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■ カオスフレア・シナリオ“海が見たい”プレイレポート
カオスフレア・シナリオ“海が見たい”プレイレポート
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ＮＯＶＡでいえば「ミストレス／エクゼク」といったところでしょうか。他キャラのサポートから情報収集までそつなくこなしていました。「謎の後援者」の使い方が、ＧＭも驚愕するほど鮮やかでした。
※しかし、最新のエラッタで「謎の後援者」は１シナリオに１回しか使えないようになってしまいました。うーん、残念。
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こちらは生粋のスナイパー。今回のシナリオのテーマと真っ向から向き合うエグゼスに対して、どちらかというと斜に構えた態度が対照的でした。年配のエグゼスに対して、まだ若いシア、という二人の年齢差もその図式に一役買い、なかなかの良コンビだったのではないかと思います。
今日の一言
ニア「ダブルガンスリングの特技を使いたいんだが、片手にトムキャット持ったら駄目か？」
ＧＭ「トムキャットは戦闘機なんだけど…」
ニア「じゃあ、フェニックスでいいや」
ＧＭ「それは空対空ミサイルだってば！！！１１１」
オープニング��
──それは５年前、毒蛇に毒蛇の名が贈られるより前の物語。
ネフィリムの母星、エルダのどこかにある雑居ビルで、エグゼスとニアは作戦行動の最中だった。彼らが所属しているのは、自社、つまりネフィリム社に損害を与える社内の悪性細胞を消し去る部隊。狙撃用スコープの向こうには、標的の男の姿がはっきりと映っている。部屋の中には彼らの他にも、数人の男女が忙しく行き来し、狙撃の瞬間を今かと待ち受けていた。
と、そこに壮年の男がやってくる。隊長のハサウェイだ。
「どうだ、様子は」
言いながら、ブランデー入りの水筒を放る。
「動きはまったくありませんね」
「そうか…」
と、別の男がわざとらしく大きなあくびをした。
「煙草買ってくるわ」
そう言って部屋を出ていく。
「ハロルドのヤツ、いいんですか？」
「よくはないが、あれで腕は確かだからな」
ハサウェイの声も苦々しい。
と、ニアがスコープを覗きなおす。
「標的、動きました」
室内に緊張が走る。引き金にかけた指に力が篭る。観測手が素早く周囲を確認して、肯く。銀色の火線が、二つビルを隔てた遠くの男の頭を撃ち抜く…はずだった。
しかし、引き金が引かれた瞬間、男は何かを取ろうとしたのか、体の向きを変える。三発の銃弾がガラス窓に蜘蛛の巣のようなヒビを作り、吹き飛ばす。が、男は無傷だった。
『失敗した…？』
だが、それは想定済みの事態。素早く二人目の狙撃手が続く三発を撃とうとし…驚きで指が止まる。標的はまっすぐこちらを見ている。それはつまり、狙撃位置が完全に知られていることを意味していた。
あり得ないことだった。狙撃位置は、事前に入念な下調べをし、周到な準備の上に用意されたもの。しかもその場所は、彼らチームしか知らない。
「裏切りか」
オープニング��
清掃車に偽装した車に飛び乗り、急いでその場を離れる。エグゼスが眉をひそめた。
「セーフハウスの場所はハロルドも知っています。向かうのは危険では」
しかし、ハサウェイはハイウェイの先を見つめていた。
「私のセーフハウスに向かおう。次のゲートで降りてくれ」
ハサウェイが案内したのは、うら寂れた観光地のような場所に建つ、一軒のログハウスだった。
「入ってくれ」
埃が積もってはいるが、よく整理された家だった。そして…奇妙に生活感がある。逃げ場として用意したようには思えなかった。
ハサウェイは窓に歩み寄り、戸を開け放つ。そこに広がるのは、不毛の荒野だった。
「…私が若かったころは、ここから海が見えたんだが」
「戦争、ですか」
エルダを二つに割る大戦の影響は、地形や海岸線まで変えてしまったと言われている。
