ウソツキ日記
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その男性は電車の中にいた。 ボクのとなりに座っていた。 年の頃なら40代後半といったところか。 深緑のポロシャツにスラックスという、 休日のカジュアルっぽい服装だった。 中肉中背で、やや髪の毛が薄くなってきている。
ボクは電車で文庫本を読んでいた。 まだ半分くらいのページだったので、 佳境とはいえない。 だから、めちゃめちゃ集中していたというほどではない。
突然、となりの男性がくしゃみをした。
ボクはビクっとなった。 その男性の顔を見た。 その男性は鼻毛を抜いていた。 右手の親指と人差し指で鼻毛をはさんでいた。
やけに長い鼻毛だった。
空気が汚い場所に住んでいると鼻毛が延びるという話を 聞いたことがある。 ここはそれほど空気の汚い土地なのか。
ふとボクは自分の鼻の下に人差し指をあてがってみた。 鼻の奥にすこしむずがゆい感触があった。 鼻毛がこんにちはしているということだ。
もう一度となりの男性を見た。 もう1本長い鼻毛がのぞいていた。
ボクは自分の鼻毛を鼻の穴の中に押し込んだ。 家に帰ったらはさみでちょっきんしようと 心にに誓った。
となりの男性がまたくしゃみをした。
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