Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2016年03月02日(水) |
文藝別冊『イエス プログレッシヴ・ロックの奇蹟』 河出書房新社 2016 |
文藝別冊『イエス プログレッシヴ・ロックの奇蹟』 河出書房新社 2016
“スクワイアをはじめとする優れた音楽家たちに、溢れ出す豊かなヴィジョンを次から次に難題として押し付ける「非・音楽家」アンダーソン”
イエス − 爆裂するノンセンス、引き裂かれた牧歌 YES − Exploding Nonsense, Torn Pastoral ■
ビルブルフォードじゃなきゃチガウんだよねー、根幹はクリススクワイアーでしょうねこのベースなかりせば!、海洋地形学はスティーブハウのギターはめ込み欲望で設計されたんじゃね?、危機のラスト部分のドゥダーダダダッ!ダリラ、ラララ!スパイ大作戦と歌舞伎の見栄切るリズムんところがたまんないー、イントロの自然音から宇宙空間へ、ラストワーズはグライダーだからね、
イエスとツェッペリン世代の上司と盛り上がる首都高、リーマンショックを予言していたジャック・アタリが今年あたりとプレジデントで書いてますよ、あいつはさー、欧州開発銀行のトップになったとたん絵画を買い集め出してそれで失脚しちゃった、芸術好きなんだよな、へいワタシもカニバリズムの秩序や音楽貨幣雑音読んでました、あいつ頭よすぎる欧州らしい知性だ、イエスの本?そういう論点はすごいね、買ってみるよ、今日は新国立劇場につけてー、ヤナーチェクのオペラみて帰るから、
半世紀とはいわないが、今まで誰も提示できなかったイエスの歴史的名盤『危機』の核心を衝く論考が出た。
ヴィンセントギャロ、浅草ロック座(いつ行ったんだー)から、柴田南雄、トマスルイスデビクトリア、マイルス、沼田順、ジョンレノン、高山宏、ステレオラブ、ルイスキャロル、タリススコラーズの示唆(というよりクラシックバロック評論への問題提起!)
もう、「危機」のしずくが落ちる宇宙空間に投げ出されるような読書体験である。月光茶房の原田さんもあんぐりとくちが開いているに違いない。これだけ世評が定まった歴史的名盤について、まったく新しい聴取を要請するようなちゃぶ台返し、いやもとい、革命的な音楽評論が可能だったとは。快挙である。ますますおそるべし福島恵一。
アイデアのパーツをチカラ技でねじ伏せる4にん、ははー、火事場のばかぢから、なのだ、切羽詰まって生きるときの軌跡、オラにはよくわかる、二度と繰り返せない偶然の素晴らしさ、福島恵一は音楽評論として『危機』を演じてみせたのだ、これだけの莫大な聴取体験を結びつける知の冒険力を想う、中井久夫を想う、書き終えた彼は戦地をくぐり抜けた少年の貌をしていることだろう、
読む者もまた、少年にならなければならない。
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