2008年02月27日(水) | 出会いはスローモーション |
昨日、寝坊&遅刻のコンボに慄いて慌てて部屋を出たら、マンション前の段差をうっかり踏み外すというアクシデントが発生。
迫り来る門柱に顔面からダイブ。
下唇および口内を切って出血、顎全体が痛くてその場でしばしうずくまる。
ああ、通勤時間帯じゃなくてよかった。
でも通勤時間帯じゃなくても、出血しながら電車に乗るのは結構恥ずかしい。
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「しかし酷いねそれ。病院行った方がいいんじゃない?」
「消毒すれば大丈夫ですよ。歯も鼻も、強打した割には無事でしたし」
「そういえば僕、バイクで事故ったことがあるんだけどさ。本当に世界がスローモーションになるんだよね」
<ボス回想>
バイクに乗っていたら前の巨大トラックが急停車。
このままでは止まれない!
その時、バイクではなく世界が止まった。
周囲を認識し、思考もできた。
このまままっすぐ行けば突っ込んで死ぬので駄目。
右側は……対向車が見えている。余計酷いことになるので駄目。
左側は……隙間はわずかにあるが、バイクが入る余地もない。
だが、一番マシなのは左に思えた。
スローモーションのまま、ハンドルを左に。
同時に自分はバイクから飛び降りる。
投げ出された身体は、トラックの下に下半身が潜り込むようにして止まった。
倒れたまま視線を上げると、後方に別のバイクが寄せられ、ドライバーが慌てるようにこちらにゆっくりと走ってくるのが見え……そこで世界のスピードはいきなり戻った。
ボス回想>
「なんか壮絶ですね」
「ちなみにトラックに潜り込んだときに足の筋肉が裂けちゃって大変だったよ」
「いたたたたたたたたたたた!!!!!」
「命の危険が迫ると他の機能を下げて脳がフル回転して、過去の経験の蓄積を検索して助かる道を探すらしいって聞いたことはあるけど、実際体験するとすごいわ」
「あー、そういえば私もスローモーションの経験ありますよ」
「どんなの?」
<■回想>
それは私がまだ実家に居た頃のこと。
ある年の冬、風呂に入ろうとした時に起こった悲劇。
冬場の風呂は寒いので、服を脱ぐ前に湯船の蓋を取って湯気を浴室に充満させるようにする習慣があった。
その日もいつものように、服のままで風呂場に入り、蓋を取ろうと手を付いた……
が、その時。不幸にも蓋は、湯気で濡れた縁を滑って吹っ飛んでしまう。
床の雑巾がけをしているときに、ワックスの効いた床が滑りすぎた時のことを想像してもらえれば分かるだろうか。
雑巾がけなら床に転んで終わる。
そのときの私の眼前に迫ってきたのは、風呂釜のサイドにある蛇口だった。
そして世界はスローモーションに以降。
ゆっくりと迫ってくる蛇口。
顎をしたたかに蛇口に打ちつけ、さらに服のまま湯船に沈む私。
吹っ飛んだ蓋は宙を舞い……そして、湯船に沈んだ私を嘲笑うかのように、風呂釜の上に着地。
いきなりの水攻めと暗闇にパニックを起こしながら必死に蓋を押し上げようとするが、押し上げようとした位置がちょうど蛇口の真下だったために、蓋がそこで押さえつけられて出られない。
必死にもがいて足で蓋をふたたび吹き飛ばし、ようやく生還することができたのだった。
■回想>
「……なんか、それもすごいね」
「しかし今この話をして思ったんですがね」
「うん?」
「私の場合、スローモーションになっただけで、避けるとか対策考えるとかそういうの一切なかったわけですが。見るだけって……脳動いただけ損してますがな」
「……元気出しなよ」
「時は止められる。だが何もできない。これからは私のことはスターブロンズと呼んでください」
「プラチナになれない!?」