Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
DiaryINDEXpastwill


2008年11月08日(土) 7月19日(土)、作曲家・三善晃の合唱作品が響いた「杏林大学病院内コンサート〜合唱の午后」

特別編として書き留めておきたいコンサートがあるので、ここに記します。

それは7月19日(土)、作曲家・三善晃の合唱作品が響いた「杏林大学病院内コンサート〜合唱の午后」です。
三鷹にある杏林大学病院では、これまでも桐朋学園による院内コンサートが37回開催されています。
今回は指揮者の栗山文昭さんが主催する合唱団の栗友会(りつゆうかい)によるものでした。

曲目は次のとおり。すべて三善晃の作・編曲です。
・山田耕作による五つの歌(この道、赤とんぼ、待ちぼうけ、からたちの花、ペチカ)
・麦藁帽子(女声)
・雪の窓辺で(女声)
・カチューシャの唄
・Over the Rainbow
・浅井道子さんのピアノソロ演奏 3曲
・唱歌の四季(朧月夜、茶摘、紅葉、雪、夕焼小焼)

コンサートホールではなくガラス張りの広い病院のロビーに、40名ほどの合唱団とピアノが一台。合唱団は2段になっていましたが、指揮台を置かずにじゅうたんのフロアで栗山さんは指揮をされました。ほぼ3メートルの至近距離で聴く合唱です。

合唱こそ、ナマだなー。こんなにきめ細かく左右の男女の高低の声の波が混ざったり拡がったりしているものか。三善晃の作・編曲のワザもあるんだろうけど、指揮者の丹精もあるんだろうけど、合唱団の今日は普段着に近い格好の皆さんのチームワークも、いやはや、職人たちの総合芸術だべさ、思わず北海道弁になっちまうよ。カーステでスピッツや小谷美紗子や友川かずきをかけながら大学生のむすめと品川から駆け付けたわけだけど、アニメおたくのむすめも「はじめて合唱をこんなふうに聴いたけど、これが音楽だっていうかんじだよね!」と喜んでいた。うーん、さすがおれのむすめだ、三芳インターで「いも恋」くわせたる。いつかギタリストの大友良英がジャズ喫茶いーぐるの講演で、耳のフォーカス能力のすごさのことを話していた記憶があるけど、おれなんかつい前日に日本伝統文化振興財団から出ている合唱の入門的名盤CD『日本の合唱まるかじり』2枚組を聴いてて、それなりにCDジャンキーとして感動していたんだが、やはりこの日の合唱のようにリアルタイムで耳の焦点をヴィヴィッドに合わせながら聴く体験には、正直、写真と現物、標本と野生、月とスッポン、吉野家と叙々苑、そのへんのもんじゃ屋と亀戸の山本ぐらいの差がある。合唱専門の録音技師の皆さんには申し訳ないのですが。

録音で聴いた合唱で感動したのは、芸能山城組、と、映画『コードネームはファルコン』のパット・メセニー・グループの曲のイントロの賛美歌、と、クイーンの「愛こそはすべて」、と、ビザンチン教会の合唱、くらいしか思い浮かばん。あとCD『三善晃:レクイエム』、と。あ、ECMの『ヒリアード・ソングブック』と『オフィチウム』、も。・・・と、帰り道で興奮気味にわけわからん話をするわたしにうなずいてくれるむすめに感謝している。

それはさておいて、この日、心臓がわし掴みにされたのは、この合唱の伴奏をつとめた浅井道子さんのピアノだった。この日初めて聴いた。この美しさ、清らかさ、端正なタッチ。ピリスでも舘野泉でも渋谷毅でも、なく。どんな形容がふさわしいんだろう。オネスト。正直な。ふとついて出たが。まだ彼女の録音を聴いたことはなく、この日のコンサートで3曲独奏されたのだけど、おれがプロデューサーだったら真っ先に彼女のピアノ・ソロを録る!オフノート・レーベルの音で録る。

オバマ大統領ではないが、わたしたち音楽愛好家はできる。イエス、ウィー、キャン、である。・・・いったいおれは何をするというのか。


Niseko-Rossy Pi-Pikoe |編集CDR寒山拾得交換会musicircus

My追加