Diary?
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年に一度の半日ドックを受診する。おもいっきり病み上がり、体調はお世辞にも万全とはいえない。再検査が出ないことを祈るのみ。2年前には再検査でえらい目に会った。結果は異常なしだったから良かったのだけど、検査が。ちょっと人生観が変わったもの。あ、それはちょっと言いすぎか。えーと、うすうす感じていたことを実感した、くらいかな。つまり、私の中には内臓とか骨とか筋肉とか血管とかがぎっしり詰まっていて、私は一個の肉塊であって、しかも機能としては一本の管であると。それは自分の腸のレントゲン写真をじっくりと見る機会に恵まれてしまったからなのだが、「ああ、私の中にはこんなものが詰まっているのか」と妙に醒めた感想を抱いたのを覚えている。
『チュビスム宣言』という本があって、その中で谷川俊太郎が「我等は自身が一本の管(チューブ)に過ぎぬという冷厳な事実を、歓びと畏れをもって受け入れ、我等が過去において獲得し、未来において模索するであろうところのあらゆる思想が、その管(チューブ)の先端に咲く花の比喩で語られることを確認する」という宣言草案を書いている。もう20年くらい前の本で、当時流行りのポスト・モダンの流れもあって今となっては古くさい部分もあるけれど、この宣言だけはなぜかずっと覚えていて、腸の写真を眺めながら「確かにチューブだなあ…」などと考えていたのだった。
それはさておき。この半日ドックは受診する場所を、いくつかの提携医療機関の中から選べるようになっている。私は毎年、都心の高級ホテル内のクリニックで受けることにしている。それはなぜか。近い、というのもあるけれど、それ以上に「気分」の問題なのだ。場所が場所だけに、対応はまるでホテルの接客のよう。どうせ腕に針をブスッと刺されたり、まずい液体を飲んでぐるぐる回されたりするんだったら、気分だけでも豪華にしなきゃね。終わった後にそのホテル内のレストランで使える食事券を貰えるのも嬉しい。金額としては大したことはないが、こんなことでもなきゃホテルのラウンジでサンドイッチ食べる、なんてしないから。ちゃんとピクルスとか付いてて贅沢な気分だ。毎年「ああ、これでバリウム飲んだ直後じゃなければもっといい気分なのに」と残念な気持ちになる。
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