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2005年09月19日(月) ブータン蕎麦

 昔NHKで「人間は何を食べてきたか」というドキュメンタリーシリーズがあって、なかなか興味深くてよく見ていた。私の食に関する蘊蓄の、かなりの部分はこのシリーズに負うていたりする。

 みなさまご存知のように私は麺が好きで、なかでも蕎麦には目がない。このドキュメンタリーでやはり一番印象に残っているのは蕎麦の話だった。10年以上前の番組なので記憶が不確かなのだが、なんでも蕎麦は世界の多くの地域で食べられている穀物ではあるが、これを粉に挽いて水を加えて捏ね、麺状に整形して茹でて食べるという文化は中国、韓国、日本、そしてブータンにしか存在していないらしい。日本以外の中国、韓国、ブータンではところてんのように穴の開いた道具から押し出して麺にするのが主流のようだ。中国と韓国はなんとなくわかる。日本の食文化のルーツなのだから。韓国冷麺にそば粉を使うというのは知っていたし、中国はまあ何でも捏ねちゃうようなイメージだし。しかしブータンは意外だった。最近では韃靼蕎麦の産地として知っている人も多いかと思うのだが。

 昔からブータンには少なからず憧れの気持ちを抱いている。穏やかで知的な高原の民。しかし彼らが何を食べているかについては考えたことがなかったのだ。蕎麦だったのか。粉に挽いて捏ねて、押し出して麺にして茹でる、そこまでは見るからに全く日本と同じ蕎麦だ。少し黒くて太めの田舎蕎麦。ところが彼の地は当然のことながら醤油文化ではない。だからそこからの調理と味付けが日本の蕎麦とは大きく異なっていた。茹でた麺を油で炒め、たっぷりの唐辛子で味付けするのだ。これを見た私は早速まねをしてみた。田舎で買ってきた出石蕎麦の干麺を茹でて、ペペロンチーノの要領で作成、ただしニンニク抜き。軽く塩味で。言葉の意味通りの「焼きそば」である。

 それから10年余、このメニューは私の秘かな定番となり、胡麻油を使ったりニンニクを入れたりというバリエーションもできた。しかしまだ人に食べさせたことはない。なんというのか、自分では大好きなのだけれど人には勧めにくい食べものだと思う。やっぱりそばつゆでつるつるっと食べた方が美味しいのは確かだから。なんとなく人に隠れてこっそり食べなきゃいけないような気もする。島田雅彦氏の食関係の本(「ひなびたごちそう」だったかな?)を読んでいたら、オリジナルレシピとして「蕎麦のペペロンチーノ」が紹介されていて、内心「まーくん、私はあなたの同志よっ」と叫んだりしたのだった。いや島田氏は別に隠れて食べてるわけじゃないのだろうけど。

 で、今日の日記の要約としては「お昼に茹でたお蕎麦が少し余っていて、午後に小腹が空いたものだから久しぶりにブータン蕎麦にしておやつに食べた」とまあ、そういうことです。


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