とりあえず、今までの作品を紹介させていただきたい、と思います。 自由に読んで欲しいので、作者が喋り過ぎると野暮になりますから、少しだけ。 1『人のセックスを笑うな』 主人公は磯貝くん。 タイトルとはうらはらに、普通の恋愛小説です。 私にとっては、25歳のときに書いた、デビュー作に当たるものになります。 2『浮世でランチ』 主人公は14歳の丸山君枝と、 25歳の丸山君枝。 中学生が宗教ごっこをする話と、 会社を辞めて東南アジアを旅する話が、 同時に進む。 昼ごはんを誰と食べるか? というところで、 会社員の方から好評をいただけることが多くて、嬉しいです。 3『指先からソーダ』 朝日新聞土曜版で連載していた「指先からソーダ」に、様々な媒体に単発で発表した散文を加えた、 1stエッセイ集。 毎回、図を描いて、切り口や構成を考えて、下書きをたくさん書きながら作った覚えがあります。 新聞ということで、 世代や性別を越えて読んでいただけるように、 綴りました。 デビューしたばかりの、 異様な緊張感の中で練っていたので、 今や、もう二度とこういうエッセイは書けないだろう、と思います。 4『カツラ美容室別室』 語り手は佐藤淳之介。 オレ、カツラさん、エリ、梅田さん、桃井さん、多彩な友情の模様と、 一年間の話なわりに時間が変な風に進むところを、 描けたので、 私としては、書きたい小説を書けた、 とう感があります。 5『論理と感性は相反しない』 主人公は神田川歩美。 全編書き下ろしの、ふざけた短編小説集。 私としては、「人間が出てこない話」「芥川」「まったく新しい傘」等の、はじけた小品を作りたくて、編んだものです。 笑って欲しい。 6『長い終わりが始まる』 小笠原と田中。そして、「みんな」の物語。 落ち着いた青春小説です。 このホームページの文章は適当につらつら書いてきましたが、 六冊の本は、 平均して、完成原稿の三倍ほどボツ原稿があり、 完成形が定まってきたあとも一行一行、句読点や行がえ、漢字平仮名等の、 見た感じのリズムを磨いて、練り上げてきました。 私は、自意識が弱く、 自分への興味が薄いですが、 「自信のない人は隅で生きればいい」という考えには反対なので、 読者の方にも堂々としていて欲しいし、 私も作家としてはどこへ行っても胸を張っていよう、と思っています。 私は、外界のことが書きたくて、 スピーカーのようになりたい、と考えています。 視線と言語センスにだけは自信があるから、 世界の見え方のひとつを提示したい。 世界で既に鳴っている美しくかつ汚い音楽を、 私の体を通して響かせてみたいです。 作家は、死んだあとに評価されるのもまた一興と思うのですが、 せっかく同時代にたくさんの人がいるのだから、 そのことを面白がりたい、とも感じます。
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