Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2006年06月20日(火) |
井上陽水が「ブライト・アイズ」というカバー・シングルを出していた |
あれは1980年だった。 創造性はピークに達しつつもセールス的には明らかに落ち目に映っていた、中森明菜「飾りじゃないのよ涙は」もまだ作ってない時期の井上陽水は「ブライト・アイズ」というカバー・シングル!なんてものを出していた■。 この曲はアート・ガーファンクルのオリジナルで、前年に全英No.1ヒットになっている。 アニメ映画『ウォーターシップダウンのうさぎたち』の主題歌、とのこと。 こんなに背中の寂しい陽水の歌声はこの時だけである。
なんとも淡く儚げなメロディーである。失敗とか不成功とか失意とかしくじりを暗示する旋律である。
このバックサウンドのオーボエだかファゴットの響き、は、フリッパーズ・ギター「ドルフィン・ソング」に聴こえるんだよね。
そして、あからさまに「神のみぞ知る」を旋律引用した(パクったとは言わないで)「ドルフィン・ソング」が“ほんとのこと 知りたいだけなのに 夏休みはもう終わり”と歌い終えるとき、ブライアン・ウイルソンの「サーフズ・アップ」に意味をピタリと合わせてくるあたりに、20代小沢健二の恐るべき天才性に思い至り、実はファゴットの響きに込められた失意の暗示もまた小沢はわかっていたのかもしれない、小沢もまた「ブライト・アイズ」をそのようなものとして聴いていたのかもしれない、と、ぼくは思うのだ。
そんなに荒唐無稽なハナシだろうか?
話は変わって。昨日言ったホルガー・シューカイの「ペルシアン・ラブ」が入ったCDRには、エイフェックス・ツインの「Girl/Boy Song」も入ってて。
テクノ界のモーツァルトなんて言われてたリチャードDジェームス、ぼくはこの曲だけでこの種の音楽の視野は了解し切ったところがある。
あと、ガスター・デル・ソルの『Upgrade & Afterlife』だけで、音響派の行く末は読めたし、この作品を聴いた96年の時点で、ぼくは「アコースティックの復権!」を主張していた。FADER誌がディレク・ベイリーを取り上げるのも、同時代の耳にとっては必然があった。そもそも即興耳はそこに焦点が当たってしかるべきだった。読み飛ばされてきた、のか。“新しい聴取”として新装開店したような、“新しい”モード。
となると、この10年、新しいものなど何もなかった、か。伝統的なもの、が、美しく蘇えってきた10年。 “ぼくらは 古い 墓を あばく 夜のあいだに” 「colourfield」 (小沢健二)
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