 こんな神ならいて欲しい |
偏頭痛で寝ていたら知人からの電話。
数日前から相談したいと言われていたけど
忙しさや頭痛のせいで後々にしていた。
ただ聞いてあげるだけで
彼女もすっきりするだろうと耳を傾ける。
彼女はトリマーの専門学校に通っていて
この夏休み、とあるペットショップでバイト。
そこの店長と作業部屋で二人きりになり、
ご飯を食べてお茶を飲んでいたとき、襲われる。
なんとか這い出てて、夏休みだけ母親から借りている車で逃げた。
詳しく聞けば、堂々と胸を張って「犯罪」といえる代物。
そして、
どこにでもある話。
年に1人ぐらいは知人が遭う類の犯罪。
警察に行った?
「でも仕返しが怖いし、」
被害者は皆、決まったセリフのように言う。
水沢署はそういう類の相談には親切だよ。
「親に知られたくないし。」
そうかいそうかい。
気持ちは分かるけど分からない。
ついこの間も同じような目に遭って、
これからも同じように心を閉じて。
自分から何かしなきゃ、何も始まらないよ。
「その店長、殺したい」
彼女が消え入るような声で言った。
人を殺したいという感情を1番持っているのは「被害者」だと思う。
ぶつけようのない怒りとやるせなさ。
そして、君を大切な人だと思っている人達も同じ気持ちだよ。
なんとかしてあげたいと思うよ。
ただ実際問題として裁判にでもなれば、
聞きたくもない話をされて、
もう既に辛い思いをしているというのに、
更に辛い思いをする。
裁判が終わっても
仕返しが怖くて、心が塞ぐ。
自分でなんとかするから
幸福の神様も、縁結びの神様も、金銀ザクザクの神もいらない。
だけど、冤罪で一生身に覚えのない罪に苦しめられる人がいないよう、
被害者がそれ以上被害を被らないよう、
安心して過ごせるよう
罪を与える神が欲しい。
もちろん神様なんだから、
裁判なんかしなくていいよね。
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