切れ端。

2004年07月25日(日)

親父が死んでもうすぐ一年。
俺は親父が酒の肴に照れながら話す昔話が好きだった。
もちろん頑固で正直者の親父という人間も。
末期の目で俺を見た親父の顔は死ぬまで忘れない。
何度泣いて眠ったか覚えてない。
仕事中ふと急激に落ち込むこともあった。

経験の無い人には、わからない喪失感。
目を閉じただけで、盲目の人の気持ちがわからないのと同じ。
上辺の同情、どこかで聞いたことのある台詞。
一周忌にはそんな台詞も聞かなければならい。
それに対する苛立ち。
でも親父の一周忌だと思えば、そんな細かなことはどうでもいい。

葬式の日は親戚や親父の会社の同僚、近所の人たちが集まった。
神や仏がどうだと言う声を端のほうで聞いていた。

死を納得させるために拵えた意見だとしても
目に見えないものが親父の命をなくすと決めたのなら
目に見えないものに縋らなければ死を受け入れられないなら
なおさら俺は神様など信用しない。

親父は死んだ。俺の中で親父は生き続ける。
喪失感に襲われても、時間がどれだけかかってもいい。
何かに縋るより、目に見えないものを信じることよりいい。
神も仏も糞食らえ。知るか、そんなもの。俺の夢と憧れは亡くなった。


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shinsuke [MAIL]