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2005年04月03日(日) 眼球譚

 南青山のギャラリーで佐藤久雄さんという人の人形展を見る。今月の芸術新潮に載っていて、ちょっと気になったので。ああいう人形は写真で見ると妙にエロいんだけど、実物は割とふつうに人形だった。ただ、どの人形もかすかに口が開いていて、その口の開き具合がものすごエッチくさいとは思った。

 なぜこの展覧会が気になったかといえば、私も20代の前半頃に、少しの間だけだったけれど四谷シモンさんの人形教室に通っていたからなのだった。あまり人形そのものに対する思い入れやフェティシズムは無いのだが、もともと私は大学時代にも砥の粉まみれでグラインダーを振り回していたので、粘土と砥の粉とサンドペーパーでひたすらなめらかな面を作ってゆく作業が大好きだった。で、思う存分磨いた頃に先生が「眼はどれにしようか」とか言いながら小振りのアタッシェケースのようなものをパカッと開けると、そこにはずらりとガラス製の眼球が並んでいたりして、何ともまあシブサワでタネムラな光景であった。眼球を選んだ後に待っている作業は、人形の頭をノコギリで上下真っ二つに切り離して、内側から眼球を嵌め込むことだったりもする。あれ以来、どんなにかわいらしい人形を見てもあの光景が甦ってきて「ああこの人形にも頭に切開の痕があるのだなあ」などと思ってしまう。
 
 さて最近、こういった展覧会などのお出かけがすっかり一人遊びになっている。なぜかといえば、いつも一緒に見に行っている友人が激烈な花粉症だからだ。ほんとに毎年気の毒で可哀想で。私はといえば、なぜか室内に入るとくしゃみ連発。自分の部屋はまだマシだが、オフィスや飲食店に入るとくしゃみと涙が。一過性だから特に辛くもないし外に出ればおさまるからいいんだけど、外がダメな友人と、室内がダメな私では全然遊べないじゃないか。そんなわけで最近は一人でふらふら出かけている。一人だとまったく予定というものを立てなくなって、ふと気がつくと延々と歩いていたりする。

 今日も、バスで西麻布まで行って高樹町から骨董通りに入って行こうってとこまでは考えていたのだが、ギャラリーを出てからまったく無計画に歩いていたら、結局家まで歩いて帰ってきてしまった。これは、南青山や西麻布に適当な飲食店が無かったせいでもある。何か軽い食事と、暑かったからビールが飲みたいと思って店を探して歩くのだが、あの辺はもうカフェとかカフェとかカフェとかしかなくって、しかも気取りくさったコース料理ばかりでうんざりした。

 そもそもカフェって何なのさと考え始めて、結局「接客の専門家を置かないレストラン」ってことなのかと。カフェで2000円のコースランチ食べるんだったら、3000円出してちゃんとしたレストランのランチを食べた方がいいような気がするが。というような結論に達した頃には広尾あたりまで歩いてしまっていたので、どうせツタヤに寄って帰ろうと思ってたからガーデンプレイスに向かうことにする。ガーデンプレイス内のアジアンなお店でタイカレーとベトナムビール。やっとありついたビールはそれはもう美味だった。でもカレーはまったく辛く感じなくて、これはもしやこの間の激辛インドカレーの所為で基準が狂ったのかもしれない。どうしよう。


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