びっと日記
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 アリアンロッド・トラベルガイドの秘密(追記しました)

 今度新しく発売された、アリアンロッドのサプリメント「トラベルガイド」。タイトルから考えて、たぶん今までのサプリメント同様、B5版での発売だと思いきや、なんと基本ルールと同じ文庫本サイズ。

基本ルール/トラベルガイド
 :初心者向け、ライトユーザー向け。
  ルールに慣れさせ、世界を理解してもらうために敷居を低くする。

上級ルール/シナリオ集など、その他のサプリ
 :アリアンロッドに慣れた人間、あるいはGM向け。
  そのため、多少ハードルが高めでもよい。

 という差別化を図ろうということなのだろう(*1)。付言すると、これまでゲーマーズフィールドから発売された、いわば「敷居が高め」のサプリメントに掲載された情報の「プレイヤー向け」の部分もちゃんとこの本にまとめられている。

 書式は今までのFEARゲームのフォーマットに近い。後書きによればラーメン屋などを紹介するタウンガイドを参考にしたとあるが…文庫本サイズにこれだけの情報を無理なく詰め込んだことは評価に値する。ただ、さすがにこの版形だと詳細なデータを載せるわけには行かなかったようで、ゲストデータについては簡単なプロフィールの紹介にとどまっている。
 後半はブレイドオブアルカナのランドオブギルティのように、ゲームマスター専用情報が掲載されたページがずらっと続く。他のサプリメントのプレイヤー情報をまとめた部分については、出典となったサプリメントも明記されている。読み応えとしてはBOAほどではないけれど、それは致し方ない。

 そんなことを考えつつ読み進めていくと…。

 ん、これは…地域ごとの専用クラス…?(要は、特定の地域、特定の国出身者などしか選択できないクラスのデータ)
 どこかで…?
 そうか、アレだ!

 もう、覚えている人もほとんどいないかもしれない(*2)。実は、国ごとに特殊クラスがある、というルールを持つゲームが、昔たった一つだけ存在した。
 D&Dの背景世界、ガゼッタシリーズ(*3)である。これは、世界初のTRPGのために用意されたスタンダードな世界のはずが、かなりハチャメチャなバランスになっている(*4)というある意味狂ったワールドサプリである。

 …そして私はその狂いっぷりが、ガゼッタが大好きなのだった。(*5)(*6)

 うはwwwwwアリアンロッドやりたいwwwww
 それも文庫本のみ(つまり基本ルール+トラベルガイドだけ)で!!!

(*1)基本ルールがハードカバーでシナリオ集が文庫本、などという某ゲームに見習わせてやりたい。

(*2)そもそも当時でさえ、D&Dのことを汎用TRPGと考え、ルールブックに世界設定が附属していたことを意識していなかった人も多いのではないだろうか。

(*3)「ガゼッタ」というのは、新和翻訳版の名称である。メディアワークス版ではガゼティアという名称になっていた。メディアワークス版の翻訳を手がけたグループSNEは発音にうるさいので、恐らくガゼティアというのが本来の発音に近いのだと思われる。
 メディアワークスはこのガゼティアシリーズで紹介された「ミスタラ世界」の魅力をかなり前面に押し出すつもりであったらしい。リプレイもミスタラを舞台にしたものになっている。
 …が、しかし。メディアワークスは展開の途中でD&Dから撤退。ガゼティアという名称のサプリメント発売は幻のまま終わった。
 私は新和原理主義者ではないから、メディアワークス版の翻訳についてどうこう言うつもりはないし、窓からルールブックを投げ捨てた伝説のプレイヤーの真似をするつもりはない。
 しかし、新和版のことをさんざんけなしておきながら、途中でD&Dを投げ捨てたSNEの「ガゼティア」という標記には全く親しみが持てないのである。
 なお、今D&Dの展開の中心となっている「D&D3rdエディション」は元々AD&Dの背景世界だった「グレイホーク」「フォーゴットンレルム」を舞台としており、どちらかというとAD&Dの系譜を引く作品であるといえる。

(*4)どれくらいハチャメチャかというと、例えば、ガゼッタの「帝国の曙」には、アルファティア帝国という魔法帝国が存在する。この帝国の設定には「36レベルマジックユーザー1000人の評議会が存在する」などとさらりと書かれている。
 36レベルというのはこのゲームのレベル上限である。36という数字だけみると凄さがわかりづらいが、海外のゲームなのでとにかく必要経験値だけでも尋常でない。36レベルの次に待っているのは「神」の領域だ(比喩ではなく、次は神になるためのルールブックが待っている!)。
 その36レベルが1000人いるのだ(ちなみにあの灰色の魔女カーラでも恐らくレベル18程度。アシュラムでさえ15前後である)。オフィシャルD&D誌の記事を読んだ当時の私は、空いた口がふさがらなかった。
 それだけではなく、例えば基本ルールではレベル12までしか上げられないエルフが25レベルまで成長できるようになったりする(「アルフハイムのエルフ」に収録された、エルフ・ドルイドのルールによる)。
 圧巻はハーフリング。基本ルールではレベル8までしか上げられないはずのこの種族は、ガゼッタシリーズの追加ルールを使うと35レベルまで成長が可能になる。クラス名はその名も「ハーフリング・マスター」。呪文を使わずファイアーボールを跳ね返したり、ドラゴンブレスを受けても無傷だったり、レイズデットフリー(いわゆる「死者蘇生の呪文」)が使い放題だったりと、ゲームバランスという言葉が裸足で逃げ出すようなとんでもないデータである。

(*5)どれぐらい好きかというと、昔新和版で最後に発売された「アルフハイムのエルフ」という、ボックス版のガゼッタが欲しくて欲しくて仕方なくて、新和の営業を小一時間問い詰めたり、あちこちのゲームショップを放浪したりした挙句、ヤフオクで定価の○倍の価格で落札したりするぐらい。
 しかもそれでも懲りずに冬コミで私訳版を買いあさるぐらい。

(*6)きくたけのゲーム歴の長さから言って、ガゼッタのことを知らないとは思えない。彼と私の古いゲームに対する趣味はよく似ているので、なんとなくそう思うのかも知れないが。パクりというより、これはきくたけ流のD&Dへの賛辞なのではないだろうか。
 今回の後書きにあった「昔、よくTRPGのワールドガイドだけを読んでニヤニヤしていた」なんてくだりはシンクロしすぎで驚いた。

(*おまけ)後書きを読むと、今回の本が文庫で発売された立役者は村山氏(元RPGマガジン編集長M氏のこと。その後SNEに勤める)だとか。
 助言はまったくもって適切だと思うけど、他社製TRPGの前に、自社の○○とか××とかの展開でその慧眼を生かすべきじゃないかな…?

 最初の原稿を午前二時に書いたら、途中があまりにも飛躍しすぎていたので追記や修正など入れてみました。

2006年01月19日(木)
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