「シアは戦後世代だったな。私の娘も同じだ。ここに連れてきた時に、よく言われたよ。『海なんて見えないじゃない』と、ね」
何故、昔を思い出したりしたのか。エリザベス・パーラメントが差し出した書類の一番上に、懐かしい顔を見たからかもしれない。
「ハサウェイ・パルマー。ＶＩＰＥＲの設立に尽力した人物ですが、獣鬼兵一体を連れてＹ．Ａ．Ｃ．Ｏ．Ｂ．を無断使用、オリジンに向かったようです。
今回の貴方の任務は、彼を捕縛し、試験型の獣鬼兵を取り戻すことです」
ミドルフェイズ� �
今回、エグゼスとニアは「かつての同僚」という関係。標的であるハサウェイは二人の上官です。とはいえ「世界設定がＮＯＶＡでシステムがカオスフレア」と来れば手馴れたもの。しかもミーム：ネフィリムは元から社会が高いので、ファミリアのような変化球も要らず、ガンガンリサーチに入ります。
・ハサウェイには娘がいて、重い病を患っていたこと。
・獣鬼兵は「企画６課」というセクションの実験体であり、素体は人間であること。
ここまで調べた時点でエグゼスはピンときたのでしょう。直接オリジンに向かいます。
逆にニアは、オリジンに向かうのが早すぎるとリサーチできなくなると踏んだのか、「Ｙ．Ａ．Ｃ．Ｏ．Ｂ．を警備していたＶＩＰＥＲ隊員が入院している病院」や「獣鬼兵を開発した研究所」など、ネフィリムで丹念にリサーチを続けます。
ミドルフェイズ��
ハサウェイ関連のリサーチはニアに任せたエグゼス。というより、もう大体事情は察したのでこれ以上のリサーチは必要ないと踏んだのでしょう。逆に、ハロルドがこの事件に関わっているのでは？ と予想し（当たり前ですが）そちらに重点を置いて情報収集を始めます。
オリジン側のネフィリムの拠点、ニューマンハッタンに到着したエグゼスは、ハロルドと企画６課についての項目をしらみつぶしに調べ始めます（この辺り、演出はほとんどＮＯＶＡそのものなので、演出で行き詰まったり膠着することがほとんどありません。…いいゲームですね）。
一方、ネフィリムに残ったニアは、
・ハサウェイの娘が、多臓器機能不全という病を治すため、臓器を人工細胞と取り替える…つまり、獣鬼兵化するという治療法を選んだこと
・企画６課の試作型獣鬼兵は、戦闘力が高い代わりに人間であった頃の記憶が失われていくという副作用があること
…などを調べ上げます。これ以上ネフィリムで調べられることはない、と判断したニアは、エグゼスを追ってオリジンへと向かいます。
ミドルフェイズ��
イリア（※）「よう、久しぶりだなエグゼスの旦那。何か用かい？」
※イリア・ルゥ・レグニッツァ。ルールブック記載のＮＰＣで、通称「ガンドッグプリンセス」。
エグゼス「ハサウェイ・パルマーという人物の行方を知りたいのですが」
イリア「ああ、ありゃあんたの連れだったのかい。随分目立つヤツだったから、こっちでもいろいろ噂になってるぜ」
エグゼス「（苦笑して）そうですか。それで、彼は今どこに？」
イリア「ロダージュっていう街にいるらしいな。（一瞬言葉を切る）こっちでは『海が綺麗な街』ってことで有名な場所さ。…何か心当たりでも？」
エグゼス「…ありがとうございました。この埋め合わせは、またいずれ」
ミドルフェイズ��
ロダージュの街にやってきたエグゼスとニア。早速酒場で聞き込みを始めます。
エグゼス「（プリントアウトされたハサウェイの写真を見せて）この人物を知りませんか？」
リリィ（前回のシナリオ参照）「あら？ この人、毎朝浜辺に来ている人じゃないかしら」
果たして、二人が張り込んでいると、ハサウェイと娘のアンナとおぼしき二人が、海を見渡せる浜辺へとやってきます。
ハサウェイ「アンナ、見てごらん。これが本物の海だよ」
アンナ「この場所にどのような意味があるのですか？ 私は作戦行動に戻らなければなりません」
ハサウェイ「あんなに海を見たがっていたじゃないか」
アンナ「（表情を変えず）記憶にありません」
ハサウェイ「（ため息をつく）」
