Love Letters
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2003年02月17日(月) 適切な愛撫

 
 あなたと知り合った頃、

 私はちょっと不幸せだった。

 当時の私は、

 自分の中の大人の良識とプライドで

 いつ壊れるかもしれない不健康な心を

 ぎりぎりのところで保っていた。


 
 世の中、

 もっと不幸な人が沢山いるということを知らないほど、

 私は世間知らずではなかったし、

 毎日悲しみに浸っていられるほど、暇でもなかった。


 
 幸い私の仕事は、

 熱意ある大人や子供達のひたむきな姿に

 日々触れることが出来るものだったので、

 少なくとも仕事をしている間は、

 私は、その不幸せから逃げている事が出来た。

 思い出しても自分が愛しくなるほど、

 他人の前では健気に笑顔を見せていたと思う。



 本人は健気に振舞っていても、

 私は、客観的に見て

 「とてもつらい立場にある人」だったから、

 あまり仲良くない友人に

 信仰宗教まがいの励ましの言葉を頂いたり、

 目の前で同情の涙を見せられたり、

 「あなたは強い人だね。」などという

 無関心という名の誉め言葉を頂いたりもした。



 そんな時に出会った、

 とんでもない人があなただった。^^

 関西では男の価値は、

 「好きな女の子をどれだけ笑わせてなんぼ」のものだって

 あなたは言ってた。(謎)(爆)

 あなたは口説きではなく、

 シュールなギャグで私を落とそうとしていた。^^



 ユーモアが、悲しみから人を救うってこと

 あなたは知っていたの?


 悲しみで心が麻痺して、

 心の底から笑うことすらできなかった私なのに、

 気づいた時には、

 あなた特有の

 屈折したシニカルなユーモアに

 ものの見事に降伏させられていた。^^



 それ以来、

 私の心がネガティブな方向へ傾いている時、

 あなたは決まって、ナンセンスなジョークを連発する。

 あなたのジョークはいつも

 私の笑いのツボをしっかり刺激する。



 似ているのは、ユーモアの感覚だけではなく、

 私達の間には以心伝心みたいなことがよくある。


 先日、あなたが「指輪を贈るよ。」と言ってくれた。

 私はあまり物を欲しがらない。

 あなたと共にする、美味しい食事や

 素敵なホテルのお部屋には心惹かれるけれど、

 何か形に残るものを男の人からプレゼントされたいと

 思ったことがない。

 お洋服もアクセサリーも

 自分のお給料で自分の好きなものを買いたい

 可愛げのない女だった。



 ところが、最近ふとしたことから指輪が欲しくなった。^^

 アメリカ人と日本人の友達数人でお喋りをしていた時のこと。

 婚約間近のJoeが、彼女に贈るエンゲージリングを

 幸せいっぱいの表情で私達に見せてくれた。

 一人前の大人の男が見せる

 とろけそうに甘い表情を見て、

 『うーん。いいなぁ。』と思ってしまったのだ。

 あなただったらどんな表情で、私に指輪を贈るだろうって…

 その時のあなたの表情が見たくなったのかもしれない。^^




 それから、数日後。


 あなたに突然、


 「来月になったら、指輪を贈るよ。」って言われた。


 「どうして私が指輪を欲しがってるってわかったの?」


 「以心伝心。」とあなたが笑う。


 「実は、この前のデートで聞こうと思ってたんだ。

  指輪とか欲しい?って。」

 
 こんな風に、あなたには不思議なくらい、

 私の心のからくりがわかってしまう。 




 降伏させられたのは、
 
 私の心だけじゃないね。

 初めてあなたに抱かれた時、

 私はとても不思議な気持ちだった。

 あなたとは初めてなのに、

 もう何度も肌を合わせた古い恋人同士のような感覚。

 あなたはまるで

 私の全身に無数に散在する敏感な部分を

 初めから知っているかのように私を愛撫した。


 抱かれた後、

 「他の女性もこんな風に抱くの?」という私の愚問に

 「こんなやり方をしたのは、正直、小夜子が初めてなんだ。」

 とあなたが言った。



 あなたは、他の誰にもしたことがないやり方で

 私を抱いた。

 私は、他の誰にもされたことがないやり方で

 あなたに愛された。



 心にも身体にも

 あなたがくれる

 適切な愛撫。



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小夜子

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