Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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1100枚を超えるECMレーベルの全作品をカラーで掲載し全作品をレビューをした世界初の完全カタログが完成した(傍系JAPOレーベル、ECM−SP、ベスト盤を含む)。
1969年にひとりのドイツ人マンフレート・アイヒャー(1943〜)によってEdition of Contemporary Musicと宣言にも似たネーミングで創立されたレーベルは、キース・ジャレット、チック・コリア、パット・メセニーの成功でヨーロッパを代表する存在となり、84年にECMニュー・シリーズとして現代音楽やクラシックに新しい潮流を作り出した。ECMのサウンド・カラーは北欧のミュージシャン、ヤン・ガルバレク、テリエ・リプダル、アーリル・アンダーシェン(アリルド・アンデルセン、この秋に初来日公演があります)、ヨン・クリステンセンに基調があり、そこにアメリカのみならず世界中のミュージシャンが交差することで彩りがもたらされた。300名を超えるミュージシャンが、ひとりのプロデューサーの視点でリリースされている稀有な芸術的達成。
創立40周年にそれのカタログを作ろうというのだ。日本におけるミスターECMこと稲岡邦彌がマラドーナのように吼えた。学生時代にECMファンクラブをやっていたご縁で執筆者に加わった。このカタログはECMの監修の下にない。アイヒャーが忘れたがっているかもしれないすべての廃盤を収録し、レア盤、ジャケ違い盤まで収めるのだ。ジャケはECM完全コレクトを誇る表参道の月光茶房店主原田正夫が提供した。
執筆にあたって「浮遊感」がNGワードとして指示が下った。わたしは主観にまみれたことしか書けないと逡巡もしたが、たかだか100枚や200枚、なんてことはない、好きな盤しか書かないぞ、創価学会と書くぞ、ECMは父の名を明かしたのだと書くぞ。しかし、そこで戦況は一変した。曲目、パーソネル、録音データまで執筆者が打つというのだ。き、きいてねー。大半のニューシリーズを執筆した堀内宏公が、わたしの担当分のデータを打ってくれた。
この誰も読むはずのないデータ部分との格闘が、納期を押した。出来としてはスカスカなインデックス、巻末の広告が不満だ。
しかし、この青色のインクの滲んだ表紙デザインは、ECMにはない、そしてECMを抽象化した秀逸なものだ。知識は体験を損なうものだ。不意に出会って、対峙して、ヒントがほしいときに本書を手にしてほしい。
9月26日に渋谷アップリンクで原田正夫、福島恵一(音楽評論)と3人でECMを掘り下げてみようと思っている。
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