Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
DiaryINDEXpastwill


2007年12月07日(金) 『LIQUID BLUE / ケイ赤城トリオ』 ビデオアーツ(VACT-0001)










(決定稿)

『LIQUID BLUE / ケイ赤城トリオ』 ビデオアーツ(VACT-0001) 2007.12.19発売
ケイ赤城(ピアノ)・杉本智和(ベース)・本田珠也(ドラム)

杉本智和(すぎもとともかず)、本田珠也(ほんだたまや)の名を刻みつけられる傑作ピアノトリオ盤が届いた。

この作品はトラックの後半に進むほどに演奏が高度に、ジャズの醍醐味に唸らされるように配置されている。1曲目は雰囲気ジャズ好きへの営業色濃厚、ピアノが奏でる祈りの感情はそのうちNHKあたりに起用されたいという祈りに聴こえ、2曲目から次第にジャズの核心に近づいてゆく。おそらく制作者にその意図はない。そのグラデュエーションは、杉本と本田のリズム隊に耳をすませれば明白で、聴き進めるつれて驚かされ、手に汗をにぎり、不意打ちをくらう。1曲目と相対するかの静けさではじまるラスト・トラックを聴くに、おれがおんななら惚れるぜこのタイコである。この二人の力量とこれからの可能性は相当高い。後半4曲の出来を展開させること、その先に21世紀のピアノトリオがある。

リーダーのケイ赤城は、マイルスデイビスバンドに在籍したという経歴も、なるほどと思わされるフェンダー・ローズのプレイ、が、聴きどころ、という前提は置いといて、これまでこのトリオを結成して7年、本作のコンポジションをマイルス作のトラック4(この演奏はECMファンには必聴)以外のすべてを手がけている。ケイ赤城は汎音楽的志向を強く感じさせるミュージシャンで、彼のコンポジションの展開の明確さは、杉本・本田という新しい世代の感覚、ある種の獰猛さ、を、活かすことに成功していると思う。強固に理に適ったピアノ・プレイもしくはコンポジションとのせめぎあい、ここを聴きたい。

空間プロデュースを手がけるTIME & STYLEが立ち上げるジャズレーベル<TIME & STYLE JAZZ>の記念すべき第一弾として発表された本作から、日本のジャズプロパーが果たせない新しさの萌芽を聴く。それは、杉本・本田という獰猛さのありように示唆されているのではないか。


Niseko-Rossy Pi-Pikoe |編集CDR寒山拾得交換会musicircus

My追加