Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2019年12月05日(木)



 全く違う民族が形成する社会の中に自分を埋没させることほど心地良く、啓発的なことはない。特にその民族に対して尊敬の念を抱くことができて、共鳴ができて、それでいて自身は異邦人の身でありながら、相手のことを誇りに思えるとき、そんな時にはその思いは強くなる。アルメニア人、その豊かな生きざま、おせっかいまでの親切さ、骨身を惜しまない勤勉さ、形而的なものに対する不可解なまでの嫌悪の情、そして現実世界とがっぷり四つに組んだ姿勢 ー これらは私に教えてくれる:君は起きているんだ、自分自身の生きているその時を恐れるな、こそこそするな…。
 これらのことが理解できたのは、彼らの中に我が身を置くことができたから、ではないだろうか。その激しさゆえに人々に知られている彼らであるが、彼らは決して駅の時計に従って行動することなく、本能のまま行動することもない。彼らが従うのは日時計だ。私はズヴァルトゥノツの廃墟に残された円形の天文図、あるいは石に彫られたバラのレリーフにそれを見たのだ。
『アルメニアへの旅』(1930/31)
ズヴァルトゥノツ教会:7世紀半ばに建てられ、10世紀末に大地震で崩壊した遺跡



「…ブラームスがどのように作曲をしていたかについては、当時の記述がある。友人がブラームスを訪ねて彼の家のドアの前に立つと、ピアノ曲が聞こえてきた。ところがそのピアノの音に混じって、犬の吠えるような声までも聞こえてきたのである。ブラームスが犬を飼っていないことを知っていた友人は驚き、ドアを開けてみると、さらに驚くことになったのである。ぼさぼさ髪のブラームスがピアノに向かって即興演奏をしながら、部屋中に響き渡るような情けない泣き声をあげ、涙が頬の上を流れて落ちていた…」。(『Selected Works (選り抜きの作品)』モスクワ、1981年刊、P.95)








Niseko-Rossy Pi-Pikoe |編集CDR寒山拾得交換会musicircus

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