French Wolf の日記
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2003年05月15日(木) 若いからといってあなどれない N コーチ。


木曜日。

仕事の波はやんでしまったのだろうか。凪の季節なのだろうか。いずれにしても定期的に入ってくる仕事は毎日の例の件だけである。

さて、そんなことを気に病んでいても仕方ない。というわけで午後 2 時すぎからの「きれいにクロール」に参加。コーチは男性 N 氏。後で判明した事実なのだが、同氏はカイロプラクティックの施術免許 (適当な日本語が見あたらなかったため勝手に表現してみた) をもっているらしい。レセプション デスクの壁に同氏の免許が額に縁取られて展示されていたのである。

閑話休題。N コーチのクラスはおもしろい。というのも教職課程を履修したことのあるひとならば何となく雰囲気は味わっていただけると思うのだが「発見的学習法」を全面的に採用しているのである。具体例として今日のクラスを紹介しよう。(「クロールとは何ぞや」的な説明になったときを想定し、あらかじめ引用のようにインデントを設定しておこう。)


クロールでは通常、手のストロークは S 字カーブを描くようなイメージである。人差し指から手の平が入水 (エントリ) したら次の動作であるキャッチ (水をとらえて、文字通り「掴む」姿勢) へスムーズに移行するわけだが、物理的には手の平の向きを 180 度変え、親指が水面を向くようにする。このとき感覚としては、水中で最初プールの底面と平行だった親指を、泳いでいる人のより遠くにある水を掴むと同時に、親指付近に小さなボールがあると想定して、その表面をなでるように若干外側に水を掴むことになる。そして、肘を曲げながらキャッチした水を体のラインに沿ってかき寄せ、肘の角度が腹の辺りで 100 度程度になるように水を自分の体の真下に寄せ集める。引き続き、集めた水を腿にむけて押し出す (プッシュ)。押し出すといっても、あくまでも水中の話であって、これが腕が空中を次の姿勢のために移動している最中に飛沫があがるようでは無意味なエネルギーが浪費されていることになる。

まぁ、よくもここまで書けたものである。実際にクラスに参加すればコーチから指摘されることがゼロになることはまずあり得ないというものの、人に教えよう、伝えようとすれば「頭で理解している」という証拠にここまでダラダラと書き連ねることができるのだ。まぁ、いずれにしても、とにかく今日の N コーチのクラスではクロールの動作の最も効率的な方法を体験するために、「あえてふだん自分が意識していない、非効率的な方法を指示し、その上でクロールの各個人に合ったストロークを学習させる」というテーマに基づいていたものと思われる。実際に今日 N コーチが我々受講者に指示した泳ぎ方とは:

(1) 水中で肘を曲げず、真っ直ぐ入水し、そのまま真っ直ぐ下に水をとらえ、真っ直ぐ腿の方に押し出す方法;
(2) 水中で肘を曲げ、故意にプッシュする前の手の平が腹の下にくるようにする方法; そして
(3) 水中で肘を曲げ、プッシュする前の手の平が体のサイドのちょっと外側を通り過ぎるようにする方法

の 3 種類である。結論として N コーチが言った台詞がショッキングだった。「みなさん、結局どの方法にしても、ほとんど変わらない泳ぎ方になっていますね」というものである。ただし同氏曰く「いや、これは無理にこのような泳ぎ方のどれかを選択しなければならない、というものではなくて、今みなさんが泳いでいる方法が自分に一番合っているスタイルであることを再確認してもらいたかった」ということである。

かつて教育者を目指していた自分にとって、このように「発見的=実践的学習法」を体育教育、生涯教育の場面で応用している N コーチ (記憶に間違いがなければ 22 歳) を尊敬した。見直した。




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