Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2007年11月28日(水) |
フィルワックスマンとポールリットンのECMスティーブレイク制作デュオ作品『Some Other Time』 |
フィルワックスマンとポールリットンのECMスティーブレイク制作デュオ作品『Some Other Time』のジャケ。
完全即興というジャンルにライブエレクトロニクスを導入できるようになったのは、音色の微細な反応が技術的に高まったからであり、電気の音に対して好感するモードという追い風もあった。 だけど、感覚的には新しくない。むしろ古い。電気の音は、そっちの最先端モードからすると恥ずかしいくらいに時代遅れに聴こえる。 この作品で聴かれるのは、ワックスマンとリットンの欧州人としてのクラシックの素養という背景だ。思考法までが透けて見える思いがする。 それは彼らに刻印された同時代の詩情といったものであり、完全即興なるフィクショナルな身振りの裏側で、周到にある領域の表現は排除され、透徹した水準探査で編集された書物のようである。 ヴァイオリンは上手いし、パーカッションも完成されてるし、ああトラック14なんてドッキドキの短反応で構築された美しさ。 その破綻の無さは、息が詰まるくらいに見事なところがあり、そこがこの作品が傑作である理由だ。 ラストの「Some Other Season」はこの作品のすべてのトラックが途切れ途切れに反響してくるような奇妙な心地がした。
そいえばおれ。何かの間違いでチャイコフスキーとかシベリウスとか聴きに出かけたときに、「曲が始まる前にオーケストラが音合わせをして響かせたでしょ、あの時がいちばん今日のコンサートで良かったー」などと、素朴に思っていた時期もあります。
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