”BLACK BEAUTY”な日々
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Boogie
ストーンズの武道館公演から早いもので1ヶ月の時間が経過した。 西新宿のブートレッグ屋には全ての日本公演のアイテムが揃い、違法CDと分かっていてもつい手を出してしまう。購入したのは3月10日の武道館公演を収録したものだ。
今回のツアーはプロモーションすべきニューアルバムがなく(ベスト版のリリースのみ)、それゆえそのツアーを象徴するような大掛かりなステージセットもない。 だが、その事が逆にこのバンドの真価というものを強烈に印象付けたと思われる。
読売、毎日、日経の各紙がこぞって絶賛した武道館公演における「Midnight Rambler」の演奏力。 ライブ前半のハイライトであるこの曲で、ミックジャガーはブルースハープを吹き、キースリチャーズはこの曲でしか使わないレスポールTVという愛器を手にする。
武道館でもストーンズを象徴する楽曲、すなわちヒット曲は何曲も演奏された。 音楽専門誌ならまだしも、一般紙までがこの所謂「通好みの」Midnight Ramblerを取り上げた事は極めて奇異な事である。 だが、実際の演奏を見、聴いた者達にとって、この夜のMidnight Ramblerは特別なものであったに違いない。
この楽曲は演奏時間が長く、曲中でリズムやテンポが著しく変化する。59歳を迎えるフロント二人にとっては、かなりの体力、集中力を消耗するはずである。 ところが連中はこの「扱いにくい楽曲」を実に上手に捕まえ、かつあしらい、10数年前の初来日時の演奏を遥かに超えるMidnight Ramblerを轟かせたのだった。 それは日経のレヴューが言う通りMidnight Ramblerが「古典であると同時にストーンズの現在を象徴する楽曲」であったからに他ならない。
ロックバンドは常に「今」を提示し、体現しなければならない使命を持つ。 生ぬるいノスタルジアの喚起はそのバンドの死を意味する。
A rolling stone gathers no moss. ― 転石、苔を生ぜず 高校生の頃、受検勉強中に暗記させられたが、本当の意味を知ったのは長い時を経た今年の3月10日だったのかもしれない。
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