2005年01月07日(金)
|
いろえんぴつのきもち |
あか君はいいなぁ。 あお君がいった。 あお君はいいなぁ。 みどり君がいった。 みどり君はいいなぁ。 ちゃいろ君がいった。 ちゃいろ君はいいなぁ。 くろ君がいった。 くろ君はいいなぁ。 きいろ君がいった。 きいろ君はいいなぁ。 おれんじ君がいった。 おれんじ君はいいなぁ。 むらさき君がいった。 むらさき君はいいなぁ。 ぴんく君がいった。 ぴんく君はいいなぁ。 みずいろ君がいった。 みずいろ君はいいなぁ。 きみどり君がいった。 きみどり君はいいなぁ。 しろ君がいった。
一番背の高いしろ君のことを、誰も羨ましがらなかった。 いつもきちんと削られたままのしろ君のことを、誰も「いいなぁ。」と言わなかった。
あか君は言おうとしてやめた。 あお君はその気がなかった。 みどり君は気を使っていた。 ちゃいろ君は隣でなくて良かったと思った。 くろ君はしろ君の気持ちがちょっと分かる気がした。 きいろ君は怖かった。 おれんじ君は、自分がただはだ色の代用にされるのが気に入らなかった。 むらさき君は24色の仲間の方が好きだった。 ぴんく君はしろ君がいないと本当は非常に困るのだった。 みずいろ君はすまないと思った。 きみどり君も同じ気持ちだった。
しろ君はきみどり君だけじゃなくて みんながうらやましかった。 一人だけ背高のっぽで いなくなってもきっと 誰も寂しがりはしないということもよく心得ていた。 でも12色の中に 必ず自分がいるということを誇りに思っていた。 ちょっと言ってみたかっただけなんだ。 「いいなぁ。」って。
そのことをあか君は知っていたりもするのだ。 くろ君なんかも。 誰が一番・・・・なんていう競争は馬鹿馬鹿しいとも思っているのだ。
だけど、しろ君が きみどり君はいいなぁ。といった時、 どうして誰も何も言わなかったのだろう、と あとから、あとから 色んなきもちがわいてきて しろ君を結局、自分が傷つけたんじゃないか・・・・と、そう思ってしまう。 だけど、口先だけで「なかよくしようよ」なんていえない。 そうやって、しろ君が余計に傷ついてしまったら 仲間でもなんでもない、ただの1色に過ぎなくなってしまうのだから。
12色のいろえんぴつたちは 心の中で思った。 どうしてお隣の色のことを「いいなぁ」といってしまったのだろう、と。 それは多分、自分たちが12本で一人前ということを それぞれがきちんと知っているからに違いなかった。
そうしてできた諺。
人間にもあれこれ当てはまる。 ひとつの色で決められたくなくて、もがき苦しむのは、そのせいなのだ。
|