。だからこの映画に新境地と呼べるものはないかも知れない。しかし、大林映画最良のエッセンスがこの映画に詰まっている、そう想う。そして最後は、今までにないくらいある意味残酷で、それだけ深く胸を打つ、痛切な結末に胸をかきむしられる想いがした。「ひとはいつまでも夢の中に生き続けることはできないのだ(byロジェ・バディム『血とバラ』)」
長野県上田市の何処か懐かしい風景が作品の内面世界に見事に一致している。撮影の美しさも特筆すべき珠玉の作品である。



2001年02月17日(土) BROTHER

北野武の新作BROTHERを観て最初に感じたのは「ソナチネ」に似ているなあということだった。逃亡先が沖縄からロサンゼルスに変わっただけ(^^;。
北野映画は、「その男、凶暴につき」から、死に向かってひたすら突き進む主人公を描いてきたが、あのバイク事故の後撮った「キッズ・リターン」で、死の願望から再生への祈りへと主題が転換したのかと想っていた(とくに最後の台詞がそれを感じさせた)。
しかしながらここにきて振り出しに戻ってしまったという印象を受けた。
まあ、これはアメリカデビューということで自分の得意とするジャンルから
始めたといったところなのだろうか?
それにしても「HANA-BI」における桜や富士山、BROTHERにおける切腹、指つめなど、あまりにも「ガイジン向け」類型的な日本像が映画で描かれていることが気になる。
久石譲さんの音楽はまるで「死刑台のエレベーター」におけるマイルス・デイビスみたいなトランペット・ソロが印象的で、JAZZYな雰囲気を醸し出しており、なかなか新境地だなあと関心した。



2001年02月11日(日) オスカーの行方

今年もアカデミー賞の季節が刻々と近付いてきた。
まもなくノミネート作品が発表されるが、今年の作品賞、監督賞の
大本命はスティーブン・ソダーバーグ監督の「トラフィック」だ。
対抗はアン・リーの「グリーン・デスティニー」(外国語映画賞は確実)と、
リドリー・スコットの「グラディエーター」か。
注目はジュリア・ロバーツとラッセル・クロウが主演賞男・女優賞を
受賞できるのか?といったところ。
作曲賞は「グリーン・デスティニー」のタンドゥンに期待したい。

それからなんといっても楽しみなのは司会者に選ばれたスティーブ・マーティン。
大いに笑わせ、会場を沸かせてくれることだろう。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]