今、学校の子どもたちの間で、○○ちゃんは○○校に行くらしいよ、とか、話題になっているという。娘の第一志望校に入った子たちも何人かいるのでどうかな、と心配していたものの、仲良く遊んでいるようだ。制服かわいいんだよって自慢するんだよーーー、などと・・・落ち込んだ様子もなく話している。 何人かが集まってきて、「何校? 何校?」と聞かれるらしい。それが学年全体に広まるということのようだ。
「○○ちゃんはねぇ、聞かれても『さあ?』ってはぐらかしてるよっ。」 「あなたはどうしてるの?」 「聞かれたら自分からしゃべってる。」
「なんて?」 「制服だっさいけど、高校からかわいくなるから、よかったら高校からおいでっ、て。」
聞いてるこっちは泣き笑いである。
「『いいなあ、高校受験なくて』って言うから〜、『その分こっちは小学校頑張ったんだよ』って言っておいた。ホントに受かってよかったよぉ〜。」
子どもはたくましい。
きっと陰でまだまだ泣いてるんだと思うんだけど、すっごい前向き。
娘は今回の受験で、 「ぜったい、ぜったい、ぜったい、ぜったい、あきらめない。」 という言葉が、本当だったんだって実感したんだと思う。
T代表が娘の教室に来た時、その話をしたそうだ。
「合格は誰かがくれるわけじゃない。合格は作るものだ。みんなに合格する力はあるんだ。1日がだめでも、2日がだめでも、3日がだめでも、ぜったい最後まであきらめない。ぜったい、ぜったい、ぜったい、ぜったい、あきらめない。」
って。
娘はその日から、 「ぜったい、ぜったい、ぜったい、ぜったい、あきらめない。」 っていうおまじないを唱えてきた。
苦しくても、悲しくても、声を出して泣くなんてことはなかった。涙をひとつふたつ流すと、また前を向いていた。
受かった第二志望校の学校に娘が足を運んだのは、受験当日だった。受験当日に初めて足を踏み入れた。それまで娘は一度も足を運んだことはなかったのだ。私は何度か説明会に足を運んだし、最後の説明会にも足を運んだ。最後の夫の反対を押し切ってこの学校に決めたのは私だ。夫はなかなか首を縦にふらなかった。もう一つ併願としてあきらめきれない学校があったのだが、私はどちらも第一志望校として受けさせたいから、と、2校それぞれダブル受験できるように組みたい、と説得した。
不思議なもので、娘は自分が見たこともなかった学校なのに、中学校生活を楽しみにしている。30分くらい電車に乗るので、体力つけなきゃ、なんて言ってる。夫も、既に気持ちは受かった学校のほうに向いている。第一志望校に対しては、
実は、第一志望校の繰り上げが今日あたりから、ということで、ずっと悩んでいた。やっぱり繰り上げがあれば第一志望校に行くよなあって。でも、もう私たちの中では合格させてくれた学校でいいじゃないかという気持ちが膨れてきて、今更・・・という気持ちが出てきていた。でも・・・、でも・・・万が一そうなったらそうしないとおかしいよなあ、的な気持ちで揺れ動いていた。
繰り上げがない、ということが確実となり、私と娘は抱き合った。喜んで抱き合った。迷わず受かった学校に行けるからだ。そして夫には携帯でメールした。
合格した学校は、一次試験から二次試験までの4日間に願書提出した人が400人もいた。 二次試験の前日の4日には、200人もの追加があった。
試験当日、子どもを迎えに行く時の人数を見ると、一番最後のグループで40人中4人が欠席程度だった。4人は前日の夜までに合格が決まって欠席となったのだろう。残りの36人は不合格で来た人たち、もしくは合格がわかってチャレンジしてきたのかもしれない。
定員が100人のところに追加で400人、志願者は合計1,000人以上にも膨れていた。 通常、中堅校というのは、上位校の滑り止め扱いとなり、上位校が受かると受けに来ないため、二次試験はガクンと人数が減るものだが、もともとダブル出願の多い学校で、一次で合格した人数程度しか減らなかった(去年の数字を見ていて覚悟はしていたが・・・)。一次に落ちた子たちのほとんどは、二次でも一緒に戦うこととなった。本当に怖かった。
発表を見て嬉しくて泣き、外に出て電話をしていたが、しばらくすると落ちた人たちのことが気になり、「落ちてる人もいるんだからあまり喜ばないよ。」と言ってしまった。 その発表だけで、500人以上の人たちは、落ちてしまっているのだ。 それも5日の試験といえば最終日の人がほとんどだろう。 他に受かっている学校があればいいけど、うちと同じ条件で落ちていたら・・・、その精神状態を思うとしんどい。
他の学校に受験する友だちも、今回は前年度より100人以上も志願者が多い・・・、と言っていた。 うちの子の受けた学校もしかり、倍率も前年度より全体的にきびしくなっているのではないだろうか。 全体の受験者数も何千人も増えていると聞いた。受験者数が増えたからといって募集人数が増えるわけではないだろう。当然上位校ではかなりの激戦となり、上位校で落ちてきた子たちが中堅校に入ってくる。中堅校を目指して頑張ってきた子たちは、その上位校から落ちてきた子たちと戦わなくてはならなくなる。
身近で、特待生,栄冠組が、落ち続けて中堅校に落ち着いたという話を聞くと、本当に中学受験って怖いと思う。うちの子が受かった学校の制服の申込にも、4組さんから来ている子がいた。4組さんと言えば偏差値50台半ばくらいだろうか。滑り止めで受けたに違いないのだ。反対に、うちの子より席が後だった子が、うちの子の第一志望校に受かっていたらしくショックだったようだ。なぜ授業中に寝ているのに受かったんだろう、ズルイ、と話していた。知らないところで頑張っていたのかなあ、と話したら黙ってしまった。そりゃそうだろ、自分も精一杯頑張ってきたつもりでいるのだろうから。
じゃあ娘は本当に頑張ったんだろうか。うちの子はもともと体力があるほうではなく、学校から帰ってきて昼寝するような子だ。学校から帰ってきて塾に行くなんて、とてもとても大変だったのである。寝てしまって休んでしまったこともたびたびあった。林間学校に行ったりすれば、もうくたくたで次の週はお休みになってしまうのだ。うちの子の体力で、よく1日からの一週間頑張ったなと思う。だからうちの子にしてみては頑張ったということになるのだろうか。
入学の手続きをした翌日の日曜日(8日)、今まで使った娘の中学受験のためのプリントやテキストの処分をした。最後の一ヶ月はプリントだけの授業となり、行くたびにプリントが山積みになって机の半分に積み重ねられていた。いつかやるのではと思ってとっておいたプリントもある。6年の栄冠への道は全く新品状態だったが、それも捨てた。心機一転、来月中旬には中学の備品類も届くし、4月の上旬には中学生の教科書も持って帰ってくるのだから。捨てた量は大きなゴミ袋4つ分。よくこんなにあったようなあ、というくらいすっきりした。
「ねえママ、今だから言えるんだけど・・・、実は・・・、社会・・・、10点も取れてなかったと思う・・・。」 「(沈黙)よかったよ。それ、結果の前に言わなくて・・・。ママの寿命、かなり縮まったかも。」 「パパ、怒るかなあ。」 「いや、結果良ければ全て良しでしょ。怒らないよ。」
「ねえ、実は社会10点も取れてなかったんだってっ。」 「ほんとかよ。まあ受かったんだからいいじゃん。結果オーライだよ。」 「ほらねっ。怒られないでしょっ。」 「よかったぁ。」
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