俺にはよりどころがない。
たった一つだけでも何か誇れるものがほしい。
「俺にそれが見つけられるだろうか」
そんなことは知らない。
「それはなんだろう」
そんなことはわからない。
今はそれを探す時期だ。
そう思っているのに俺は何をしている?
もうそれを見つけ深めていっている人もいるのに
俺はなにをしている?
歩き出すことも後退することもなく
ただ現実から逃げているだけ。
・・・現実って?
「それすら見えない盲目の仔羊。
闇に潜むものを恐れ立ちすくんでいる仔羊。
背後の闇には狼が迫っている。
子羊は、ただ楽しかった日々
暖かな日差しの中での草のにおい おいしい食べ物の味 仲間とのたわむれ 親にかこまれ安らぐひと時
これらの過去の記憶に沈みこみそれを反芻する。楽しかった日々を。
彼は知らない。前方の闇には仲間の群れがいることを。
彼は知らない。闇の向こうに光があることを。
そして彼は知らない。
過去は取り返せる事を。
いま、その仔羊に必要なのは―― 。」
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