Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2012年06月24日(日) |
菊地雅章TPTトリオ@ブルーノート東京ファーストステージ |
若き新皇帝トーマス・モーガンはやはりそのとおりであった。どんなシチュエイションにあっても、音を読み、共演者に解放されたスペースを提供する、いやそういう言い方は適切ではないかもしれない、リアルタイムにワンタッチで見事なシュートチャンスを作るミッドフィルダーでありながら同時に裏をかいてくぐり抜ける彼のラインを描いてもいる。彼の聴力と身体能力は21世紀のジャズをリレーしてゆくことだろう。トッド・ニューフェルドのギターは、集中と痙攣と連鎖の特質で、ラインを形成するよりは一瞬に賭けている。コードワークに遊んだり早弾き見せもしない。主にプーのピアノに触発を与えている。
ブルーノート東京に菊地雅章TPTトリオを聴いた。プーさんに会うのは12年ぶりだ。おお、書き手の多田か!太ったな、生きて会えて良かった、日本の何処にいても祈ってましたよ。握手の手を忘れない。開演、一音目の不思議な響きを憶えておく。おれには All The Things You Are が聴こえるよ。
12曲目はビアノ、3曲目はベース、4曲目はギターから始まる即興ジャズ。居合い抜きの連続、持続、能の集中した状態の微動する光速。破綻や緩みなど無く。言葉はもどかしいものだ。宇宙の一瞬に漂う、消失しそうな自我。忘我。
90分のステージはおれには25分程度に思えたが、ややアップな仕上げに走り出したラストチューンが始まるときにはマラソンランナーのように汗だくになっている自分がいた。まさに精神力勝負なこのステージ、プーさんたちはタフだよなあ。とてもセカンドステージを聴くたぐいの音楽ではないだろ。60分集中聴取でさえ、ついて来れてるやつはいるんかよ。
しかしなあ、こんなのセカンドステージまであるブルーノート東京というのは無理だろ。酒飲んで料理食って聴くもんではないだろ。日本で最高のステージに、という気持ちも痛いほどわかる。
他の週のプログラム予告が流れる休憩時間。シュールに身体が冷えて硬くなってゆくのがわかる。だめだ、セカンドステージまで持たない。
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