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恋とマシンガンと源氏物語
2001年06月20日(水)

卒論の第二次題目の事を先生と話したので、サークルの練習をお休みした。
何故か夜の8時半の約束になってしまったから。

私は源氏物語の浮舟について書こうと思っているのだが、浮舟ってご存知だろうか。
源氏物語の二部、宇治十帖の最後に出てくる。(宇治十帖はおまけで完成度が低いとか言われるけれど、淡々としていて私はいいと思う)
浮舟は源氏物語に出てくるのに別にいい女って訳でもなく、個性的でもなく、ただひたすらはかなげで少女っぽい。
でも、更科日記の孝標女が夕顔と並んでこの、浮舟に憧れている。
やはり、ばかな文学少女の孝標女、はかなげな女の子が好みなのか。
気持ちはわかる。
私も憧れる。

浮舟って二人の男の人(薫と匂宮)に求婚されて、どっちか選べなくて悩むかと思ったら、そこでは悩まずどちら共といとなんじゃって(いとなむっていうか)、あげく思い悩んで自殺しちゃうっていう奴だ。ばかだ。

しかもたぶん、ほんとうは二人とも浮舟の事をそんなにすきじゃない。
匂宮は、コンプレックスのある薫と張り合いたかっただけなのだろう。
薫は、元々、浮舟ではなくお姉さんの大君が好きで、その大君が死んでしまった後、大君に似ている浮舟と出会ってすきになっただけなのだ。
浮舟は「お姉さんの代わり」の域を出ない。
要するに薫は浮舟を、人形のように可愛がっているだけだ。
実際は誰も浮舟のことなんて見ていないのだ。

この「似ているから好きになる」というのは源氏の最初の方にもある。
源氏が、すきだった継母に似ている若紫を、引き取って育てて妻にする話だ。
この同工異曲がなぜ描かれたか考えないといけない(とか先生が言ってた)

わからないけど、紫の上は美人で知性もあって、源氏と結婚して、一番大事にされて、幸せそうだけれど、でもだから何というか、
女の人生ってそれでいいのか?という感じで。

反対に浮舟の方は川に投身自殺を謀ったのに死ねず、僧に助けられ、出家してしまう。
生きている事を知った薫が手紙を出してくるが、無視する。
そんなに幸せそうでもないが、この冷めた感じが、いいな、というか。

浮舟は確かに最初はなよなよして、どうしようもないけれど、最後には強く冷めるというか、そこが魅力。

宇治十帖というのは、確かに政治の闘争や、恋愛沙汰も、前編ほど描かれていないし(恋愛ですらない気がする)、読む人によっては終わり方が中途半端だと言われたりもするかもしれないけれど、そういうのって男の人の意見なんじゃないかな。
女の子の生き方の問題なんじゃないかって思う。







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