白状します。実は、このシナリオではハッピーエンドを用意していませんでした。用意していた選択肢は「アンナを倒すかどうか（アンナと戦う場合はハサウェイとも戦うことになる）」であって、アンナの記憶が戻る予定はなかったのです。
ところが…。
エグゼス「お久しぶりですね、ハサウェイさん」
ハサウェイ「エグゼス君か…追ってくるなら君だと思っていたよ」
エグゼス「娘さんの記憶は、戻らないのですか？」
ハサウェイ「アンナは小さい頃から海に憧れていてね。病気が治ったら海を見に行くと言っていた。だが知ってのとおり、エルダの海は酷い状況だ。それで私は思ったのさ。オリジンの海なら…本当の青い海を見せれば、ミラの記憶が蘇るかも、とね。甘い考えだったが」
エグゼス「ふむ…。ＧＭ、特技使ってもいいですか？」
ＧＭ「ん？ 何を使うの？」
エグゼス「“謎の後援者”を使って、『アイテム：思い出の品』を買います。で、５年前に、ログハウスでペンダントを拾っていたことにします」
ＧＭ・ニア「う、上手すぎるッ…！！！１１１」
ＧＭも驚愕で言葉を失うクールな展開。急遽頭の中でハッピーエンドを組み立てます。
エグゼス「（アンナにペンダントを手渡し）これは君のペンダントだろう。君に返しておくよ。さぁ、思い出して。あのログハウスに、お父さんと一緒に出かけた日のことを…」
アンナ「そ、そうだわ…私、パパと一緒に…海が見えるからって…それで…私…」
クライマックスフェイズ
と、その時後ろから拍手の音が。
チャールズ「いやはや、茶番をありがとう。感動で涙が出てくるね」
エグゼス「ようやくお会いできましたね、企画６課長チャールズ。いや…久しぶりですね、ハロルド。と言った方がよろしいか？」
チャールズ「おやおや、バレてたのか」
ニア「娘の病気を治したいっていう隊長の弱みにつけ込んで、昔の意趣返しを目論んだわけだ？ 相変わらず陰険なヤツだな、お前はよ」
チャールズ「（肩をすくめて）昔から、あんたたちは俺の邪魔ばかりする。ここらで一つご退場願おうか」
そういうと、物影から戦闘ヘリと獣鬼兵が姿を表します。
チャールズ「Ｉｔ’ｓ ａ ｓｈｏｗ ｔｉｍｅ！」
エンディングフェイズ��
エグゼス「ＧＭ、“謎の後援者”をあと二回使います。一回は、ロダージュの浜辺に、あのエルダにあったのと同じログハウスを建てるのに使います」
ＧＭ「（今日の“謎の後援者”は神がかってる…）あと一回は？」
エグゼス「ネフィリムの部門を一つ買収します。で、エリザベスパーラメントに報告書を書きます」
その報告書には…ハサウェイ親子が、追跡の途中で不幸にして事故で命を落としたと書かれていた。さらに追跡の途上、ロダージュという風光明媚な街を発見したこと、ロダージュをネフィリムの一大観光地にするため、土地に詳しく、ネフィリムの事情に通じた『現地のガイド』二人を雇ったことも記されていた。
エリザベス「（全ての事情を察し）会長は、好きにおやりなさい、とのことです。あとは任せましたよ、エグゼス」
エンディングフェイズ��
一方その頃、オリジンのどこか。吹雪の吹き荒ぶ中を行軍しながら、ニアはぶつくさ愚痴をこぼしていた。
ニア「なんで俺がこんなところに飛ばされなきゃならんのだ…」
獣鬼兵（※）「ぼやくなよ、俺たちの命はあのメスゴリラが握ってるんだからな」
エリザベス「（通信機からぼそりと）それに耳もいい」
ニア＆獣鬼兵「直ちに任務に戻りますッ！」
エリザベス「よろしい（ぶつっ）」
※クライマックスに登場した獣鬼兵。チャールズが倒された時点で命令が消失し、ニアを通じてＶＩＰＥＲに回収されたのです。
おまけ
ＧＭ「なんか、今日のエグゼスは冴えてたねぇ」
エグゼス「いや、ＧＭが開始前に『老人Ｚ』がどうしたとか言ってたんで、話の筋は予想がついてたんですよ。だから、ずっとクライマックスの演出考えてたので…」
うーん、脱帽。
2006年03月02日(木)
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