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- [2005年11月18日(金)] 天井裏より愛を込めて 第四話
俺の名前は国寺 真。雨の日に交通事故で死に、幽霊になった。
目の前に俺を殺した人間が現れたとき、一体どんな顔をすればいいんだろうか?
天井裏より愛を込めて
第三話「『ヒゲとボイン』とデブとメガネ 後編」
「いくらお詫び申し上げても、詫びきれることではありません」
俺をひき殺した男の妹だと名乗った女は、そういってヒゲ面の男、俺の親父に頭を下げた。
「あの馬鹿は……」
親父は俺の遺影を見つめながら、女のほうを見ぬまま独り言のようにつぶやく。
「あの馬鹿は、機械の犬っころ助けるために道路に飛び出したんだろ?」
「はい、そう聞いています」
「そんな馬鹿のせいで人生狂わされる人のほうが心配だ。おまえさんの兄貴は?」
「親族の方に合わせる顔がない、と」
「けぇったら伝えてやんな。あんたは何にも悪くない。悪いのは全部、この馬鹿だ。ってな」
親父の言葉を聞いた女は、かなり面食らった顔をした。
馬鹿を連発しすぎなのはムカつくが、親父は何も間違ったことを言ってはいない。悪いのは勝手に道路に飛び出して勝手に死んだ俺だ。
それなのにつらいのはいつも残されるものばかり。
ぎりっ、と歯を食いしばる。
死んで、初めて後悔した。まだ生きたいと思った。生きていたいと願った。親父のために。目の前の女性のお兄さんのために。ここにいるみなのために。
「ま、真くぅ〜ん。な、なんで死んじゃったのかなぁっ!?」
……こいつは除外するとして。
しばらく後、女性は俺の遺影に手を合わせると、その場を辞した。
俺は女性のお兄さんのことが気になったので、彼女に付いていくことにした。
彼女はすぐ近くに止めてあった車に乗り込む。俺も助手席にお邪魔しようと思ったが、そこには先客がいた。男だ。
「亜衣沙。どうだった?」
「兄さんは悪くないってさ」
「はっはっは、そりゃそうだ。飛び出してきたのはどっかの馬鹿だ。いや、よかった。慰謝料払え! とか迫られるかと思ったぜ」
「全部向こうの責任だからそんなことないって言ったでしょ。払うにしてもたいしたことのない額よ」
……そりゃ、俺が悪いよ? 全面的に。死んだ本人がいうんだから絶対さ。
だからって、だからってなぁっ!!
「人が一人死んでんだぞっ! てめぇっ!! テメェが殺したんだぞっ!!
畜生っ!! 笑いながら話すことかよっ!?」
俺の叫びは、誰にも聞こえない。届かない。それが、怖い。初めて死が怖いものだと知った。
生まれて初めて、誰かを殺したくなるほど憎んだ。
空は梅雨のど真ん中でありながら、抜けるように広がっていて、それが泣きたくなるほど許せなかった。
次回予告
果てしない憎悪が俺を焦がす。
それで人が殺せそうなほどの殺意。
人を呪い殺す術を探し街を徘徊する俺は、一人の幽霊と、一人の少女に出会う。
天井裏より愛を込めて
第五話「『ヒトリノ夜』のその向こう」
おかしい、こんなに暗くなるはずじゃなかったんだが……。
なんかすっげぇ、短いし。精進します。