Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2010年03月10日(水) |
原佳大とウィーンの仲間たち@東京文化会館小ホール |
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原佳大とウィーンの仲間たち 原佳大/ジュゼッペ・マリオッティ/長松谷幸生による2台ピアノ・リサイタル ハンス・グラーフ教授没後15年によせて 賛助出演:水谷直子 2010年3月10日 東京文化会館 小ホール
ブラームス:5つのワルツ Op.39 シューマン:アンダンテと変奏曲 B-dur Op. 46 ショパン:ロンド C-dur Op.73
4にんのピアニストが組み合わせで2台のピアノを演奏するプログラム。ジュゼッペ・マリオッティの演奏が突出して良い。ウィーンの音楽風土を感じさせ、また、ピアノもよく歌った。ほかの3にんは、「弾ける」から先の説得力という、それこそ芸術表現における地獄の道のりでの格闘というか、それこそ天上の何ものかを見せるようなレベルにはないように思えた。原佳大とマリオッティによるラストのショパン演奏、これは良かった。この二人のピアニストの明白なノリの違い、原の持つ特色がなにやら楽曲をかきまわしているようなのだが、それがどのような作品「ロンド」に結実しているのか見定めぬうちに演奏は終わってしまった。
コンサートの後半に駆け込んだ。原佳大とジュゼッペ・マリオッティがカツラをかぶってモーツァルトとハイドンに模して、モーツァルトがハイドンに「どうしてあなたはいろんな国に行って演奏をするのですか?」ときくと「わたしの音楽は国を越えた世界言語になっているからだよ」と応じたという(有名らしい)エピソードを披露。・・・はて、それがウィーンの音楽の特殊性なり、ハンス・グラーフ教授なりに、どう話がつながっているのか、つながっていないのか、意図が判然としない。マリオッティが「ウィーンも寒いけど、今日の東京も寒いですね」と観客をなごませている。マリオッティが笛のようなものを吹くと、その断続的な音に反応するかのように客席左右に少女がふたりヴァイオリンと笛の奏者が立っており、鳥のさえずりを模するような美しい音色のやりとりがホールに響く。これがとても良かった。予期せぬところに音楽は舞い降りる。ジョルジュ・エネスクの曲だという。ほんの数十秒の音色のやりとりは、どこが楽譜からも離れ、即興のようにも響き、またドキドキとした初々しい奏者の意識までが交差するような稀有なものだった。
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