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2002年10月15日(火)
■politeness への誤解■

 本日、プレゼン準備。


 日英における間接発話行為(indirect speech act)の違いについて、木曜日にプレゼンすることになっているのだが、手始めに、間接発話行為について説明するのはもちろんのこと、politeess についても説明しなければならない。なお、間接発話行為とは、An indirect speech act is one performed 'by means of another'.というコトで、「他の発話行為によって遂行される発話行為」のコトを言います。その代表格には、依頼表現が挙げられます。


 人に依頼をすると言うことは、聞き手に負担を強いるワケですから、相手に嫌な気持ちを起こさせず、かつ自分の目的を達成してもらおうとして、なるべくソフトな発話をしようとします。日本語であれば「ちょっと〜してて欲しいんですけど」といった表現が考えられる。この時に用いられる方略が、politeness というものです。


 この politeness という用語、今でこそ減ってはきているが、「丁寧さ」と訳しているものを見かけることがある。この日本語は、日本人にとって誤解を生みやすくする訳語だと思われる。なぜか。それは、日本語の中に、体系化された「敬語」が存在しているからであります。「丁寧さ」と聞けば、丁寧語・尊敬語・謙譲語といったものだけを浮かべてしまう。すると、次のようなケースが、politeness strategy が用いられたものと判断できなくなってしまう。


 パーティを開いたとする。そこにはケーキがあって、主催者の筆者は、招待者に対して「どうぞ、召し上がって下さい」と言ったとする。これは、一様に polite な表現と理解されるであろう。ところが、近くに居た親しい友人に対して「どんどん食えよ」と言った場合に、これが polite な表現とは理解してもらえないことがある。これは、「politeness を『丁寧さ』と信じ込んでいる」からこそ生じる誤解であると考えられる。


 直接的な表現であっても、polite な表現になり得るケースを見落としてしまうことが多い。家族の会話で敬語が横行していたら、誰でも気持ち悪がることは、容易に想像できるはず。この時、politeness を用いる上で影響しているのは、「親密度」である。親密度が低い人に対しては、より丁寧で間接的な言い回しをすることが polite であるし、親密度が高い人に対しては、より直接的な表現をすることが polite であるとされる。言われてみれば、当たり前なのだが、「politeness=丁寧さ」で覚えてしまった人は、この部分を忘れがちのようである。





politeness とは、人間関係を維持するコミュニケーション手段のことです。








本日のBGM:今井美樹『微笑みのひと』


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