Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2010年04月27日(火) |
ブラッド・メルドー『ハイウェイ・ライダー』 |
『ハイウェイ・ライダー』を聴いた。
ブラッド・メルドー。痙攣する浮遊感の幻惑桃源譚・・・だったら良かったのに。これはブラッド・メルドーの作品ではなく、メルドー=オブライアンの企てだ。CD1の5トラックが成功し、他のトラックはさしづめ映画音楽受注に向けた販売促進物だろう。5曲だけダウウンロードするのが経済的?
だれもが待ち望んだジョン・ブライオンがプロデュースのブラッド・メルドーの新譜、しかも2枚組、なになにオーケストラも入っているー!きゃー、シャルロット、聴かせて、はやくはやくー。 1曲目。わお、他にないアレンジ、ポコポコポコのリズム音色、が、気持ちいいー!まじときめく。わくわくー! 2曲目。ジョシュアがまぬけづらをした疲れたピエロのように吹く、アコーディオンの音色が弦楽にリレーしたあとのジョシュア!演ればできるじゃないか!ジョシュア、リバース、シトサイセー! (ジョー・ヘンリーの昨年作で必要なサウンドとして息子のサックスを入れていてそれがじつにまた必然を感じさせたものだけど、それを凌駕する必然と驚きがここにはある) オケとベースとピアノ、の、ブレンドする共鳴ハウリングみたいのが、めっちゃ気持ちいー。 3曲目。短いピアノソロ。ピアノの弦が軋む微分音を放つ丁寧さが聴きどころ、そこかよ。や。悪くない。 4曲目。出た、人力ドラムンベース!メルドーは出力7割なのに2分30秒あたり以降のずれた低音とシンセ音のブレンド感が絶妙にいい。計算され尽くした響きの演出バランス。数音しか出てこない(ように思える)グレナディアのベースも正しい。さすがタイトルナンバーだ。6分すぎ以降はメルドー・タッチがここぞとばかりにハマりまくって頂上へ。シングルカットせい。 5曲目。このパーカッシブの演出はいいぞ。ジョシュアは今度はソプラノで。この軽快なスピード。ブレイクを入れるようにして、後戯としてのメルドー、子どもたちの合唱、スタジオの空気、わざとらしい兄ちゃんがたの談笑。
・・・このあとが地獄だった。6曲目、7曲目、要らない。CD2は、どのトラックも意味も価値もない。聴くのが辛かったー。 彼らはわかっていたはずである。CD1に並べた5曲しか果実を得られなかったことを。5曲目のエンディングのなごみがそれを告白している。
それでさらに言えば、2回目の聴取に入ると・・・この5曲でさえ、ポップス然とした仕掛けの構造に、むくむくと、「おまえら、ジャズやれよ!おまえらにしかできねえジャズ、あんだろ、こっちはそれを聴きたくてゼニ払ってんだぜ!」と不当要求を言いたい気持ちがわいてくる。 ・・・なんだか輝きにみちた『ラーゴ』の記憶までが色褪せてゆくような・・・。
すると「もう、だったらデイイズダンとかハウスオンヒルを聴いててくださいよお」と、メルドーは言うのだった。 おやまあ、いい顔になったな、メルドー。 息子ダミアンのパパになってたメルドー、そうかそうかダミアンに聴かせたいんだな。 CD1の5曲、これはねー、おいらもむすめのきよちゃんに聴かせたいね。 ぼくはこの5曲、リピート状態で大好きです!ほんと他の曲はいいところがひとつもない。
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